坂田家住宅土蔵

主屋の東南、少し離れた場所に、土蔵造二階建の蔵が建つ。同じ坂田家の木造の「新倉」が骨組みを表面に見せるのに対し、この土蔵は古くからの土蔵の理にしたがう。厚い土壁を漆喰で塗り固め、重い木の芯を包んで火に耐える造りである。穀物や道具、家財を守る農家にとって、こうした蔵は文化財である以前に、暮らしの必需だった。

寸法は小ぶりで、たてに整っている。桁行はおよそ六・四メートル、梁間四・〇メートル、棟は南北に走る。西面には全面にわたって下屋が張り出す。下屋は一段低い差し掛けの屋根で、作業に使える範囲を広げ、その面を風雨から守る。

どう建てられているか

この土蔵も、ここのほかの蔵と同じく置屋根を載せる。屋根の骨組みを蔵の箱の上に別に架ける造りで、切妻造を桟瓦で葺く。外壁は漆喰仕上げで、腰は黒く塗る。黒い腰は、はねる汚れを防ぐと同時に、日本の蔵に馴染んだ意匠でもある。

造りの厳しさが見えるのは内部である。柱は一尺、およそ三〇センチごとに立ち、そこへ竪板を張る。この密で規則正しい間隔が、建物に堅さを与えている。国の登録は、その結果を端正なつくりの蔵と簡潔に記す。中は見られないが、木を密に立てたその造りを知ると、静かな外観の見え方が変わる。

屋敷のなかでの位置づけ

この土蔵は平成二三年(二〇一一年)一月、坂田家の五棟の一つとして国の登録有形文化財に登録された。登録番号は一五―〇三二八、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。年代は昭和前期で、新倉とほぼ同時期ながら、まったく異なる工法で建てられている。

その対比こそ、両者をあわせて見る理由になる。木造の新倉とこの土蔵の間に立つと、収納という同じ課題への二つの答えが読み取れる。木を外に現す答えと、骨組みを防火の壁の内に埋める答えである。さらに古い明治の蔵と堆肥舎を加えれば、坂田家の屋敷は、裕福な農家が「蓄えること」と「働くこと」のためにどう建てたかを凝縮して見せてくれる。

Q&A

Q「土蔵」とは何ですか。
A木の骨組みに厚い土壁を塗り、漆喰で仕上げた蔵です。火に強い造りで、穀物や道具、家財を守るために広く用いられました。
Q西面の下屋は何のためのものですか。
A下屋は西面全体に架けられた一段低い屋根です。使える空間を広げ、その面を風雨から守ります。
Qこの蔵は「新倉」とどう違いますか。
Aこの蔵は土蔵造で、骨組みを漆喰の壁の内に隠します。新倉は木造で、柱を外に現します。
Q中に入れますか。
A入れません。坂田家住宅は外観を常時見学できますが、この蔵を含め、いずれの建物にも立ち入れません。
Q壁の黒い帯には意味がありますか。
A下部を黒く仕上げた腰壁です。日本の蔵に多い実用的な仕上げで、漆喰の面に引き締まった基準線を与えます。

基本情報

名称坂田家住宅土蔵(さかたけじゅうたくどぞう)
所在地新潟県五泉市土堀字上ノ代295
指定区分登録有形文化財(平成23年〈2011年〉1月26日登録/登録番号15-0328)
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
年代昭和前期(1926〜1945年)
構造土蔵造2階建、桟瓦葺、桁行6.4m・梁間4.0m、建築面積55㎡
員数1棟
公開状況外観は常時見学可/内部は非公開

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 坂田家住宅土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008434
五泉市公式ホームページ — 坂田家住宅
https://www.city.gosen.lg.jp/organization/21/7/1/1/1869.html
坂田家住宅(五泉市)— ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/坂田家住宅

最終更新日: 2026.07.07