桁行九間、三方を開く横長の拝殿
春日神社拝殿は、大分県豊後高田市草地字三笠山にある三笠山春日神社の拝殿で、大正10年(1921年)の造営、平成23年(2011年)10月28日に国の登録有形文化財に登録された。
申殿の前方に東西棟で建つ。参道を上がってきた者は、まずこの建物の長辺と向き合うことになる。桁行九間梁間四間、建築面積約103平方メートル。木造平屋建、入母屋造本瓦葺で、正面中央に一間の向拝が付く。向拝の屋根も入母屋とし、切妻で済ませていない。
切石積の基壇上に方柱を立て、貫で固める。内部は間仕切りのない一室で、板敷に格天井を張る。両側面は土壁。それ以外はすべて開口である。
この開放性が建物の性格を決めている。堂内に立つと、閉じた室というより屋根の架かった境内の一部という感覚に近い。風が抜け、正面には申殿と本殿が一直線に見通せる。
宇佐に由来する配置
横長に展開する拝殿は大分県北部、とりわけ宇佐から国東半島にかけて数多く残り、回廊と呼ばれることもある。理由は北方数キロにある。全国約4万社の八幡宮の総本社である宇佐神宮が、この地域の社殿造営の規範として長く働いてきた。
平成22年(2010年)10月に実施された熊本大学大学院日本建築史研究室(伊東龍一教授)の調査は、この継承関係を登録申請の中心に据えた。当社は拝殿・申殿・神殿を一直線に配し、西に石段と門を設ける。これは宇佐神宮の建物配置に通じる。神殿の左右に摂社を並べる形式も、宇佐と関係の深い柞原八幡宮が神殿の左右に東宝殿・西宝殿を建てるあり方と重なる。報告書は個々の建物より一式の揃い方に価値を認め、13件が平成23年10月28日に一括登録された。拝殿の登録番号は44-0187である。
中軸三棟のうち拝殿は最も新しく、規模は突出して大きい。背後の本殿は江戸末期で建築面積約17平方メートル、その間に立つ申殿は明治38年(1905年)で約12平方メートル、そして大正10年のこの拝殿が約103平方メートル。この順序は建築史であると同時に、集落の歴史でもある。造替は神座から人の集まる場所へと外へ向かって進み、人の集まる場所は拡大を続けた。
使われ続けている建物
保存のために閉ざされた建物ではない。壁面を見上げると、「鬼」と墨書された大的が逆さに掲げられていることがある。的射祭の的である。宮司以下、参列する総代が各三本ずつ弓を射て、射抜かれた的はそのまま拝殿に掲げられ、その年の開運除災の徴となる。
神楽殿は拝殿の東南に西面して建ち、北面後寄りから斜めに延びる橋掛で結ばれる。春季大祭では庄内神楽が奉納され、あわせて新入生を迎える勧学祭が営まれる。この祭には土地の由来がある。草地には江戸末から明治中期にかけて涵養舎と川面学問所という二つの私塾があり、両者が送り出した門下生は三千名に及んだという。戦後長く途絶えていた勧学祭は復興し、今日では教員に引率された児童が参拝する。
年間で最も大きいのは秋季大祭で、10月の三つの週末にわたる。第3日曜のしめおろしに始まり、第4土曜に神輿のおくだり、第4日曜におのぼり。平成18年(2006年)には奉納子供相撲が10年ぶりに復活した。
屋根にも触れておく。平成12年から14年にかけて氏子崇敬者を挙げて実施された「平成の大改修事業」で、この拝殿を含む4棟が古代本瓦による葺替えを受けている。桟瓦ではなく、丸瓦と平瓦を交互に葺く古式の本瓦である。
参拝に制約はない。境内は時間の制限なく入ることができ、拝観料の設定もない。三方が開いた造りのため、板敷や格天井、貫で固めた軸部の様子は正面の階段前からそのまま見て取れる。建物の撮影は自由だが、祭典中は社務所に断ってからにしたい。JR日豊本線の宇佐駅から約7キロメートル、車で15分ほど。豊後高田市街の昭和の町からは車で約10分。問い合わせは社務所(0978-24-2529)へ。
Q&A
- 春日神社拝殿は中に入れますか。拝観料はかかりますか。
- 境内は時間の制限なく参拝でき、拝観料はありません。拝殿は両側面の土壁を除いて三方が開いているため、板敷や格天井、軸部の構造は正面の階段前から見ることができます。通常の参拝を超える見学は事前に社務所(0978-24-2529)へご相談ください。
- 春日神社拝殿はいつ建てられ、どのくらいの規模ですか。
- 大正10年(1921年)の造営です。桁行九間梁間四間、建築面積は約103平方メートル。木造平屋建、入母屋造本瓦葺で、正面中央に入母屋屋根の一間向拝が付きます。
- 春日神社拝殿はなぜ横長で開放的な造りなのですか。
- 横長に展開する拝殿は大分県北部から国東半島にかけての類型で、回廊とも呼ばれます。この地域の社殿造営は宇佐神宮の影響を強く受けてきました。当社の拝殿も両側面のみを土壁とし、他を開口として、祭礼や神楽の場として境内と一体に使われます。
- 春日神社拝殿ではどのような祭事が行われますか。
- 年頭の的射祭では射抜かれた鬼的が拝殿に掲げられます。春季大祭では庄内神楽の奉納と勧学祭、秋季大祭は10月第3日曜のしめおろしに始まり、第4土曜のおくだり、第4日曜のおのぼりと続きます。
- 春日神社拝殿は境内の他の登録有形文化財とどう関係していますか。
- 中軸の最前に建ち、背後に明治38年の申殿、その奥に江戸末期の本殿が並びます。平成23年に一括登録された13件には、ほかに神門・西門・鐘楼・神楽殿・籠り屋・摂社二社・余興舞台・参道鳥居・西参道鳥居が含まれます。
基本情報
| 名称 | 春日神社拝殿(かすがじんじゃはいでん) |
|---|---|
| 所在地 | 大分県豊後高田市草地字三笠山5206 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 44-0187 |
| 指定年 | 平成23年(2011年)10月28日 登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、桁行九間梁間四間、建築面積約103平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人春日神社 |
| 公開状況 | 境内自由・拝観料なし。三方開放のため正面から内部を見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/春日神社拝殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009088
- 文化遺産オンライン/春日神社拝殿
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/197228
- 三笠山 春日神社/有形文化財
- https://www.mikasayama-kasuga.com/bunkazai.html
- 三笠山 春日神社/恒例祭
- https://www.mikasayama-kasuga.com/koureisai.html
- 大分県/国指定・選定等文化財一覧(PDF)
- https://www.pref.oita.jp/kyoiku/tmp/bunka/post-101/1.pdf
最終更新日: 2026.08.04