旧林家住宅とは

旧林家住宅は、岡山県倉敷市祐安にある大正12年(1923年)頃建築の木造2階建の洋風住宅で、西村伊作の設計により建てられ、平成29年(2017年)10月27日に国の登録有形文化財に登録された。

地名の「祐安」は「すけやす」と読む。同じ「旧林家住宅」の名で登録・指定された建物はほかの地域にもあるため、倉敷の旧林家住宅と覚えておくと紛れない。

文化庁の解説によれば、建物が立つのは倉敷の大原家が良質な住宅地として開発した地区である。現在の所有者が公開しているサイトでは、倉敷の薬種商でキリスト教徒としても地域に尽くした林源十郎の次男で、大原孫三郎のもと倉敷紡績の取締役を務めた人物が建てた家だと説明している。

同じサイトは、その後の歩みも伝えている。第二次世界大戦中は疎開先となり、戦後は連合軍に接収されてオーストラリア人の司令官一家が住み、さらに三菱重工業の社宅としても使われた。文化庁の記載では昭和35年(1960年)に増改築を受けている。現在は個人の住まいで、所有者は「西口邸」と呼んでいる。

旧林家住宅が登録有形文化財になった理由

旧林家住宅は登録有形文化財で、登録番号は33-279、第88回の登録にあたる。登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の記載では、木造2階建、瓦葺、建築面積154平方メートルである。

設計者の西村伊作(1884〜1963年)は、東京の文化学院の創立者として知られ、画家・陶芸家としても活動した。接客を中心に組み立てる従来の住まいではなく、家族の暮らしを中心に据えた住宅を唱え、「田園小住家」という理想を掲げた。文化庁は旧林家住宅を、その理想を具体の形にしようとした住宅と評している。

その考え方は間取りに表れている。南東の角に玄関を置き、その奥にホールを配する。ホールから西へ中廊下を通し、南側には日当たりのよい洋風のリビングとダイニングを、北側には台所や浴室などの水回りをまとめた。同じ時代の大きな住宅が客間を最上の位置に置いたのに対し、旧林家住宅では家族が毎日使う部屋がいちばん良い場所を占めている。

旧林家住宅の特徴

石積みの外壁と煙突

所有者の説明によると、旧林家住宅の食堂の外観は野石を整層に積んだ造りで、英国の田舎家を思わせる。暖炉から立ち上がる石造の煙突と、2階の上部にのぞく日光窓も特徴で、煙突は長くこの土地の目印として親しまれてきたという。

暖炉のある居間

内部では、1階の居間と2階の寝室に暖炉を設けている。居間と食堂はガラス戸で仕切られ、開け放てばひと続きの明るい空間になる。階段の踊り場は吹き抜けの壁にも窓があり、斜めの光がホールへ差し込む。

和室と庭

すべてが洋風というわけではない。大小4部屋の和室があり、1階の和室には茶の湯の設えがある。窓の外には石造の五重塔を置いた日本庭園が広がる。所有者が公開する写真では、玄関まわりが1920年代後半の家族写真とほとんど変わらない姿で残っている。

旧林家住宅の見学方法

旧林家住宅は個人の住まいで、一般には公開されていない。岡山県の資料は公開状況を外観のみとしており、所有者のサイトも現在は一般向けに公開していないと明記している。近くを通る場合も公道から眺めるだけにとどめ、敷地には入らず、人が暮らす家であることに配慮して撮影は控えめにしたい。

旧林家住宅はJR倉敷駅の北約2キロ、祐安の高台に建つ。岡山県の資料では倉敷駅から車で約10分である。所有者のサイトには問い合わせ用のフォームがある。

Q&A

Q旧林家住宅は誰の設計で、いつ建てられましたか?
A旧林家住宅は西村伊作の設計で、大正12年(1923年)頃に建てられ、昭和35年(1960年)に増改築されました。平成29年(2017年)10月27日に登録有形文化財に登録され、登録番号は33-279です。
Q旧林家住宅の中は見学できますか?
Aできません。個人の住まいで一般公開はしておらず、岡山県の資料でも公開状況は外観のみです。見る場合は公道からにとどめてください。
Q旧林家住宅はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A文化庁は、玄関奥のホールと中廊下、南の洋風リビング・ダイニング、北の水回りという間取りによって、西村伊作が「田園小住家」の理想を形にしようとした住宅と評価しています。
Q旧林家住宅はどこにありますか?
A倉敷市祐安、JR倉敷駅の北約2キロにあり、車で約10分です。倉敷の大原家が住宅地として開発した地区にあります。
Q旧林家住宅は誰のために建てられましたか?
A現在の所有者の説明では、倉敷の薬種商・林源十郎の次男で、倉敷紡績の取締役を務めた人物のために建てられました。

基本情報

名称旧林家住宅
所在地岡山県倉敷市祐安字寺谷1451
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)10月27日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積154平方メートル
所有者個人
公開状況非公開(外観のみ公道から)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):旧林家住宅
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012026
文化遺産オンライン(文化庁):旧林家住宅
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/223057
倉敷市 文化財保護課:旧林家住宅
https://www.city.kurashiki.okayama.jp/culture/art/1007596/1007597/1011206/1007792/1007807.html
岡山県:旧林家住宅(PDF)
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/261026.pdf
旧林家住宅(現・西口邸)所有者サイト
https://www.gennishiguchi.com
林源十郎商店:林源十郎商店について(倉敷の林家)
https://genjuro.jp/about/

最終更新日: 2026.10.03