井上家住宅とはどのような建物か

井上家住宅(岡山県倉敷市本町)は、岡山県倉敷市本町の本町通りに面して建つ町家と2棟の蔵で、18世紀初期の建設と考えられ、平成14年(2002年)5月23日に重要文化財に指定された。指定の対象は主屋、三階蔵、井戸蔵の3棟である。

本町通りは、倉敷川沿いの風景が写真に写されるようになるずっと前から、この町を東西に貫く往還だった。井上家は16世紀の終わりに鶴形山の麓に居を構え、阿知潟と呼ばれた干潟の開墾に従事したと伝わる。村役人となる資格を持つ「古禄」13軒の1軒として、江戸時代には年寄役や百姓代を他家と交代で務めている。

建物を全解体した際に見つかった墨書が、主屋の上棟を享保6年(1721年)と示した。6世安兵衛が37歳のときにあたる。この一行によって、井上家住宅が倉敷美観地区に現存する最も古い町家であることが確かめられた。

指定の理由と3棟の構成

文化庁が挙げた指定基準は、歴史的価値の高いものであること、流派的または地方的特色において顕著であること、の2点である。この2つは同じ事実を別の角度から述べている。倉敷では江戸時代後半以降に大火がなく、焼けなかったために建て替えられなかった。井上家住宅には、町内の他の家からは失われた古い町家の形式が残っている。

それが最もはっきり出ているのが小屋組である。外壁から棟へ斜めに架ける登り梁に束を併用する構法で、後に標準となる和小屋の組み方より手間がかかる。この古い形が残っていることが、倉敷の町家の成立と発展を考えるうえで井上家住宅を基準の一つにしている理由である。

3棟は一組として機能する。主屋の居室部は正面16.9メートル、側面20.4メートルで、二階を持ち、側面は丁字形の入母屋造、背面は切妻造とする。これに桁行11.4メートル、梁間6.9メートルの座敷部が東で接続する。屋根は本瓦葺桟瓦葺の併用である。三階蔵は土蔵造で桁行7.5メートル、梁間5.6メートル、三階建の切妻造とし、座敷部の北面から廊下でつながる。井戸蔵は桁行4.0メートル、梁間3.4メートルと小さい。土塀2棟と家相図1枚がとして指定に加えられている。

実物を見るときの着眼点

南面二階の外壁には7つの窓が並び、それぞれに分厚い土塗りの扉が付く。倉敷窓と呼ばれるもので、この土戸が残るのは倉敷ではここだけになった。装飾ではなく防火の設備で、火の粉が飛べば閉めて目地を土でふさいだ。

土間に入ったら天井を見上げてほしい。開口部はわざと設けられていて、屋根を支える登り梁と、平成・令和の修理の棟札を打った大黒柱が見える。土間の脇には儀式用の竈があり、火と竈の神である「お土公さま」が祀られている。

台所は、床下の発掘で判明した姿に復原された。竈、土間の洗い場、そして地面に据えられた備前焼の水甕である。水甕には天正11年(1583年)の銘があり、倉敷市指定文化財でもある。長く倉敷市が保管していたが、使われていた位置が特定され、公開に合わせて井上家に戻された。

通りに近い店の間には蔀戸が残る。上下2枚に分かれた板戸で、上の戸は上部を吊り、はね上げて掛けておく形式である。奥に進むと仕上げが変わる。客間には格式の高い竿縁天井と、手の込んだ網代天井がそれぞれ用いられ、襖の一面には幕末の漢詩人・藤井竹外の書が張られている。

ゆっくり歩く人だけが気づく箇所が2つある。二畳間から見える太鼓橋は、当主の座敷と客を迎える茶室を結んでいる。水屋の脇の杉戸は、赤外線写真によって、控えの間側に牛と人物、水屋側に松と鳥が描かれていることが確認された。肉眼ではもう読み取れない。

雪見灯籠のある坪庭は、10代当主三郎右衛門がここで飼っていた鶴を描いたと言い伝えられる場所である。

井上家住宅の見学方法

井上家住宅は一般公開されている。長く非公開だったうえ、平成24年度(2012年度)から令和4年度(2022年度)まで全解体しての保存修理が続き、公開が始まったのは2023年3月である。開館時間は午前10時から午後5時、最終受付は午後4時30分。休館日は月曜日と年末年始(12月28日から1月3日まで)で、祝日が月曜にあたる場合は開館し、翌日が休みになる。

入館料は大人500円、小中学生300円、未就学児は無料。20名以上の団体は400円と200円になる。パンフレットは英語・韓国語・中国語・フランス語が用意され、事前予約をすれば16代当主による英語の解説を受けられる。団体の解説は約30分から60分で、こちらも予約制である。

JR倉敷駅から徒歩約13分、車なら倉敷インターチェンジから約12分の距離にある。施設に駐車場はないので、周辺の有料駐車場を使うことになる。撮影の可否について運営者は規定を公表していないため、入口で確認してから撮り始めてほしい。

住所について一点だけ補足する。指定台帳の所在地は本町1番40号だが、施設が案内している住所は本町1-36である。いずれも本町通りに面した同じ建物を指している。

Q&A

Q井上家住宅は中に入れますか。入館料はいくらですか
A入れます。2023年3月から内部が公開されています。入館料は大人500円、小中学生300円、未就学児は無料です。20名以上の団体は大人400円、小中学生200円になります。
Q井上家住宅の開館時間と休館日を教えてください
A午前10時から午後5時までで、最終受付は午後4時30分です。休館日は月曜日と、12月28日から1月3日までの年末年始です。祝日が月曜にあたる日は開館し、その翌日が休みになります。
QJR倉敷駅から井上家住宅まではどう行きますか
A駅から美観地区へ南に歩き、本町通りに入ります。徒歩約13分です。車では倉敷インターチェンジから約12分ですが、施設に駐車場がないため周辺の有料駐車場を利用してください。
Q井上家住宅の指定にはどの建物が含まれますか
A主屋、三階蔵、井戸蔵の3棟です。附として土塀2棟と家相図1枚が加えられています。3棟はいずれも平成14年(2002年)5月23日に一括して指定されました。
Q井上家住宅で英語の解説は受けられますか。写真撮影はできますか
A英語・韓国語・中国語・フランス語のパンフレットがあり、事前予約で16代当主による英語解説を受けられます。撮影の規定は公表されていないので、入口の係員に確認してください。

基本情報

名称井上家住宅(岡山県倉敷市本町)
所在地岡山県倉敷市本町1番40号
指定区分重要文化財
指定年平成14年(2002年)5月23日
員数3棟(主屋、三階蔵、井戸蔵)。附として土塀2棟、家相図1枚
寸法主屋居室部 正面16.9メートル、側面20.4メートル/座敷部 桁行11.4メートル、梁間6.9メートル/三階蔵 桁行7.5メートル、梁間5.6メートル/井戸蔵 桁行4.0メートル、梁間3.4メートル
所有者個人
公開状況一般公開。午前10時から午後5時(最終受付は午後4時30分)。月曜日および12月28日から1月3日は休館。大人500円、小中学生300円

参考文献

国指定文化財等データベース 井上家住宅(岡山県倉敷市本町) 主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3727
国指定文化財等データベース 井上家住宅(岡山県倉敷市本町) 三階蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3728
国指定文化財等データベース 井上家住宅(岡山県倉敷市本町) 井戸蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3729
倉敷市 文化財保護課 井上家住宅(いのうえけじゅうたく)
https://www.city.kurashiki.okayama.jp/culture/art/1007596/1007597/1011206/1007603/1007608.html
倉敷市 国指定重要文化財 井上家住宅(施設案内)
https://www.city.kurashiki.okayama.jp/kosodate/youth/1013063/1013064/1013067/1007503/1015025/1007520.html
井上家住宅ホームページ 営業時間・料金
https://www.inoueke.jp/open/
井上家住宅ホームページ 見どころ
https://www.inoueke.jp/highlight/
井上家住宅ホームページ 井上家について
https://www.inoueke.jp/inoueke/

最終更新日: 2026.09.09

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