旧森江家住宅とは ― 中国山地の山あいに残る17世紀の農家
旧森江家住宅は、岡山県苫田郡鏡野町富西谷にある江戸時代中期、17世紀後半頃の建築とみられる農家で、昭和44年(1969年)に重要文化財に指定された。
指定名称の括弧に入る「岡山県苫田郡富村」は、指定を受けた当時の所在地である。富村はのちに鏡野町の一部となり、いまは町の北西部、1000メートルを超える山々に囲まれた富地域にあたる。所有者は鏡野町である。
旧森江家住宅は、もとは同じ富村の別の場所に建っていた。岡山県の解説によれば、現在は富振興センターの近くに移築されており、地元の案内は移築と復元を終えた時期を昭和51年(1976年)4月としている。屋内には村で使われていた民具も並べられ、山村の暮らしを道具とともに見られる。
旧森江家住宅が重要文化財に指定された理由
文化庁の解説は、旧森江家住宅を中型農家の典型とみている。壁の部分が多く閉鎖的な造りで、構造は単純、仕上げにも古い手法が残る。岡山県下の民家のなかでも古いうえに保存の状態がよく、一般の農家の遺例として重要とされた。
岡山県は、旧森江家住宅を県内でもっとも古い山村の中型農家と位置づけている。豪農や庄屋の大きな屋敷ではなく、山間の集落で暮らしを営んだふつうの農家の姿がわかる点に、この建物の値打ちがある。
建築年代は、文化庁の解説が17世紀後半頃、棟ごとの記載が17世紀末とする。いずれも建物の構造や手法から推定された年代である。
旧森江家住宅の見どころ ― 三方を壁で閉じた三間取り
外から見た旧森江家住宅は、厚い茅葺の屋根が低く軒を下ろし、建物の大半を覆っている。文化庁のデータベースは屋根を入母屋造とし、規模を桁行15.1メートル、梁間8.7メートルとする。県や町の案内は柱間で桁行7間、梁間3間と数えるが、メートル換算の値は資料によって異なり、岡山県は15.8メートルと7.4メートル、町の観光案内は約13.3メートルと約5.9メートルとしている。県の解説は屋根を寄棟造と記しており、この点もデータベースと一致しない。
間取りは「三間取り広間型」と呼ばれる形式である。表の土間(にわ)の上手に、梁間いっぱいの居間「いたば」をとり、その奥に座敷「おくのま」と寝室「なんど」を並べる。いちばん広いのがいたばで、囲炉裏を囲んで日々の暮らしが営まれた。土間の下手には、牛馬を入れた「うまや」と炊事の場所がある。
旧森江家住宅で開口部があるのは正面だけである。残る三方は大壁で塗り込められ、寒さの厳しい山間の冬に備えた造りとされる。光が入るのは表側からに限られ、奥の部屋ほど暗くなる。文化庁が閉鎖性の強さを特徴に挙げるのは、この壁の多さのことである。
構造は素朴である。岡山県の解説によれば、梁間が狭いため上屋と下屋の区別がなく、梁行の大梁は一通りだけ掛けられている。地元の案内では、柱はすべて栗材を手斧で仕上げたもので、大黒柱を立て、小屋組は扠首で組むという。土間に立って見上げると、太い柱と簡素な小屋組がそのまま見える。
旧森江家住宅の見学方法とアクセス
旧森江家住宅は無料で見学できる。岡山観光WEBの案内では、見学できるのは平日の午前10時から午後3時までで、土曜・日曜・祝日は休みである。一方、岡山県の文化財紹介は午前9時から午後4時30分とし、内部の見学には連絡が必要としている。案内によって時間が異なり、建物が無人のこともあるため、訪問前に富公民館(電話0867-57-2030)へ問い合わせておくのが確実である。撮影の可否について公表された案内は見当たらないため、見学の際に確認してほしい。
公共交通機関では、JR津山駅から津山・富線の共同バスに乗り、終点の富振興センター前まで約90分、下車して徒歩約2分である。便数が限られるので、時刻表を事前に調べておきたい。車では中国自動車道の院庄インターチェンジから約50分、米子自動車道の久世インターチェンジから約20分で、普通車10台分の駐車場がある。
Q&A
- 旧森江家住宅は見学できますか?見学時間と料金は?
- 旧森江家住宅は無料で見学できます。岡山観光WEBでは平日の午前10時から午後3時まで、土曜・日曜・祝日は休みとされていますが、岡山県の案内は午前9時から午後4時30分としています。事前に富公民館(0867-57-2030)へ確認してください。
- 旧森江家住宅へはバスで行けますか?
- JR津山駅から津山・富線の共同バスで終点の富振興センター前まで約90分、下車して徒歩約2分です。便数が少ないため、時刻表の確認が欠かせません。
- 旧森江家住宅はいつ建てられ、いつ重要文化財になりましたか?
- 旧森江家住宅は江戸時代中期、17世紀後半頃の建築と推定されています。昭和44年(1969年)6月20日に重要文化財に指定されました。
- 旧森江家住宅の「三間取り広間型」とはどんな間取りですか?
- 土間の上手に梁間いっぱいの広い居間「いたば」をとり、その奥に座敷「おくのま」と寝室「なんど」を並べた3室の間取りです。旧森江家住宅では、土間の下手にうまやと炊事の場所があります。
- 旧森江家住宅の名称にある「富村」とは今のどこですか?
- 富村は旧森江家住宅が指定された当時の村名で、現在は岡山県苫田郡鏡野町の富地域にあたります。建物はもと村内の別の場所にあり、富振興センターの近くに移築されました。
基本情報
| 名称 | 旧森江家住宅(岡山県苫田郡富村) |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県苫田郡鏡野町富西谷118番地 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 昭和44年(1969年)6月20日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行15.1m、梁間8.7m(文化庁データベース) |
| 所有者 | 鏡野町 |
| 公開状況 | 見学可(無料、事前確認を推奨) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)「旧森江家住宅(岡山県苫田郡富村)」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3093
- 文化遺産オンライン「旧森江家住宅(岡山県苫田郡富村)」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195750
- 岡山県「旧森江家住宅」(岡山県の文化財)
- https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/260775.pdf
- 岡山県「国指定文化財一覧(その5)重要文化財(建造物)」
- https://www.pref.okayama.jp/page/detail-50626.html
- 鏡野町「富地域」
- https://www.town.kagamino.lg.jp/soshiki/22/1798.html
- 岡山観光WEB「旧森江家住宅」
- https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_11738.html
- 津山瓦版「旧森江家住宅(国指定重要文化財)鏡野町」
- https://www.e-tsuyama.com/report/2020/05/2020-5-23-1.html
最終更新日: 2026.10.02