大正11年、本殿修理にあわせて建った拝殿

中山神社拝殿は、岡山県津山市一宮にある大正11年(1922年)建立の木造平屋建の拝殿で、令和3年(2021年)6月24日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は33-0347、建築面積は80平方メートルである。

中山神社(なかやまじんじゃ、旧称「仲山大明神」、通称「一宮さま」)は美作国一宮であり、延喜式では美作国唯一の名神大社に数えられる。社伝では慶雲4年(707年)の創建と伝わる。拝殿のすぐ背後に建つ本殿は、永正8年(1511年)と天文2年(1533年)の兵火で焼失した社殿を、永禄2年(1559年)に尼子晴久が復興したもので、大正3年(1914年)4月17日に指定を受けている(旧法下の国宝建造物、現在の重要文化財)。

拝殿はその本殿の修理に合わせて建てられた。屋根は本殿と同じ檜皮葺、形式は入母屋造の平入で、正面には唐破風の向拝が張り出す。本殿とは363年の隔たりがあるが、材と葺き方を揃えたために、境内では一続きの社殿として目に入る。

設計者・江川三郎八の手つき

文化庁のデータベースは設計者を江川三郎八(えがわ さぶろうはち、1860年〜1939年)と明記する。登録の理由も、実質はこの一点にある。

江川は会津若松の出身で、堂宮大工としての修業を経て明治20年(1887年)に福島県の建築技師となり、明治35年(1902年)に岡山県へ転じた。名を知られるのは擬洋風の学校建築や警察署のたぐいで、明治40年(1907年)竣工の旧遷喬尋常小学校校舎(真庭市、重要文化財)に見られる無柱の講堂は、後に「江川式」と呼ばれる木造トラスの成果である。

中山神社の仕事には、その洋風の語彙が一切出てこない。登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説文が挙げるのは、特異なプロポーションの扱い、吹寄垂木、格天井、そして直線的な舟肘木の使用である。トラスの技師ではなく、堂宮大工の癖が出ている箇所を選んで評価している、と読める。

唐破風の下で目を上げる

正面中央の建具は両折板唐戸、その左右は格子戸の引違である。中央だけが板戸で閉じ、両脇は格子で光を通す。石段の下から見上げれば、唐破風の反りが視線を軒裏へ導く。

軒裏では垂木の並びを確かめたい。等間隔ではなく、二本ずつを寄せて配する吹寄垂木で、間の空きに独特の律動が出る。内部は格天井、組物の肘木は反りを抑えた直線的な舟肘木で、これも解説文が名指しする箇所である。

境内は参拝自由で、拝観料の設定は公表されていない。社殿は外からの拝観が基本で、本殿内部は通常公開されない。堂内の撮影については、拝殿右手の社務所に確認するのが確実である。御朱印も社務所で受けられる。駐車場は約500台分。

JR津山駅からは北へ約5キロメートル。岡山県の観光情報では、津山駅から西田辺行きバスで約20分、「一宮保育所前」下車すぐ、中国自動車道院庄インターチェンジから車で約15分とされる。拝殿が神事の場となるのは4月29日の春季大祭(御田植祭)と11月3日の秋季大祭(御神幸祭)で、前者では白装束の氏子が参道の石畳を田に見立てて木鍬を打ち込む鍬振り神事が行われる。

参道入口の花崗岩の鳥居は寛政3年(1791年)の建立。貫が柱の外へ出ず木鼻を持たない形式で、「中山鳥居」として一形式に数えられる。拝殿を見る前に、この鳥居で一度足を止めておきたい。

Q&A

Q中山神社拝殿はどこにあり、いつ建てられたものですか?
A岡山県津山市一宮695-2、中山神社の境内にあります。大正11年(1922年)、背後の本殿の修理に合わせて建てられました。
Q中山神社拝殿は重要文化財ですか?
A拝殿は登録有形文化財(建造物)で、令和3年(2021年)6月24日の登録です。重要文化財に指定されているのは永禄2年(1559年)の本殿のほうで、大正3年(1914年)の指定です。登録は指定より緩やかな保護制度で、おおむね築50年以上の建造物が対象となります。
Q中山神社拝殿の内部に入ることはできますか。拝観料は必要ですか?
A境内は参拝自由で、拝観料は公表されていません。通常は正面から参拝し、社殿は外観の拝観となります。本殿内部は一般公開されていません。堂内の撮影可否は社務所でご確認ください。
Q中山神社拝殿を設計したのは誰ですか?
A岡山県の建築技師・江川三郎八です。会津若松の出身で堂宮大工の修業を積み、福島県を経て岡山県に転任しました。旧遷喬尋常小学校校舎(重要文化財)など擬洋風の木造建築で知られます。
Q中山神社拝殿へのアクセス方法を教えてください。
AJR津山駅から北へ約5キロメートルです。岡山県の観光情報では、津山駅から西田辺行きバスで約20分「一宮保育所前」下車すぐ、中国自動車道院庄インターチェンジから車で約15分とされています。駐車場は約500台分あります。

基本情報

名称中山神社拝殿(なかやまじんじゃはいでん)
所在地岡山県津山市一宮695-2
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 33-0347
指定年令和3年(2021年)6月24日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、檜皮葺、建築面積80平方メートル
所有者宗教法人中山神社
公開状況境内は参拝自由(外観拝観)。拝観料の公表なし。駐車場約500台

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 中山神社拝殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013889
文化遺産オンライン — 中山神社拝殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/519937
文化遺産オンライン — 中山神社本殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/148221
岡山県神社庁 — 中山神社
https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/16978/
岡山観光WEB — 中山神社
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10532.html

最終更新日: 2026.08.06