八幡神社鳥居とは ― 葦守八幡宮の表参道に立つ康安元年の石鳥居

八幡神社鳥居は、岡山県岡山市北区下足守の葦守八幡宮の表参道に立つ、室町時代前期の康安元年(1361年)に造られた石造の両部鳥居で、昭和31年(1956年)に国の重要文化財に指定された。

文化財の名称が「八幡神社」となっているのは、指定を受けた当時の社名によるものである。岡山県の資料によれば、旧足守藩の総鎮守だった八幡神社は昭和53年(1978年)に葦守八幡宮と改称した。このため現地や案内書では「葦守八幡宮の石鳥居」と書かれることも多いが、指す物は同じ八幡神社鳥居である。読みは「はちまんじんじゃとりい」。

社地そのものの歴史は古い。岡山県神社庁の由緒によると、平安時代末期の嘉応元年(1169年)に描かれた足守荘の絵図には、いまの社地に「八幡宮」の文字が見え、社と鳥居が描き込まれているという。絵図の鳥居と現在の八幡神社鳥居が同じものかは分からない。ただ、この場所の社が早くから鳥居を備えていたことはうかがえる。

重要文化財に指定された理由 ― 年紀と作者が刻まれた両部鳥居

八幡神社鳥居の価値は、まず造られた年がはっきりしていることにある。柱には「康安元年辛丑十月二日」の日付とともに、願主として神主の賀陽重人、大工として沙弥妙阿、さらに僧の頼澄の名が刻まれている。文化庁のデータベースは構造を「石造両部鳥居」とし、この刻銘があることを明記している。康安は北朝の元号で、時代区分では室町時代前期、南北朝期にあたる。

願主の賀陽氏は、古代から足守一帯に勢力をもった一族である。岡山市の観光案内は、葦守八幡宮を創建したと伝わる吉備仲彦の血筋を賀陽氏が引き継いだと紹介しており、神社庁の由緒も賀陽氏が代々神主を出したと記す。鳥居の刻銘は、その神主家が14世紀に参道の入口を石で整えたことを示す記録でもある。

石工の妙阿については、もう一つ手がかりが残る。足守地区上高田の鼓神社にある宝塔(重要文化財)にも妙阿の名が貞和2年(1346年)の年号とともに刻まれており、岡山県の解説も同じ石工の作としている。15年の間をおいて、同じ職人が宝塔と八幡神社鳥居を手がけたことになる。南北朝期の備中で活動した石工の仕事を、2点並べて確かめられる珍しい例である。

評価の言い方は資料によって幅がある。岡山県は、南北朝期の石鳥居として造立時の姿をほぼ保つ、全国的にも貴重な遺存例と位置づける。岡山市教育委員会の文化財解説は両部鳥居として「わが国で最古級」とし、岡山市の観光案内は銘のある石鳥居として日本最古と書く。どの範囲で「最古」とするかは資料ごとに異なるため、本稿では、年紀の分かるきわめて古い石造両部鳥居として紹介しておく。

八幡神社鳥居の見どころ ― 控柱と垣、柱の刻銘

八幡神社鳥居は花崗岩製で、高さは約4.3メートル。形式は明神鳥居を基本に、2本の本柱それぞれの前後へ控柱を添え、本柱と控柱のあいだに垣を渡したものである。

正面から見ると一般的な石鳥居と大きくは変わらない。少し斜めに回り込むと、本柱の足もとを前後から控柱が支え、低い垣がそれをつないでいる様子がよく分かる。両部鳥居の特徴はこの足まわりにあるので、正面と側面の両方から眺めておきたい。

刻銘は柱の表面に彫られている。600年以上を経た花崗岩の表面は風化が進み、文字の輪郭が浅くなっている部分もある。日差しが斜めに当たる朝夕のほうが、彫りの陰影が出て字を追いやすい。

鳥居をくぐった先の小高い丘に葦守八幡宮の社殿がある。八幡神社鳥居は社殿の前ではなく、表参道の入口にあたる位置に立っているため、社殿だけを目指して車で向かうと見落としやすい。

八幡神社鳥居の見学方法 ― 足守駅からのアクセスと撮影

八幡神社鳥居は屋外の参道に立っており、外観はいつでも見学できる。見学のための受付や料金は設けられていない。屋外の構造物なので外観の撮影にも支障はないが、周辺の私有地や車道には立ち入らないよう気をつけたい。

最寄り駅はJR吉備線(桃太郎線)の足守駅で、岡山県の資料では駅から約4キロメートルとされる。歩くとおよそ1時間かかるため、タクシーか車の利用が現実的である。岡山県神社庁の情報では、葦守八幡宮の所在地は岡山市北区下足守468で、駐車場は約10台分ある。祭礼などの問い合わせ先は葦守八幡宮(電話086-295-1770)。

足守地区には、同じ石工妙阿が手がけた鼓神社宝塔も上高田にある。八幡神社鳥居とあわせて見ると、2つの刻銘の年代差がそのまま実感できる。

Q&A

Q八幡神社鳥居はいつ造られたものですか?
A柱の刻銘から、康安元年(1361年)10月2日の造立と分かります。時代区分では室町時代前期、南北朝期にあたります。
Q八幡神社鳥居はなぜ重要文化財に指定されているのですか?
A造立年と願主・石工の名が刻まれた石造の両部鳥居で、南北朝期の姿をほぼそのまま残しているためです。昭和31年(1956年)6月28日に重要文化財に指定されました。
Q八幡神社鳥居と葦守八幡宮の石鳥居は同じものですか?
A同じものです。指定当時の社名が八幡神社で、神社は昭和53年(1978年)に葦守八幡宮と改称しました。文化財の名称は指定時のまま残っています。
Q八幡神社鳥居の見学に料金はかかりますか?写真は撮れますか?
A屋外の参道に立つ鳥居なので、外観はいつでも無料で見られ、撮影もできます。周辺の私有地には入らないよう注意してください。
Q八幡神社鳥居へはJR足守駅からどう行けばよいですか?
A足守駅から約4キロメートル離れています。タクシーか車が便利で、葦守八幡宮には約10台分の駐車場があります。

基本情報

名称八幡神社鳥居
所在地岡山県岡山市北区下足守(葦守八幡宮 表参道)
指定区分重要文化財(建造物)
指定年昭和31年(1956年)6月28日
員数1基
寸法高さ約4.3メートル
所有者葦守八幡宮
公開状況屋外に立ち、外観は常時見学可(無料)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)八幡神社鳥居
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3000
岡山県 国指定重要文化財(建造物)八幡神社鳥居 解説
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/260673.pdf
岡山市 LIFEおかやま 文化財情報 八幡神社鳥居
https://www.city.okayama.jp/life/0000041510.html
岡山市 足守の見どころ(寺社・史跡編)
https://www.city.okayama.jp/kankou/0000004792.html
岡山県神社庁 葦守八幡宮
https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/18523/

最終更新日: 2026.09.25