山成酒造離れ座敷

敷地の北東隅、働く建物から少し離れて建つのが、町並みではなく造形の質によって登録された一棟、離れ座敷である。大正4年(1915年)の建築で、建築面積57平方メートルの平屋建。屋根は寄棟造の桟瓦葺とし、南と東に下屋をめぐらす。

どんな建物か

間取りは東西に二室を並べる。東室は床と違棚を北辺に備えた座敷、西室は仏壇と押入を構えた仏間である。

南と東には縁をめぐらせて中庭を望み、内蔵はその縁を介してつながる。この座敷は、通りではなく客に向けられた、一家のもう一つの顔であった。

登録の理由と価値

6棟のうち、令和6年(2024年)3月6日に『造形の規範となっているもの』を理由として登録されたのはこの建物だけである(登録番号33-0362)。ほかの5棟が歴史的景観を理由とするのに対し、この一棟は型としての完成度で評価された。床、違棚、中庭に向く縁まわりに、大正期の小さな座敷を丁寧に仕立てた例として位置づけられている。

登録は、国宝や重要文化財の指定とは別の、より軽い仕組みである。この座敷もその枠で守られ、生きた用に供されてきた。その用は人を迎えることであった。栄えた造り酒屋の一家が、こうした部屋で客を遇したのである。

見どころ

まず東室の床と違棚を見たい。その仕口と釣り合いこそが登録の理由である。次に縁をたどって庭側へ回ると、この部屋が向けて構えられた眺めに出る。

座敷を建てた一家は、代々名のある人々と縁を結んだ。酒蔵の伝えるところでは、漢学者の阪谷朗廬とは縁戚にあたり、のちの家のつながりから、作家の谷崎潤一郎がこの蔵の酒を好んだとも言われる。これらはこの部屋での出来事というより一家の広い歴史に属するが、この座敷がどのような客を迎えるための場であったかを想像させる。

Q&A

Qこの建物はなぜ他と登録理由が違うのですか。
A6棟で唯一、町並みではなく『造形の規範』を理由に登録されたためです。床や違棚、庭に向く座敷の仕立ての良さが評価されました。
Q二つの部屋は何ですか。
A東室は床と違棚を備えた座敷(客間)、西室は仏壇を置く仏間です。客を迎える室と、家の仏を祀る室を並べています。
Qいつ建てられましたか。
A大正4年(1915年)の建築で、6棟のうち最も新しい一棟です。造り酒屋に余裕のあった時期に加えられた平屋の客間です。
Q谷崎潤一郎にまつわる話は本当ですか。
A酒蔵の伝えるところでは、一家は漢学者の阪谷朗廬らと縁戚にあり、作家の谷崎もこの蔵の酒を好んだとされます。いずれもこの部屋での確かな出来事というより、一家の広い歴史に属する話です。
Q中を見学できますか。
A内部は要事前電話予約の蔵見学で公開され、直売所もあります。営業時間や料金は変わることがあるので事前にご確認ください。

Basic Information

名称山成酒造離れ座敷(やまなりしゅぞうはなれざしき)
所在地岡山県井原市芳井町簗瀬字見瀬側23
種別登録有形文化財(建造物)
登録令和6年(2024年)3月6日/登録番号 33 - 0362
年代大正4年(1915年)
構造及び形式木造平屋建、瓦葺、建築面積57㎡
員数1棟
登録基準造形の規範となっているもの
所有者公開情報に記載なし(山成酒造が使用する現役の建物)
公開蔵見学は要事前電話予約/敷地内に直売所あり(営業時間・料金は変更の可能性があるため事前確認を)

References

文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014941
山成酒造株式会社 公式サイト
https://yamanari.jp/
岡山観光WEB(岡山県観光連盟)
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10721.html
井原市観光協会
https://www.ibarakankou.jp/shop/shopping/sake/DJ019.html

最終更新日: 2026.06.25