山成酒造店舗兼主屋
小田川が中国山地から流れ下り、井原市芳井町簗瀬の集落を抜けるあたり、その西岸の角地に、東を向いた長い建物が一棟建つ。山成酒造の店舗兼主屋である。文化元年(1804年)創業、いまでは井原市で唯一となった造り酒屋で、通りに最初に顔を見せてきたのがこの建物にあたる。扉より先に、その釣り合いが目に入る。
どんな建物か
建築は明治15年(1882年)、平成4年(1992年)に改修を受けている。木造2階建、屋根は桟瓦葺の切妻造で、長辺を通りに向ける平入とする。外壁は漆喰塗、二階の腰には海鼠壁をめぐらせる。建築面積は188平方メートルと、通りに並ぶ住居部分のなかで最も大きい。
中央やや北寄りには石敷の通り土間が南北に貫き、かつては段差なく人と荷が街路から奥へ通り抜けた。その北側に帳場と、後の時代に加えられた洋室、南側に瓶詰場と吹抜の倉庫を配する。商いと暮らしが一棟のうちにおさめられている。
登録の理由と価値
令和6年(2024年)3月6日、登録番号33-0361として国の登録有形文化財に登録された。同じ日に登録された酒蔵の6棟のうちの一つである。国の文化財には、国宝や重要文化財を選ぶ『指定』と、おおむね築50年以上で地域の景観をかたちづくる建物を対象とする『登録』の二つの仕組みがある。山成酒造の6棟はいずれも登録の側で、所有者が使い続けながら守る制度にのっており、店舗兼主屋も今なお現役の建物である。
登録が評価したのは、この建物が町並みのなかで果たす役割である。海鼠壁をまとう長い外観、深い通り土間、帳場と洋室の取り合わせが、明治の造り酒屋がいかに商いと家を整えたかを示している。
見どころ
通りから眺めると、角地に沿って軒がほとんど切れ目なく続く。この長さこそが景観上の要であり、登録の根拠でもある。海鼠壁の盛り上がった目地は、日が傾くと細かな格子の影を落とす。
見学で中に入れば、石敷の通り土間が今も建物の背骨として読み取れる。その脇に帳場、奥には、栄えた明治の商家が客を迎えるために設けた洋室が続く。
Q&A
- 店舗兼主屋はいつ建てられましたか。
- 明治15年(1882年)の建築で、平成4年に改修されています。住居部分のなかでは古い一棟ですが、仕込蔵などはやや古い時期にさかのぼります。
- 建物の中を見学できますか。
- 現役の酒蔵のため、内部は要事前電話予約の蔵見学で公開され、敷地内に直売所があります。営業時間や料金は変わることがあるので、事前にご確認ください。
- 二階の壁の海鼠壁とは何ですか。
- 平らな方形の瓦を格子に並べ、白い漆喰の目地を盛り上げた、火と雨に強い仕上げです。ここでは二階の腰にめぐらされています。
- この建物は指定ですか、登録ですか。
- 登録です。登録は、国宝や重要文化財を選ぶ指定より軽い仕組みで、特徴のある古い建物を使い続けながら守ります。
- なぜこれほど横長なのですか。
- 角地に向けて間口を長くとったためで、その切れ目のない長さが、町並みをかたちづくるものとして登録で評価されました。
Basic Information
| 名称 | 山成酒造店舗兼主屋(やまなりしゅぞうてんぽけんおもや) |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県井原市芳井町簗瀬字見瀬側23 |
| 種別 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録 | 令和6年(2024年)3月6日/登録番号 33 - 0361 |
| 年代 | 明治15年(1882年)/平成4年改修 |
| 構造及び形式 | 木造2階建、瓦葺、建築面積188㎡ |
| 員数 | 1棟 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 所有者 | 公開情報に記載なし(山成酒造が使用する現役の建物) |
| 公開 | 蔵見学は要事前電話予約/敷地内に直売所あり(営業時間・料金は変更の可能性があるため事前確認を) |
References
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014940
- 山成酒造株式会社 公式サイト
- https://yamanari.jp/
- 岡山観光WEB(岡山県観光連盟)
- https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10721.html
- 井原市観光協会
- https://www.ibarakankou.jp/shop/shopping/sake/DJ019.html
最終更新日: 2026.06.25