宇江城城跡──久米島の山頂にそびえる、沖縄県内最高所のグスク

沖縄県島尻郡久米島町、標高約310メートルの宇江城岳の山頂に築かれた「宇江城城跡(うえぐすくじょうあと)」は、沖縄県内に点在するグスク(城)のうち最も高い場所に位置する山城跡です。沖縄本島から西へ約100キロメートル離れた久米島の北部にあり、平成21年(2009年)7月23日に国の史跡に指定されました。山頂からは久米島のほぼ全体を見渡すことができ、晴れた日には粟国島(あぐにじま)や渡名喜島(となきじま)、さらには沖縄本島まで望める絶景の地です。グスク時代の政治・軍事の様相を今に伝える貴重な遺跡として、考古学的にも観光的にも高い価値を持つ史跡といえます。

琉球の海に浮かぶ山頂の城

久米島は、東シナ海に浮かぶ離島として、古くから琉球と中国・東南アジアを結ぶ海上交易の要衝でした。宇江城城は、沖縄各地で按司(あじ)と呼ばれる地方豪族が台頭した14〜15世紀のグスク時代に築かれた城です。地元に伝わる記録によると、伊敷索按司(いしきなわあじ/ちなはあじ)の長男である久米仲城按司(くめなかぐすくあじ)が築城したと伝えられており、久米島北部を支配する拠点として機能していました。

築城の正確な年代は文献に残っていませんが、城壁の考古学的調査から、14世紀後半から15世紀中頃にかけて建設されたと考えられています。およそ100年にわたって島の政治の中心となった宇江城城は、ドラマチックな最期を迎えました。第二尚氏の尚真王(しょうしんおう)による琉球統一の過程の中、1510年(1506年とする説もあります)に王府軍の攻撃を受け、火攻めにあって落城したと伝えられています。

なぜ国の史跡に指定されたのか

宇江城城跡が平成21年(2009年)に文化庁により国の史跡に指定された理由は、沖縄におけるグスク時代の政治・軍事の様相を知る上できわめて貴重な遺跡であるためです。沖縄県内のグスクのうち最高所に位置する山城という、首里城などの平地・台地のグスクとは異なる立地の特殊性は、当時の按司たちが地形を巧みに利用して支配を確立していたことを示しています。久米島のほぼ全島を一望できる宇江城岳の山頂を選んだ立地そのものが、軍事的・政治的価値の高さを物語っています。

もう一つの大きな理由は、出土遺物の豊富さです。発掘調査では、青磁の碗・皿・酒会壷など、中国から運ばれてきたとみられる陶磁器が多数発見されており、琉球統一以前から大陸との活発な交易が行われていたことを裏付けています。さらに、天目茶碗・大海茶入・茶臼などの茶道具も確認されており、城内で抹茶を喫していたことがうかがえます。これらの遺物は、当時の琉球の支配層が東アジア全域の高度な文化に参加していたことを示す重要な証拠です。

魅力と見どころ

三つの郭と独特な石積み

宇江城城は、山頂の尾根に沿って三つの郭(くるわ)が階段状に配置されています。最高所の東端部に「一の郭(いちのくるわ)」、その西側の一段下に「二の郭」、さらに下がった位置に「三の郭」が築かれ、その周囲を腰曲輪群(こしくるわぐん)が取り囲み、南に伸びるグスク道(神道)の両脇には平場群が広がっています。

宇江城城を独特なものにしているのは、城壁の石材です。沖縄本島のグスクの多くが琉球石灰岩の切石を使用するのに対し、宇江城城では地元産出の輝石安山岩(きせきあんざんがん)の板状原石が大量に用いられています。琉球石灰岩の切石が見られるのは、一の郭の虎口(こぐち)部分のみです。残念ながら、第二次世界大戦後に米軍施設の建設などに伴って多くの城壁が失われましたが、一の郭の北側と東側の石垣は破壊を免れ、現在もその姿をとどめています。

基壇と御庭──祈りの場としての顔

城内の見どころとして、儀礼の場であったと考えられる基壇(きだん)と御庭(うなー)の遺構があります。城が機能していた14世紀後半から15世紀中頃にかけて、基壇上には板葺きまたは茅葺きの社殿が建てられ、その前面の一段低い御庭には多くの人々が集まったと推定されています。グスクが単なる軍事拠点ではなく、地域共同体の祭祀・政治の中心であったことを物語る貴重な遺構です。

海を越えた交易の証

城跡からは、龍泉窯系の青磁、白磁、褐釉陶器など、多種多様な中国陶磁器が出土しています。特に注目すべきは40個体近い天目茶碗です。これだけの数の茶碗が見つかることは、城内で多くの人々が抹茶を喫していたことを示しており、当時の久米島が琉球と大陸を結ぶ重要な中継地であったこと、そして按司の文化生活が高度であったことをうかがわせます。

360度の絶景パノラマ

宇江城城跡の最大の魅力は、何といってもその眺望です。一の郭からは、久米島全体──サトウキビ畑、森林、そして島を取り囲む海──が360度にわたって見渡せます。晴れた日には粟国島や渡名喜島が水平線に浮かび、沖合には砂州の絶景「ハテの浜」がのぞめることもあります。朝日や夕日の時間帯には、息をのむような景色が広がります。

アクセスと見学情報

宇江城城跡は年中無休・入場無料で見学が可能です。三の郭の近くまで車で登ることができ、駐車場から金属製の階段や歩道を通って一の郭まで上がる構造になっています。山頂は風が強く、足場が不安定な箇所もあるため、歩きやすい靴での訪問をおすすめします。城壁は崩壊の危険があるため、立入禁止区域には絶対に入らず、案内表示に従って見学してください。

近隣に自衛隊の施設があるため、ドローンの使用には国土交通省の許可が必要です。また、登山道路は時期によって工事や迂回が発生する場合があるので、事前に最新情報を確認してから訪れると安心です。

久米島の周辺観光スポット

宇江城城跡を訪れる際には、久米島の他の見どころもあわせて楽しむのがおすすめです。城跡へ向かう道沿いには、コバルトブルーの海を見下ろす絶景スポット「比屋定バンタ(ひやじょうばんた)」があります。同じく国指定史跡である「具志川城跡」は島の南西海岸に位置し、海に突き出した岬に築かれた点で宇江城城と対照的な姿を見せてくれます。町中心部の「久米島博物館」では、両グスクから出土した遺物が展示されており、訪問前後に立ち寄ると理解が深まります。さらに、約2キロにわたって白砂が続く「イーフビーチ」や、エメラルドグリーンの海に浮かぶ砂州「ハテの浜」は、沖縄屈指の美景として知られています。

Q&A

Q宇江城城跡へのアクセス方法を教えてください。
A久米島へは沖縄本島の那覇空港から飛行機で約30分、または那覇の泊港からフェリーで渡ります。島内では、レンタカーが最も便利な移動手段です。城跡近くまで山道を車で登ることができ、駐車場から徒歩で見学エリアへ向かいます。タクシー観光プランを利用される方もいらっしゃいます。
Q入場料や開園時間はありますか?
A入場料は無料で、年中無休で見学できます。ただし山頂部には照明がないため、日中の明るい時間帯のご訪問をおすすめします。山の天気は変わりやすいので、事前に天気予報をご確認ください。
Q現地で見られる遺構にはどのようなものがありますか?
A一の郭の北側と東側を中心に石垣が現存しており、三つの郭の位置や基壇、井戸跡などが立札で示されています。発掘調査で出土した中国陶磁器などの遺物は、久米島博物館で見学いただけます。
Q他のグスクと石垣の見た目が違うのはなぜですか?
A沖縄本島のグスクの多くが琉球石灰岩を用いるのに対し、久米島では地元産出の輝石安山岩(板状の暗色火山岩)が主に使われています。このため宇江城城跡の石垣は、独特の質感と色合いを持っています。
Q見学にはどのくらいの時間がかかりますか?
A郭をめぐり眺望を楽しむには、おおよそ30〜45分が目安です。歴史や写真撮影に興味がある方は、朝日や夕日の時間帯に訪れてゆっくり過ごすのもおすすめです。

基本情報

名称 宇江城城跡(うえぐすくじょうあと)
所在地 沖縄県島尻郡久米島町仲里宇江城
指定区分 国指定史跡(平成21年〔2009年〕7月23日指定)
標高 約310メートル(宇江城岳山頂)
時代 グスク時代(14世紀後半〜16世紀初頭)
築城者(伝承) 久米仲城按司(伊敷索按司の長男)
落城 1510年頃(1506年説もあり)、第二尚氏・尚真王の琉球統一過程で陥落
主な石材 輝石安山岩(一の郭虎口部分のみ琉球石灰岩の切石)
入場 無料・年中無休(日中の見学を推奨)
管理団体 久米島町

参考文献

文化遺産オンライン「宇江城城跡」(文化庁/国立情報学研究所)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/140627
おきなわ物語「宇江城城跡」
https://www.okinawastory.jp/spot/600010657
「球美の島」楽園旅 in 久米島「宇江城城跡」
https://www.join-kumejima.com/experience/spot/uegusuku/
久米島町観光協会「宇江城城跡」
https://www.kanko-kumejima.com/spot/see/665/
ウィキペディア「宇江城城」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E6%B1%9F%E5%9F%8E%E5%9F%8E
たびらい「宇江城城跡」
https://www.tabirai.net/sightseeing/column/0006153.aspx

最終更新日: 2026.05.02