南島泉村の庄屋屋敷

松村家住宅は、大阪府羽曳野市島泉二丁目にある江戸時代の庄屋屋敷で、主屋・長屋門・土蔵3棟・内塀・外塀の7件が平成18年(2006年)8月3日に国の登録有形文化財に登録された。いちばん古い主屋は、文化庁のデータベースで江戸時代中期(1661年から1750年の範囲)の建築とされている。

羽曳野市によると、松村家は江戸時代を通じて南島泉村の庄屋をつとめた家で、明治に入ってからは堺県議会と大阪府議会の議員を務めた当主も出している。庄屋の家は村の行政の窓口でもあり、屋敷には住まいとしての部屋に加えて、役人や客を迎えるための構えが求められたとされる。

屋敷地はおよそ840坪(約2,800平方メートル)ある。長屋門を正面に据え、主屋の前後に蔵を置き、塀で庭と道を区切る構えが、7件の登録によって一体として残された。

登録された7件と登録の基準

松村家住宅の7件は、登録番号27-0374から27-0380までの連番で登録された。告示は平成18年(2006年)8月24日である。内訳と年代は次のとおりで、江戸時代中期から明治時代初期まで、およそ200年のあいだに建てられた建物と塀がそろっている。

  • 主屋(江戸時代中期):茅葺の大規模な民家で、建築面積311平方メートル
  • 長屋門・土蔵三(江戸時代後期、1751年から1829年):屋敷の南の表構え
  • 土蔵一・土蔵二(江戸時代末期、1830年から1867年):主屋の北に並ぶ蔵
  • 内塀・外塀(明治時代初期):前庭を区切る塀と、屋敷地の南辺と東辺を囲む塀

登録有形文化財の登録基準は、主屋だけが「造形の規範となっているもの」で、残る6件はすべて「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。主屋は河内の大和棟の庄屋屋敷の遺構として評価され、門・蔵・塀はその屋敷構えを外から形づくる要素として登録された、という分け方になっている。

年代にはひとつ注意がいる。大阪府建築士会などが運営する大阪文化財ナビは、主屋の主要部分を江戸時代末期から明治時代にかけての建築と考えられるものと紹介しており、文化庁データベースの「江戸中期」と食い違う。本サイトの各ページは文化庁データベースの年代に従い、この差を記しておく。

屋敷の配置を読む

松村家住宅の正面は南にある。屋敷地の南辺の中央に長屋門が東西に長く建ち、その西側に接して土蔵三が並ぶ。門と蔵が一続きの壁のように南の道に面し、ここが屋敷の顔になる。

長屋門を入ると、北に主屋が構える。主屋は屋敷地のほぼ中央に建ち、東半分を土間、西半分を床上の部屋とする。土間の入口は長屋門の北にあたり、床上部の南西には客を迎える式台の玄関が開く。式台玄関の西から南へは内塀が延び、奥座敷の庭と玄関前の庭とを区切っている。

主屋の北側、屋敷の奥には2棟の蔵がある。土間の北に土蔵二、奥座敷の北に土蔵一が、いずれも棟を東西に向けて建ち、主屋側の南面に戸口を開ける。屋敷地の北面の構えは、この2棟がつくっている。

外塀は長屋門の南東の端から東へ延び、屋敷地の南東の隅で北へ折れて、東辺の道路沿いを進む。全長は約39メートルある。

門・供部屋・蔵を組み合わせた表構えや、主屋の間取りは、同じ島泉にある吉村家住宅とよく似ている。羽曳野市は、この類似を大庄屋としての格式を示すものと説明している。吉村家住宅は、松村家住宅から北へ直線でおよそ350メートルの位置にある。

大和棟の屋敷としての松村家住宅

大和棟は、奈良盆地から河内にかけて見られる民家の屋根の形として知られる。急な勾配の茅葺の主屋根の両端を、瓦を載せた白い壁で切り、その脇に一段低い瓦葺の屋根を付けるのが基本の形である。松村家住宅の主屋でも、茅葺の主体部に、本瓦葺とした落棟と下屋が取り付く。

茅葺と瓦葺を1棟の中で使い分けるこの形は、かまどのある土間まわりを瓦で覆う防火上の工夫と、白壁で切った高い屋根で家の格を示す外観とを兼ねたものと説明されることが多い。文化庁データベースが松村家住宅主屋を「河内の大和棟の庄屋屋敷の遺構」として評価しているのも、この屋根の形と、庄屋の家にふさわしい間取りの両方を指してのことである。

見学とアクセス

松村家住宅は個人の住まいで、通常は公開されていない。大阪文化財ナビも見学不可としており、2026年9月時点で定期的な公開の案内は見当たらない。敷地内や建物の中には入れない前提で訪ね、道から外観を見るにとどめたい。

外から見やすいのは、南の道に面した長屋門と土蔵三の表構え、そして南辺から東辺へ回る外塀である。主屋の茅葺屋根や奥の土蔵は、門と塀の内側にある。撮影の決まりは公表されていないが、住まいであることを踏まえ、門前に長く立ち止まったり、門の奥へレンズを向けたりするのは控えたい。

最寄り駅は近鉄南大阪線の高鷲駅で、松村家住宅は駅から北西へ直線でおよそ500メートル、歩いて10分前後の位置にある。西隣の恵我ノ荘駅からも直線で約650メートルで、同じくらいの時間で歩ける(いずれも地図上の目安)。駐車場の案内はない。

松村家住宅についての問い合わせ先は、羽曳野市教育委員会事務局の生涯学習部文化財・世界遺産室(電話072-958-1111、代表)である。

参考文献

松村家住宅主屋(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005643
松村家住宅土蔵一(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005644
松村家住宅土蔵二(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005645
松村家住宅土蔵三(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005646
松村家住宅長屋門(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005647
松村家住宅内塀(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005648
松村家住宅外塀(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005649
松村家住宅(羽曳野市)
https://www.city.habikino.lg.jp/soshiki/shougaigakushu/bunka-sekai/bunkazainikansurukoto/bunkazai_shokai/edo/17204.html
吉村家住宅(羽曳野市)
https://www.city.habikino.lg.jp/soshiki/shougaigakushu/bunka-sekai/bunkazainikansurukoto/bunkazai_shokai/edo/2434.html
松村家住宅(大阪文化財ナビ)
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/%E6%9D%BE%E6%9D%91%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称松村家住宅
所在地大阪府羽曳野市島泉二丁目196他
指定登録有形文化財 7件
座標34.57479, 135.57996