城下町の通りに東面する酒造場
小柳酒造は、佐賀県小城市小城町にある文化年間(1804〜1818年)創業と伝わる酒造場で、主屋ほか13棟が平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財に登録された。
小城は天山山系の南麓に開けた町である。伏流水が豊富で、江戸期には小城藩の城下町として市街が形成された。酒造業はその条件の上に成り立った産業で、最盛期には町内に複数の蔵元が営業していた。小柳酒造はそのうち現在まで続く一軒にあたる。代表銘柄は「高砂」。
敷地は約3000平方メートル。県道に面した位置に主屋が東を向いて建ち、その背後に醸造の工程順で建物が並ぶ。通りから見えるのは主屋の白い塗り壁と、その奥に頭を出す煉瓦造の煙突だけで、施設の全体像は外からはつかめない。
水路を境に、住まいと醸造場が分かれる
敷地の中ほどを江戸時代に築かれた水路が南北に流れる。この水路が、小柳酒造の建物群を二つの性格に分けている。
水路の東側は生活と商いの領域である。県道に東面する主屋(1751〜1829年頃)が店舗を兼ね、その北方に大正10年(1921年)頃の離れが接続する。離れは主屋の角屋状部の北東端につながり、買い足した隣地の上に建つ。
水路の西側が醸造場になる。敷地のほぼ中央を占めるのが昭和3年(1928年)の昭和西蔵で、桁行34メートル、梁間13メートル。その東に昭和東蔵、釜場、ビン詰場が続き、釜場の南に煙突と東西2基の貯水槽、ポンプ小屋が集まる。敷地の西北隅には麹室とムロマエが並び、南方に検査室が離れて建つ。
並びは工程の順序と対応している。麹をつくり(麹室)、米を蒸し(釜場)、仕込んで貯蔵し(昭和西蔵・昭和東蔵)、瓶に詰めて出す(ビン詰場)。煙突と貯水槽は蒸気と水を供給する設備で、火と水を扱う位置にまとまって置かれている。歩く順序としては、通りから主屋、水路を渡って昭和西蔵の前へ、そこから東の釜場・煙突まわり、最後に西北隅の麹室、という流れが工程をなぞる。
建物の年代には幅がある。江戸後期の主屋、大正末の離れ、大正15年(1926年)に着手して昭和3年(1928年)に完成した一連の改良施設、そして昭和16年(1941年)の煙突と貯水槽。一つの家業が130年余りをかけて設備を更新してきた層が、敷地の上にそのまま残っている。
13棟がまとめて登録された理由
登録は平成14年(2002年)2月14日、告示は同年3月12日、第32回登録である。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、13棟すべてが同じ基準による。登録番号は主屋の41-0027から検査室の41-0040までが振られている。
個々の建物は、単体で見れば規模も意匠も控えめである。建築面積4平方メートルの東貯水槽、20平方メートルの検査室のように、単独では文化財として扱われにくいものも含まれる。それでも13棟が一括して登録されたのは、近代の造り酒屋の作業工程が建物の配置としてほぼ完全に残っている事例だからである。工程のどの段階がどこで行われたかが、現地に立てば建物の並びから読める。
小城市の文化財ページも、主屋・離れ・検査室・昭和西蔵・昭和東蔵・釜場・西貯水槽・煙突・東貯水槽・ポンプ小屋・ビン詰場・麹室・ムロマエの13件を挙げている。平成17年(2005年)11月18日には「22世紀に残す佐賀県遺産」にも認定された。
なお、文化庁の登録番号は41-0027から41-0040まで連番だが、41-0039にあたる1件は現在データベースに収録されていない。ムロマエの解説文が酒母室に触れていることから、その1棟が該当した可能性がある。現行の登録件数は文化庁データベース・小城市とも13件で一致している。
訪ねる
小柳酒造は稼働中の事業所である。文化財として全体が公開されている施設ではなく、立ち入れる範囲は売店と、蔵の一部を転用した小城蒸溜所に限られる。
売店
県道に面した主屋が売店を兼ねる。営業は午前9時から午後6時、定休日は日曜。見学可能時間は午前10時から午後4時で、見学は無料である。店内では「高砂」「高砂金漿」などを扱い、酒造りに使われていた道具や陶製の酒樽も置かれている。団体での見学は事前予約が要る。電話は0952-73-2003。
小城蒸溜所
令和2年(2020年)以降、蔵の一部が小城蒸溜所として稼働している。クラフトジン「OGIGIN 想」の製造施設で、営業は午前11時から午後5時、定休日は不定である。無料見学のほか、ようかん作り体験1,000円、海苔漉き体験2,000円、両方のセット2,500円が用意される。蔵内を自由に歩く分には事前連絡を要さないが、案内人付きの見学と各体験は事前の問い合わせが必要になる。定休日が固定されていないため、訪問前の電話が確実といえる。電話は0952-60-2095。
交通
JR唐津線小城駅から徒歩約20分。長崎自動車道の小城スマートインターチェンジから車で約5分。駐車場は無料で10台程度、大型バスも入れる。所在地は佐賀県小城市小城町903-1ほかで、離れと検査室の一部は904-1にかかる。
撮影について明文の規則は公表されていない。敷地内で撮る場合は売店または蒸溜所の受付で確認するのが望ましい。掲載した時間・料金は2026年9月14日時点の情報である。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 小柳酒造主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002712
- 国指定文化財等データベース 小柳酒造昭和西蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002714
- 国指定文化財等データベース 小柳酒造煙突(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002717
- 小城市の文化財(登録有形文化財) 小城市教育委員会文化課
- https://www.city.ogi.lg.jp/main/9887.html
最終更新日: 2026.09.13
基本情報
| 名称 | 小柳酒造 |
|---|---|
| 所在地 | 佐賀県小城市小城町903-1 |
| 指定 | 登録有形文化財 13件 |
| 座標 | 33.29882, 130.20259 |