牛津赤れんが館:明治の商都に残る赤煉瓦の倉庫建築

佐賀県小城市牛津町、旧長崎街道沿いに佇む牛津赤れんが館は、明治中期から後期にかけて建てられた煉瓦造2階建ての倉庫です。この建物は、のちに九州を代表する百貨店「玉屋」へと発展する田中丸商店の倉庫として使われていました。かつて「九州の浪速」と称されるほど商業が栄えた牛津の繁栄を今に伝える、地域のシンボル的な建築物です。

2000年(平成12年)9月に国の登録有形文化財に登録され、現在は小城市の公共施設として、絵画展やコンサート、各種イベントなどに活用されています。

歴史的背景:宿場町から商都へ

牛津は古くから有明海に面した港町のひとつであり、佐賀平野西部の米の積出港として重要な役割を果たしていました。江戸時代には長崎街道の宿場町としても栄え、多くの商人や旅人が行き交う活気あふれる町でした。

そんな牛津で商業の中心を担ったのが田中丸家です。1806年(文化3年)、初代田中丸善蔵が牛津村西町に荒物商「田中丸商店」を開業しました。初代善蔵は1866年(慶応2年)にわずか14歳で家督を継ぎ、京都・大阪の呉服問屋と直接現金取引を行うことで大きな財を築きました。

その後、2代目田中丸善蔵が佐世保に九州で2番目となる百貨店を開業し、さらに福岡、佐賀、小倉へと展開。「玉屋デパート」は九州を代表する百貨店グループへと成長しました。赤れんが館は、田中丸商店が最も繁栄していた時期に建てられた倉庫であり、当時の商家の規模と財力を物語る建築遺産です。

文化財としての価値

牛津赤れんが館は、2000年(平成12年)9月26日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録有形文化財制度は、近年の都市開発や生活様式の変化により失われつつある近代の建造物を幅広く保存・活用するために設けられた制度です。

本建物が登録された理由は複数あります。まず、長崎街道の宿場町牛津を代表する商家・田中丸商店の倉庫として、明治期の商業の繁栄を具体的に伝える建物であること。次に、煉瓦造の建築技術が良好な状態で保存されており、軒下のデンティル(歯形装飾)、石材と煉瓦を混用した妻面の空気孔、そしてやや丸みを帯びた「むくり屋根」など、西洋建築技法と日本的感性が融合した意匠が見られることです。

かつて商業で栄えた牛津の象徴的建築物として、地域の人々に長く親しまれてきました。

建築の見どころ

赤れんが館は煉瓦造2階建て、瓦葺で、建築面積は約170平方メートルです。いくつかの注目すべき建築的特徴があります。

外壁全面を覆う赤煉瓦が建物に温かみのある独特の風合いを与え、明治時代の洋風建築への憧れを感じさせます。軒下には「デンティル」と呼ばれる小さな歯形状の装飾が連続的に施されており、ファサードにリズミカルな装飾性を加えています。

妻面(切妻の三角形の壁面)には、石材と煉瓦を組み合わせた空気孔が設けられています。これは倉庫としての換気機能を果たしながら、意匠的にも優れたデザインとなっています。そして最も印象的なのが、やや上方に湾曲した「むくり屋根」です。煉瓦造の建物にむくり屋根を用いた例は珍しく、重厚な西洋風の構造に日本的なやわらかさを加えています。

内部は公共施設として改修され、2階建てのスペースがギャラリーやコンサート会場として利用されています。煉瓦の壁がそのまま残る空間は、独特の雰囲気を醸し出しています。

見学案内

牛津赤れんが館の外観はいつでも自由に見学できます。ただし、館内の常時公開は行っておらず、通常は外観のみの見学となります。隣接する牛津町会館に管理人がいる場合は、内部の見学も対応していただけることがありますので、事前に小城市教育委員会または小城市観光協会にお問い合わせされることをおすすめします。

JR長崎本線の牛津駅から徒歩圏内に位置しており、佐賀駅からは約15分でアクセスできます。周辺には旧街道沿いの歴史的な町並みが残り、散策も楽しめます。

周辺の見どころ

赤れんが館のすぐ隣には、2代目田中丸善蔵の旧邸宅として大正時代に建てられた「牛津町会館(旧田中丸家住宅)」があります。こちらも国の登録有形文化財に登録されており、南棟と北棟が畳廊下でつながれた数奇屋風の木造建築です。庭園は九年庵の庭を手がけた阿(ほとり)和尚によるものと伝えられ、庭園内には初代田中丸善蔵の銅像も立っています。

小城市内には、桜の名所として知られる小城公園(小城城跡)や、江戸時代から続く小城羊羹の老舗が軒を連ねる羊羹通りなど、見どころが豊富です。また、近隣の神埼市には、秋の紅葉で有名な九年庵があり、期間限定の一般公開時には多くの観光客が訪れます。

佐賀市内へも近く、佐賀県立博物館や佐賀城本丸歴史館で、佐賀藩の歴史や文化をさらに深く知ることができます。

Q&A

Q牛津赤れんが館とはどのような建物ですか?
A明治中期から後期に建てられた煉瓦造2階建ての倉庫で、玉屋デパートの前身である田中丸商店の倉庫として使われていました。2000年に国の登録有形文化財に登録され、現在は小城市の公共文化施設として活用されています。
Q館内を見学することはできますか?
A外観はいつでも見学可能です。館内は常時公開ではありませんが、隣の牛津町会館に管理人がいれば対応していただける場合があります。事前に小城市観光協会へお問い合わせされることをおすすめします。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR長崎本線の牛津駅から徒歩圏内です。佐賀駅からJR長崎本線で約15分で牛津駅に到着します。
Q建築上の見どころは何ですか?
A軒下のデンティル(歯形装飾)、石材と煉瓦を組み合わせた妻面の空気孔、そして煉瓦造には珍しい「むくり屋根」が主な見どころです。西洋と日本の建築美が融合した独特の意匠をお楽しみいただけます。
Q周辺に他の見どころはありますか?
Aすぐ隣に国の登録有形文化財である牛津町会館(旧田中丸家住宅)があり、美しい日本庭園を見学できます。小城市内には桜の名所・小城公園や、小城羊羹の老舗が並ぶ通りもあります。

基本情報

名称 牛津赤れんが館(旧田中丸商店れんが造り倉庫)
文化財区分 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 2000年(平成12年)9月26日
建築年代 明治中期〜後期(1890年代頃)
構造 煉瓦造2階建、瓦葺、建築面積約170㎡
所在地 佐賀県小城市牛津町牛津586-1
所有者 小城市
アクセス JR長崎本線 牛津駅より徒歩圏内

参考文献

牛津赤れんが館(旧田中丸商店れんが造り倉庫) — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/137548
牛津赤れんが館(Akarengakan) — オギナビ|小城市観光協会
https://www.ogi-kankou.com/tourist/akarengakan.html
牛津赤れんが館 — 小城市役所
https://www.city.ogi.lg.jp/main/4987.html
国指定文化財等データベース — 文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004713
玉屋 (百貨店) — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E5%B1%8B_(%E7%99%BE%E8%B2%A8%E5%BA%97)

最終更新日: 2026.04.09