敷地の奥に建つ蔵
福井三四郎家住宅土蔵は、滋賀県高島市勝野1320にある江戸時代19世紀前期の土蔵で、平成11年(1999年)8月23日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。
建つ位置は敷地の北西端、主屋の背面にあたる。この配置には理由がある。大溝城下町の町人地は、通りに面する間口が狭く奥行きの深い短冊形に地割りされた。店と住まいは通り側に置き、蔵は奥へ引く。隣家の店先から火が出たときの距離を稼ぐ考え方であり、町人地の区画割りがそのまま建物の並びを決めていた。
規模は桁行三間、梁間二間。土蔵造の二階建で、屋根は瓦葺。建築面積は39平方メートルを測る。土蔵としては小ぶりな部類に入り、その寸法そのものが用途を語っている。
醤油のためではない蔵
文化庁のデータベースは、この建物について踏み込んだ書き方をしている。福井家が営んでいた醤油醸造のためではなく、生活用品を収めていた蔵である、と明記するのである。
醸造業を営む商家の敷地は、性格の異なる二つの機能を同時に抱えていた。原料や道具、仕込み中の桶を扱う生業の場と、衣類・寝具・什器・書類・季節の道具を湿気と火から守る暮らしの場である。両者を別棟に分けて配置する判断は実用から出たものだが、その判断の跡が建物の並びとして今も読み取れる。
構造の仕上げも同じことを示す。壁の上部と軒周りは漆喰塗り。土蔵の防火性能を担う部分である。一方それより下は縦板貼りで、地面まで漆喰で塗り込めてはいない。総漆喰は費用がかさむが防火性は高く、縦板貼りは安価で、風雨で傷んだ際の取り替えも容易だった。商品を納める蔵と、家財を納める蔵とでは、かける手間の水準が違ったということになる。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録番号は25-0116、登録告示は平成11年9月7日である。
現地での見どころ
この土蔵は「高島びれっじ」の敷地内にある。平成7年(1995年)に旧高島町商工会の有志が始めた地域再生の取り組みで、通りに面する主屋は2号館として食事処とパン店が入り、敷地内の蔵や納屋も順次改修されて店舗に転用されてきた。
この土蔵の内部に入れるかどうかは、訪問時の利用状況による。びれっじの各店舗か、近くの大溝陣屋総門(案内所)で確認してから動くのが確実である。敷地内からの外観の見学は営業時間内であれば自由で、料金もかからない。
注目したいのは、漆喰と板とが切り替わる一本の線である。壁のかなり高い位置、おおよそ二階の床の高さに水平に走り、建物をぐるりと巡る。線の上は白く滑らかで、下は板の木目と目地の影が光を細かく割る。外観の撮影に制限はない。
同じ福井三四郎家住宅として、18世紀後期の主屋と、麹を扱うための小さな室(むろ)も登録されている。交通はJR湖西線・近江高島駅から徒歩約5分。この一帯は平成27年(2015年)1月に重要文化的景観「大溝の水辺景観」に選定された範囲に含まれ、大溝城跡の石垣や乙女ヶ池も同じ選定範囲にある。
Q&A
- 福井三四郎家住宅土蔵には何が収められていたのですか。
- 生活用品です。文化庁の国指定文化財等データベースは、福井家が営んでいた醤油醸造のための蔵ではなく、家財を収める蔵であったと記しています。
- 福井三四郎家住宅土蔵の内部は見学できますか。
- 内部に入れるかどうかは訪問時の利用状況によります。敷地は高島びれっじ事業協同組合が管理運営しており、外観は営業時間内であれば敷地内から無料で見られます。内部の見学を希望する場合は、びれっじの店舗などで確認してください。
- 福井三四郎家住宅土蔵の壁が途中から板貼りになっているのはなぜですか。
- 壁の上部と軒周りは防火のため漆喰塗りとし、それより下は縦板貼りとしています。板貼りは費用が安く、傷んだ部分の取り替えも容易でした。商品ではなく家財を収める蔵であったことと対応する仕上げと考えられます。
- 福井三四郎家住宅土蔵の規模はどれくらいですか。
- 桁行三間、梁間二間で、建築面積は39平方メートルです。土蔵造の二階建、屋根は瓦葺。一家の家財を収めるのに見合った、小ぶりな蔵です。
- 福井三四郎家住宅へのアクセスを教えてください。
- JR湖西線・近江高島駅から徒歩約5分、所在地は高島市勝野1320です。車の場合は市営勝野駐車場(無料)が利用できます。近くの大溝陣屋総門は10時から17時、水曜休館で、周辺の案内も受けられます。
基本情報
| 名称 | 福井三四郎家住宅土蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県高島市勝野1320 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 25-0116 |
| 指定年 | 登録 平成11年(1999年)8月23日/告示 同年9月7日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積39平方メートル。桁行三間、梁間二間 |
| 所有者 | 高島びれっじ事業協同組合 |
| 公開状況 | 営業時間内は敷地内から外観の見学可。内部は利用状況による |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「福井三四郎家住宅土蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001279
- びわ湖高島観光ガイド「高島びれっじ」
- https://takashima-kanko.jp/spot/2018/06/post_211.html
- 高島市「大溝陣屋 総門」
- https://www.city.takashima.lg.jp/soshiki/bunkasports/bunkazaika/3/1/10978.html
- 全国文化的景観地区連絡協議会「大溝の水辺景観」
- https://www.bunkeikyo.jp/landscape/landscape-318
最終更新日: 2026.08.04