信楽川のほとりに残る鎌倉後期の本殿

春日神社本殿は、滋賀県大津市大石富川町の春日神社にある鎌倉時代後期、文保3年(1319年)建立の本殿で、明治35年(1902年)4月17日に国の重要文化財に指定された。

春日神社は、大津市の南部、信楽へ抜ける国道422号沿いに鎮座し、すぐそばを信楽川が西へ流れている。伝承によれば、久寿元年(1154年)に藤原重友が奈良の春日社から分霊を迎えたのが始まりとされる。

社名から春日造の社殿を思い浮かべる人は多いだろう。ところが春日神社本殿は春日造ではない。正面2間の入母屋造という、神社の本殿としてはめったに見られない形をとっている。

二間社入母屋造という珍しい形式

文化庁の国指定文化財等データベースは、春日神社本殿の構造を桁行2間、梁間2間、一重、入母屋造、向拝2間、檜皮葺と記録している。

要になるのは「二間社」であることだ。神社の本殿は正面の柱間を1間・3間と奇数にするのが普通で、中央の柱間が入口になる。正面を2間にすると柱は3本になり、ちょうど中央に柱が1本立つ。国土交通省の大戸川ダム工事事務所がまとめた解説は、この二間社で入母屋造という組み合わせを全国でも類例の少ない貴重なものとし、鎌倉時代後期の社殿の特色をよく残していると評価している。

大津市歴史博物館の解説によれば、同じ形式の社殿は、国指定の建造物のなかでは群馬県にある室町時代の1例があるだけだという。建立年を比べれば、春日神社本殿のほうが古いことになる。

同じ解説は、後の時代の改造が少ないことと、各部の彫刻の出来のよさにも触れている。重要文化財の指定は明治35年(1902年)で、国による社寺建築の保護が始まって間もない時期にあたる。

春日神社本殿の見どころ

正面に立ったら、まず柱の数を数えてみたい。中央に柱が立つ二間社の構えは、見慣れた社殿の正面とどこか違う印象を与える。その違和感こそが、この本殿の個性である。

次に屋根を見る。入母屋造の屋根に、正面へ張り出した2間の向拝が取りつき、檜皮の軒が重なる。側面へ回れば、入母屋の妻の三角形と、その下に続く寄棟の流れの関係がつかみやすい。

細部の見どころは柱間の中央を飾る蟇股である。国土交通省の解説はその輪郭線の美しさを挙げ、大津市歴史博物館は唐草と揚羽蝶を組み合わせた精巧な図柄を紹介している。

春日神社本殿の見学方法

春日神社本殿の内部は公開されておらず、見学は外観に限られる。本殿は境内の奥に建っており、蟇股のような細部を間近で見られるとは限らない。双眼鏡や望遠のきくカメラがあると細部を確かめやすい。常駐の社務所や拝観受付の案内は確認できず、拝観料の定めも見当たらない。撮影を制限する掲示の情報も確認できなかったが、祭礼や参拝の妨げにならないよう配慮したい。

公共交通機関を使う場合、大津市歴史博物館の案内では、JR石山駅から京阪バスの大石方面行きに乗り、「鹿跳橋」で降りて東へ歩いて約50分かかる。徒歩の区間が長いので、車の利用が現実的である。社は国道422号に面している。

Q&A

Q大津市大石の春日神社本殿はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されましたか?
A鎌倉時代後期の文保3年(1319年)の建立です。重要文化財の指定は明治35年(1902年)4月17日です。
Q春日神社本殿(大津市)は春日造ですか?
A春日造ではありません。正面2間、側面2間の入母屋造に2間の向拝を付けた形で、檜皮葺です。
Q春日神社本殿の「二間社入母屋造」はなぜ珍しいのですか?
A神社の本殿は正面の柱間を奇数にするのが普通ですが、二間社では正面の中央に柱が立ちます。大津市歴史博物館によれば、国指定建造物でこの形式の社殿は、ほかに群馬県の室町時代の1例しかありません。
Q春日神社本殿(大津市)の内部は見学できますか?
A内部は公開されていません。外観のみ見学できます。本殿は境内の奥に建つため、細部を見るなら双眼鏡があると便利です。
Q大津市大石富川町の春日神社へはどう行けばよいですか?
AJR石山駅から京阪バス大石方面行きで「鹿跳橋」下車、東へ徒歩約50分です。国道422号沿いにあるため、車の利用が現実的です。

基本情報

名称春日神社本殿(かすがじんじゃほんでん)
所在地滋賀県大津市大石富川町
指定区分重要文化財(建造物)
指定年明治35年(1902年)4月17日指定
員数1棟
寸法桁行2間、梁間2間、向拝2間(二間社入母屋造、檜皮葺)
所有者春日神社
公開状況内部非公開、外観のみ見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース ― 春日神社本殿(大津市)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1366
大津市歴史博物館 大津の歴史事典 ― 春日神社
https://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/db/jiten/data/149.html
国土交通省 近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所 ― 周辺地域の歴史文化・名所(か行)
https://www.kkr.mlit.go.jp/daido/gaiyo/go/detail-ka.html

最終更新日: 2026.09.24