撫で仏を祀る小さな瓦屋寺賓頭盧堂

瓦屋寺の本堂前方に、西面して建つのが七棟のなかで最も小さい瓦屋寺賓頭盧堂である。建築面積はわずか3平方メートルほど。その狭い一間に、古来より病気平癒を願われてきた賓頭盧尊者の像を安置し、細部まで禅宗様でまとめている。建立は文政元年(1818)で、寺の江戸期の堂のうちもっとも新しい。

瓦屋寺は箕作山中腹の臨済宗妙心寺派寺院である。寺伝では、聖徳太子が摂津四天王寺のためこの地で十万枚を超える瓦を焼かせたことに寺名が由来すると伝わる。永禄11年(1568)に全焼したのち、正保年間から香山祖桂が禅寺として再興した。この小堂は、その長い造営の末期、19世紀初頭に加えられたものである。

小さな堂に凝縮された禅宗様

賓頭盧堂は平成30年(2018)3月27日、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録有形文化財に登録された(登録番号25-414)。特筆すべきは、これほど小さな堂に禅宗様の語彙を余さず盛り込んでいる点にある。

方一間、宝形造で桟瓦葺。角柱に台輪を廻し、その上の組物は間を詰めて並べる詰組とし、軒は放射状に広がる扇垂木で構える。いずれも禅宗様の特色である。正面には桟唐戸をたてこむ。内部は土間で、賓頭盧像を安置し、棹縁天井を張る。堂の大きさに比して、正しい禅宗様の細部が異例なほど密に収められている。

訪ねる際の見どころ

賓頭盧堂は近づいて見るほど味わいが増す。堂全体が人ひとりほどの大きさしかないため、詰組や軒の扇垂木がちょうど目の高さにあり、大きな門で見上げるよりずっと観察しやすい。禅宗様が実際の木組みでどう現れるかを、規模と装飾をそぎ落とした形で学べる場でもある。

賓頭盧は梵語でピンドーラといい、病を癒す尊者とされる。参拝者が自らの患う箇所に当たる像の部位を撫で、同じ場所に手を触れて平癒を願う習わしが広く行われ、像は長年の手で滑らかに擦れていることが多い。瓦屋寺の他の堂と同じく、紅葉が境内を彩る11月中旬にその姿はもっとも映える。座禅・写経は予約により体験できる。

Q&A

Q賓頭盧とは誰ですか。
A賓頭盧(梵語ピンドーラ)は、釈迦の弟子である十六羅漢の一人で、とりわけ病気平癒との結びつきで知られます。
Q像を撫でる習わしとは何ですか。
A自分の患う部位に当たる像の箇所を撫で、同じ場所を自身に触れて平癒を願う習わしです。撫で仏として親しまれます。
Qこれほど小さな堂がなぜ注目されるのですか。
A約3平方メートルしかないにもかかわらず、詰組や扇垂木を含む禅宗様の語彙を余さず小さな軀体に収めているためです。
Q建立はいつですか。
A文政元年(1818)で、瓦屋寺の江戸期の堂のなかで最も新しい建立です。
Q扇垂木とは何ですか。
A扇の骨のように放射状に配する垂木で、軒に見られる禅宗様の特色のひとつです。

基本データ

名称瓦屋寺賓頭盧堂
所在地滋賀県東近江市建部瓦屋寺町436
指定区分登録有形文化財(平成30年3月27日登録/登録番号25-414)
年代文政元年(1818)
構造1棟 木造平屋建、瓦葺、方一間・宝形造、建築面積約3.0㎡
所有者宗教法人瓦屋寺
交通近江鉄道八日市駅から車で約15分

参考文献

文化庁 — 国指定文化財等データベース 瓦屋寺賓頭盧堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012176
東近江市観光Web — 瓦屋禅寺
https://www.higashiomi.net/media/miru/kawarayazenji
ウィキペディア — 瓦屋寺
https://ja.wikipedia.org/wiki/瓦屋寺

最終更新日: 2026.07.05