葛野常満家住宅の成り立ち

葛野常満家住宅は、滋賀県大津市葛川坊村町にある、天保年間(1830〜1843年)の主屋と明治6年(1873年)の蔵からなる住宅で、2棟とも平成13年(2001年)11月20日に登録有形文化財に登録された。文化庁のふりがなは「くずのじょうまんけじゅうたく」である。

坊村は、比良山地の西側の谷を通る若狭街道(国道367号、通称鯖街道)沿いの集落で、明王院の門前にあたる。大津市の資料によれば、明王院は貞観元年(859年)に比叡山の僧相応が不動明王を感得したことに始まり、以来、天台の回峰行の道場とされてきた。

文化庁の解説は、葛野常満家をこの明王院の政所を務めた家としている。政所は寺の事務や所領の管理を受け持つ役所の呼び名で、その役目を担った家の屋敷が、門前の入口の角地を占めている。

参道の入口に建つ葛野常満家住宅の2棟

葛野常満家住宅の敷地は、若狭街道から明王院の参道へ折れる角にある。参道を挟んだ向かいには、代々明王院の信徒総代を務めた葛野常喜家の屋敷が建ち、二つの葛野家が参道の入口の両側に並ぶ。

主屋は木造平屋建で、入母屋造の茅葺屋根を鉄板で覆っている。外から見れば農家の姿だが、文化庁は通りニワをもつ平面と、技巧的で堅牢な軸組を、この地域に類例のない特異なものと評価した。蔵は主屋の北に建つ土蔵造2階建で、参道に妻面を向け、腰に高く張った焼板と上部の漆喰が黒と白の二段をつくる。

2棟の登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁は主屋を門前集落の景観形成の核、蔵を参道の景観の主要な要素と位置づけた。構造や見どころの詳細は、主屋と蔵それぞれのページで扱う。

葛野常満家住宅の見学方法とアクセス

葛野常満家住宅は一般公開の施設ではなく、文化庁や大津市の資料にも内部公開の案内は見当たらない。見学は参道や街道から外観を眺める形になる。敷地には立ち入らず、車の通行の妨げにならない位置から見てほしい。

公共交通は限られる。江若交通の堅田葛川線(51系統、細川行き)がJR湖西線堅田駅の3番のりばから出ており、坊村で降りれば明王院の門前はすぐである。ただし運行は春分の日から12月第1日曜日までの土曜・休日だけで、1日1往復しかない。停留所時刻表では、堅田駅を午前8時50分に出て坊村に午前9時28分に着き、堅田駅行きは坊村を午前9時51分に出る。時間をかけて見たい場合は、国道367号を車で訪ねるのが現実的である。

時刻は2026年10月に江若交通の停留所時刻表で確かめたもので、ダイヤは改正されることがある。出かける前に最新の時刻表を確認しておきたい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「葛野常満家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002550
文化庁 国指定文化財等データベース「葛野常満家住宅蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002551
大津市スポーツ推進委員協議会『地域いきいき健康マップ 葛川地区』(大津市)
https://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/126/katuragawa.pdf
江若交通 停留所時刻表「堅田駅 標柱3(葛川・伊香立方面)」
https://www.kojak.co.jp/timetable/Zikoku/00075_03/
江若交通 停留所時刻表「坊村 標柱1(細川方面)」
https://www.kojak.co.jp/timetable/Zikoku/00442_01/
江若交通 停留所時刻表「坊村 標柱2(堅田駅方面)」
https://www.kojak.co.jp/timetable/Zikoku/00442_02/

最終更新日: 2026.10.15

基本情報

名称葛野常満家住宅
所在地滋賀県大津市葛川坊村町92
指定登録有形文化財 2件
座標35.24662, 135.86795