酒造場を示す煙突
下森酒造場の多くは地に低く構える。横道川沿いに続く瓦屋根の連なりである。その水平の線を、ひとつだけ断つものがある。店舗兼主屋の西、旧酒蔵の作業場の南に、鉄筋コンクリート造の煙突が高さ19メートルまで立ち上がる。昭和32年、1957年の建設で、群のなかで最も高く、遠くからまず目に入る。
煙突は簡素なコンクリートの筒身で、基礎部の直径は1.2メートル、上へ向かって細まる。周囲の明治・江戸の建物よりはるかに新しく、その材が違いを示す。蔵が土と木であるのに対し、これは近代の産業構造物であり、酒造場が設備を近代化した折に築かれた。機能が先に立つが、結果として空を背に一本の清い垂直の線を引いている。
造り酒屋に煙突が要る理由
その高さの理由は、煙突が仕える作業場の内にある。かつてそこには煉瓦造の竈が据えられ、酒米を蒸した。米を柔らかくし、発酵へ備える工程である。この規模の蒸しは多くの煙と熱を生み、高い煙突がそれを作業の床から引き上げ、外へ逃がした。コンクリートの筒身は、いわば米蒸しの工程の目に見える末端、屋根の上へ届かねばならなかった部分である。
下森酒造場の七棟が2008年に登録された際、煙突も「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として含められた。周囲の石州赤瓦の屋根の上に高く聳え、地域のなかで酒造場を見分けるランドマークとなっている。
見どころ
煙突は少し離れた場所から眺めるのがよい。屋根から抜け出た全高が見通せるからである。そう見れば、これは道しるべとして働く。高いコンクリートの筒身を探せば、酒造場を見つけたことになる。近づけば、その簡素さに目がとまる。古い建物の装飾を持たない機能の筒であり、その素っ気なさが足下の瓦屋根と漆喰壁を引き立てる。
酒造場は現役で営まれているため、煙突も群の他とともに通りから眺めたい。二十世紀のために築かれた唯一の部分であり、江戸期の土蔵や明治の店舗兼主屋との対比が、この一群を全体として読む面白さの多くを担っている。
Q&A
- 煙突の高さはどれくらいですか。
- 高さ19メートル、基礎部の直径は1.2メートルで、群のなかで最も高い構造物です。
- 何に使われたのですか。
- 作業場にあった煉瓦造の竈から出る煙と熱を逃がすためのものです。竈では酒米を蒸しました。発酵前の欠かせない工程です。
- なぜ他の建物よりずっと新しいのですか。
- 1957年に鉄筋コンクリートで築かれたためです。酒造場が設備を更新した折の建設で、蔵や主屋は江戸・明治期にさかのぼります。
- これを目印に酒造場を見つけられますか。
- はい。周囲の屋根の上に聳えるため、煙突は敷地全体の位置を示す地域のランドマークになっています。
基本情報
| 名称 | 下森酒造場煙突 |
|---|---|
| 所在地 | 島根県鹿足郡津和野町左鐙字立山ノ麓992 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 2008年7月8日(告示7月23日) |
| 登録番号 | 32-0078 |
| 時代 | 昭和32年(1957) |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造、高さ19m、基礎部直径1.2m |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 公開状況 | 現役の酒造場。外観は通りより見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 下森酒造場煙突
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007313
- 津和野文化ポータル — 津和野町の登録文化財
- https://tsuwano-bunka.net/cultural-property/
- Sakenomy — 合名会社下森酒造場
- https://www.sakenomy.jp/brewery/K01N032033/
最終更新日: 2026.07.06