群中で最も古い壁

下森酒造場の登録七棟のうち、店舗兼主屋の東北に建つ小さな土蔵が、最も古い。建築は江戸末期、およそ1830年から1867年の間に置かれ、群の大半を占める明治の建物より一世代あるいはそれ以上さかのぼる。桁行6.1メートル、梁間4.4メートル、建築面積は約27平方メートルと最も小さく、火から貴重品を守るために築かれた土蔵造の平屋建である。

建物は東西棟に建ち、切妻造の桟瓦葺。西面には桟瓦葺の庇を設け、戸口を開ける。石積の基礎に載り、壁は白漆喰で仕上げ、上部近くには鉢巻を一段まわす。すべてが意図され、簡素である。見せるための建物ではなく、よく造られた蔵の語彙で成り立っている。

赤瓦と白壁

この控えめな蔵を並のものから引き上げるのは、色である。屋根には石州赤瓦が葺かれる。石見地方の鉄釉瓦で、地元の釉薬を用い高温で焼くことからくる深い赤褐色を持つ。白漆喰の壁を背に、その赤は際立った強さで読める。この対比は酒造場全体を貫くものだが、これほど小さく端正な量塊の上では、最も鋭く現れる。

石州瓦は島根県西部を代表する材料のひとつで、厳しい冬と吹きつける雨に耐える点で重んじられてきた。江戸末期の蔵にこれが用いられていることは、この建物が地域に深く根ざしていることを示す。2008年の登録は、この歴史的景観への寄与を正面から評価したものである。

見どころ

晴れた日、赤瓦と白壁が最も清く分かれる時に、この蔵にひととき目をとめたい。壁の上部近くにまわる一段の鉢巻と、基部の石積に気づく。いずれも丁寧な蔵づくりの証である。店舗兼主屋の東北という位置も、あることを語る。貴重品は働く小屋の間ではなく、家族の居まいの近くに収められた。

酒造場は現役の私的な事業であり、この蔵は通りから眺めたい。小さく完結したこの江戸期の土蔵は、群の静かな長老であり、ほかのすべての年代を測る物差しとなる建物である。

Q&A

Qこれが本当に群中で最も古い建物ですか。
Aはい。建築は江戸末期、およそ1830年から1867年に置かれ、群の他を占める明治・昭和の建物より古いものです。
Q石州瓦とは何ですか。
A島根県西部・石見地方の赤い鉄釉瓦で、厳しい気候での耐久性を評価されてきました。その赤褐色は地域の特徴です。
Q土蔵には何を収めたのですか。
A火や湿気から守るべき貴重品や物品です。厚い土壁と石積基礎がその役を担い、居まいに近い位置も保管に適しました。
Qどれくらいの大きさですか。
A約27平方メートル、桁行6.1メートル・梁間4.4メートルで、登録七棟のなかで最も小さい建物です。

基本情報

名称下森酒造場土蔵
所在地島根県鹿足郡津和野町左鐙字立山ノ麓992
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2008年7月8日(告示7月23日)
登録番号32-0076
時代江戸末期(約1830-1867)
構造土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積27㎡、桁行6.1m・梁間4.4m
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
公開状況現役の酒造場。外観は通りより見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 下森酒造場土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007311
津和野文化ポータル — 津和野町の登録文化財
https://tsuwano-bunka.net/cultural-property/
Sakenomy — 合名会社下森酒造場
https://www.sakenomy.jp/brewery/K01N032033/

最終更新日: 2026.07.06