方丈前に構える門
箸蔵寺中門は、徳島県三好市池田町州津の箸蔵寺境内、方丈の前に東西棟で建つ明治前期(1868〜1882年)の一間薬医門で、平成23年(2011年)10月28日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は36-0103である。
箸蔵山ロープウェイの山上駅が方丈の脇に接しているため、索道で登った参拝者が境内で最初に対面する建造物はこの中門になる。本来の山門である仁王門は参道をはるか下った中腹にあり、索道の下を通過する形になる。門の性格を読むうえで、この位置関係は押さえておきたい。
箸蔵寺は真言宗御室派の別格本山で、本尊は金毘羅大権現。近世を通じて讃岐の金毘羅大権現の奥の院として信仰を集めた。明治初年の神仏分離により讃岐側は金刀比羅宮という神社となったが、当寺は寺院として存続し、神仏習合の作法を保っている。本殿では拍手による参拝と納経による参拝が併存する。
現在の伽藍は文政9年(1826年)の火災後の再建に始まる。方丈は安政3年(1856年)頃、護摩殿・薬師堂・鐘楼堂・天神社本殿は文久元年(1861年)頃、本殿はやや遅れて江戸最末期の造営とされ、これら6棟が平成16年(2004年)に重要文化財に指定された。中門はその後の明治期に加えられた門・工作物の一群に属し、仁王門・高灯籠・手水舎とともに登録されている。
一間薬医門の細部
形式は切妻造桟瓦葺の一間薬医門で、両脇に袖塀を付す。間口は3.6メートル。薬医門は本柱二本の背後に控柱を立て、棟を本柱筋より前方に寄せて架ける形式で、正面側に深い軒下空間が生じる。寺院の伽藍門というより邸宅や役所の表門に用いられてきた類型であり、寺院に現れる場合は本坊・庫裏など居住域への入口となることが多い。桁行41.9メートルの方丈を背にして立つ本門の位置は、この類型の用法に忠実である。
軸部は五平の本柱を用い、円柱としない。柱頭を冠木で固め、あわせて虹梁形に成形した楣を通して軸部を締める。男梁は四通りに架し、その上に大斗肘木を据えて梁・桁を受ける。軒は一軒疎垂木。仁王門の二軒繁垂木に対し、垂木の打ち方は抑制されている。
妻飾は虹梁に大瓶束を組み合わせた構成である。加えて、軒下全面に格天井を張る。門形式の建築で格天井を張る例は多くなく、堂内に用いられる格式の高い天井をそのまま門に持ち込んだ扱いといえる。文化庁の解説が「規模が大きく威厳ある構え」と要約するのは、間口の寸法だけでなく、こうした細部の格の取り方を含めた評価と読める。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、同時登録の他3棟と共通する。門と袖塀が方丈の長大な正面と一体の景を構成している点が、この基準に対応している。
門の先
中門をくぐると方丈が正面に構える。一重・入母屋造で四面に庇を回し、桟瓦葺。正面に唐破風の玄関を設け、そこだけ銅板で葺く。安政3年頃の建立で、内部には納経所と寺務所が置かれる。玄関奥には漆黒の大師像が座すが非公開である。
方丈の右手、石段を上がった先が護摩殿で、開創以来朝夕2回の護摩祈祷が絶えることなく続けられている。時刻は6時30分と18時と伝えられる。堂前には江戸時代末に七代目市川團十郎が寄進したとされる一対の石灯籠が立ち、七人の息子の名が刻まれている。
方丈から本殿までは278段。般若心経の文字数と一致することから、一段に一文字を配して「般若心経昇経段」と名付けられている。中門から本殿までは、途中で足を止めながらでおよそ30分を見ておけばよい。
ロープウェイは4月から11月が8時始発、12月から3月が9時始発で、下り最終は17時15分。15分間隔で運行し、所要は約4分である。運賃は往復で大人1,700円、中高生1,250円、小人850円。境内への入山は無料で、中門は屋外にあり時間の制限なく見学できる。撮影の制限もない。本殿内部への昇殿については信仰の篤い参拝者に限る旨を寺が案内している。春には参道一帯におよそ400本の桜が咲き、8月4日には箸供養が営まれる。
Q&A
- 箸蔵寺中門はどこにあり、どう行けばよいですか。
- 境内上部、方丈の正面に建っています。最も簡便なのは箸蔵山ロープウェイの利用で、JR土讃線箸蔵駅から山麓の登山口駅まで徒歩5分、山上駅は方丈の脇に接しています。車の場合、徳島自動車道の井川池田インターチェンジから登山口駅まで約7分です。
- 箸蔵寺中門はいつ建てられ、どの文化財区分にあたりますか。
- 文化庁は年代を明治前期とし、西暦では1868年から1882年の幅で記載しています。特定の一年には絞られていません。平成23年(2011年)10月28日に登録有形文化財(建造物)となり、登録番号は36-0103です。より保護の度合いが強い重要文化財には、本殿・護摩殿・方丈など6棟が平成16年(2004年)に指定されています。
- 箸蔵寺中門の薬医門という形式には、どんな意味がありますか。
- 薬医門は本柱の背後に控柱を立て、棟を本柱筋より前に寄せる門形式です。伽藍の正門よりも邸宅や役所の表門に用いられてきた類型で、寺院では本坊・庫裏など居住域の入口に置かれます。中門が方丈の前に立つのは、この用法どおりの配置です。
- 箸蔵寺中門と箸蔵寺仁王門はどう違いますか。
- 役割も形式も異なります。仁王門は明治13年(1880年)の三間一戸二重門で、出組詰組と二軒繁垂木による禅宗様の細部をもち、参道中腹に立って境内への入口を画します。中門は一間薬医門で、切妻造桟瓦葺に袖塀を付し、山上の方丈前に構えます。両者は平成23年に同日登録されました。
- 箸蔵寺中門は撮影できますか。拝観料はかかりますか。
- 撮影に制限はなく、境内への入山も無料です。費用がかかるのはロープウェイの運賃で、往復は大人1,700円です。なお本殿内部への昇殿は信仰の篤い参拝者に限る旨の案内があり、ろうそくの奉献は堂内の係員に依頼します。
基本情報
| 名称 | 箸蔵寺中門(はしくらじちゅうもん) |
|---|---|
| 所在地 | 徳島県三好市池田町州津蔵谷1006他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号36-0103 |
| 指定年 | 平成23年(2011年)10月28日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造、瓦葺、間口3.6メートル、左右袖塀付 |
| 所有者 | 宗教法人箸蔵寺 |
| 公開状況 | 屋外に建ち常時見学可・無料。登山にはロープウェイの運賃が必要 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 箸蔵寺中門(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009068
- 文化遺産オンライン 箸蔵寺中門
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/197208
- 国指定文化財等データベース 箸蔵寺 方丈(重要文化財)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003878
- 箸蔵山ロープウェイ 時刻表
- https://www.shikoku-cable.co.jp/hashikurasan/timetable/
- 箸蔵山ロープウェイ 料金案内
- https://www.shikoku-cable.co.jp/hashikurasan/price/
- 箸蔵山ロープウェイ アクセス
- https://www.shikoku-cable.co.jp/hashikurasan/access/
- 阿波ナビ(徳島県観光情報サイト) 箸蔵寺(四国別格15番)
- https://www.awanavi.jp/archives/spot/2781
- 大歩危祖谷ナビ(三好市公式観光サイト) 歴史文化
- https://miyoshi-tourism.jp/spot/classification/culture/
最終更新日: 2026.08.23