文久3年創業、福生市熊川の酒蔵に残る6件の建物

石川酒造は、東京都福生市熊川にある文久3年(1863年)創業の酒蔵で、敷地に建つ本蔵・新蔵・向蔵・雑蔵・長屋門・文庫蔵の6件が、平成16年(2004年)2月17日にそろって国の登録有形文化財に登録された。清酒「多満自慢」の醸造元で、読みは「いしかわしゅぞう」、英語の社名は Ishikawa Brewery である。

蔵元の公式サイトによると、酒造りは文久3年、13代当主の石川和吉が多摩川対岸の小川村(現在のあきる野市)にあった森田酒造の蔵を借りて始めた。熊川のこの場所に蔵を建てて移ったのは明治13年(1880年)で、そのとき建てられたのが本蔵である。銘柄ははじめ「八重桜」、大正8年(1919年)に「八重梅」と改め、昭和8年(1933年)から「多満自慢」を名乗っている。

石川家の当主は代々「石川彌八郎」の名を襲名しており、長屋門の表札にもこの名が掛かる。江戸時代から昭和までの行政文書・酒造関係文書・書簡など約6万5千点が石川家に伝わり、福生市教育委員会は平成22年(2010年)にその目録を刊行している。

石川酒造の6件と建てられた順

石川酒造の6件は、第40回の登録で登録番号13-0165から13-0170として登録された。年代順に並べると次のようになる。

  • 文庫蔵:文久3年(1863年)。内部の階段に残る墨書から年代がわかる、もとの宝蔵
  • 長屋門:江戸末期。門口の左右に部屋をもつ平屋の門
  • 本蔵:明治13年(1880年)。いまも酒を仕込む2階建の酒造蔵
  • 向蔵:明治29年(1896年)。もとは石炭小屋で、1階はビール工房になっている
  • 新蔵:明治31年(1898年)。街路沿いに建つ細長い土蔵
  • 雑蔵:明治31年(1898年)頃。もとは米蔵で、2階が史料館になっている

本蔵・新蔵・向蔵の3件は、いずれも棟札で建築年が確かめられている。登録基準は、文庫蔵だけが「造形の規範となっているもの」で、ほかの5件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

石川酒造は酒のほかにビールとも縁が深い。明治20年(1887年)にビール醸造に着手し、「日本麦酒」(英文ラベルは JAPAN BEER)の名で近在や東京・横浜へ売り出したが、瓶が破裂しやすいなどの理由で明治23年(1890年)に製造装置を売却した。平成10年(1998年)に「多摩の恵」でビール造りを再開し、いまは登録有形文化財の向蔵の1階で醸造している。

石川酒造の敷地の配置と歩く順

文化庁の解説文から位置を拾うと、石川酒造の6件は次のように並ぶ。雑蔵は屋敷の南辺のほぼ中央で街路に面し、その北、街路から奥まった位置に長屋門が南を向いて建つ。長屋門の東に小さな文庫蔵がある。本蔵の西側、街路沿いに新蔵が延び、敷地の西寄りに向蔵が建つ。

入口は「多満自慢」の看板の下にあり、見学の受付は直売店「酒世羅」で行う。敷地には、福生市が平成2年(1990年)に天然記念物に指定した「石川家のケヤキ」がそびえ、根元には大黒天と弁財天が祀られている。明治期のビール釜を納めた「麦酒釜の館」や、明治19年(1886年)から明治23年(1890年)にかけて玉川上水から引かれた分水も敷地のなかにある。

6件はどれも白い漆喰塗の外壁をもつが、屋根は一様ではない。本蔵と新蔵は片方の妻を切妻造、もう片方を入母屋造とする変わった形で、長屋門だけが銅板葺、新蔵は鋼板葺、残る4件が瓦葺である。いちばん大きいのは建築面積734平方メートルの本蔵、いちばん小さいのは58平方メートルの文庫蔵になる。

石川酒造の見学:散策、ガイド付き見学、史料館

石川酒造の敷地は、営業時間中なら予約なしで自由に歩ける。蔵元はこれを「お気軽散策コース」と呼び、料金はかからない。ガイドは付かないので、直売店「酒世羅」で配っているQRコード付きのパンフレットを手に回る。直売店の営業は午前10時から午後6時で、火曜日が定休(12月は営業)、見学も火曜日は休みになる。

ガイド付きの見学は予約制で、開始は午前11時・午後1時・午後3時の3回、所要45分ほど、料金は1人500円で試飲が付く。定員は5〜14名で、土日祝日は4名以下でも受け付ける。申し込みは直売店(電話042-530-5792)かメールフォームからで、その日のうちには決まらない。案内は日本語のみで、通訳を伴っての参加は断られる。実際の醸造工程は見られない。

雑蔵の2階にある史料館は入館無料で、蔵元の案内では開館は午前11時30分から午後8時、水曜日が休館である。建物ごとの公開範囲は棟によって違い、文庫蔵のように正面を一般公開していない蔵もある。

石川酒造への行き方

石川酒造の最寄りはJR青梅線・五日市線・八高線と西武拝島線の拝島駅で、蔵元の案内では拝島駅から徒歩約20分、タクシーなら約8分である。新宿からはJR中央線の中央特快で立川まで約27分、青梅線の快速に乗り換えて拝島まで約12分かかる。

車の場合は、中央自動車道の八王子インターチェンジから国道16号を川越方面へ約15分走り、武蔵野橋南交差点を左折して約2分で着く。蔵元の所在地表記は「福生市熊川1番地」、文化庁のデータベースでは「福生市大字熊川字南1-1」となっている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造本蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003846
国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造新蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003847
国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造向蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003848
国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造雑蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003849
国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造長屋門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003850
国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003851
福生市郷土資料室:福生の指定文化財
https://www.museum.fussa.tokyo.jp/fussa/cultural
福生市郷土資料室:第33集 石川彌八郎家(石川酒造)文書目録
https://www.museum.fussa.tokyo.jp/archives/fc_publish/258
石川酒造株式会社:石川酒造について
https://www.tamajiman.co.jp/about/
石川酒造株式会社:酒蔵散歩・見学
https://www.tamajiman.co.jp/tour/
石川酒造株式会社:アクセス
https://www.tamajiman.co.jp/access/

最終更新日: 2026.09.29

基本情報

名称石川酒造
所在地東京都福生市大字熊川字南1-1
所有者石川酒造株式会社
指定登録有形文化財 6件
座標35.71898, 139.33248