通りに向けられた面

金澤家住宅門及び塀は、東京都文京区西片二丁目にある昭和5年(1930年)建築の木造瓦葺門と延長10.7メートルの板塀で、平成10年(1998年)12月11日に国の登録有形文化財(建造物)となった。文化庁の分類では建築物ではなく「その他工作物」にあたり、登録番号は13-0047である。

門が論じられる機会は少ない。一瞬で読み取られて忘れられ、住宅の調査でも奥の座敷の付随物として扱われがちである。この門は、その扱いに見合わない密度をもつ。何であるかという点でも、どこに建つかという点でも。

文京区は登録制度の説明のなかで、この制度では道路から見える外観が登録の対象になると述べている。金澤家の場合、その説明はほとんど文字どおりに当てはまる。主屋も洋館も奥にあり、近隣が日々目にしているのは門と塀の面である。それが約1世紀続いてきた。

細部を読む

門は棟門である。2本の本柱が直接に棟をもつ屋根を受け、より重い形式が必要とする控柱を立てない。抑制のきいた選択といえる。同じ時期、医家や商家であれば薬医門や長屋門を構える例も多い。棟門は、家格を言い立てる必要のない者が選ぶ形である。

柱頭を貫いて横に渡るのが冠木。その上に組子を詰めた欄間が載る。組子は細い木を刻み込んで釘を使わずに組み上げる建具の技法で、文化庁の解説もこの部分の繊細さを取り上げている。この密度の組子は職人の手で数時間ではなく数日を要する仕事であり、それが訪れる者の視線が必ず通る一点に置かれている。

門扉の上部には菱組の格子が入る。欄間の細かな目に対して、一段粗いリズムがその下に重なる。二つの格子、二つの尺度が上下に並ぶ構成である。

塀も見ておきたい。左右とも土台建ちで、竪羽目の板を張り、上端に高欄を思わせる平桁と架木を通す。この頂部の処理が、通常の目隠し塀との差を生む。文化庁は門と塀の双方について確かなプロポーションと品格ある構えを認めており、塀に対する評価の言葉としては温度が高い。

門前に立つ

西片は、備後福山藩阿部家が江戸期の中屋敷跡地を自ら住宅地として開発した町である。帝国大学が近いことから学者や文人が移り住み、明治末期には学者町と呼ばれるようになった。関東大震災でも昭和20年の空襲でも大きな被害を免れたと伝わり、この年代の塀や門が路地に残る理由もそこにある。

ゆっくり歩くと、竪羽目の板が10.7メートル続いたところで門が列を断つ。塀のすぐ内側には、北西面をガラス張りとした昭和5年の平屋の洋館が沿って建つ。3件はひとつの構成として設計され、平成10年12月の同じ日に3件として登録された。

本件は個人の住宅である。拝観料も開館時間もなく、内部には入れない。門は今も住人が日々使っている。公道からの撮影は禁じられていないが、道路上にとどまり、敷地内へレンズを向けず、長居しないのが作法である。

東京メトロ南北線「東大前」駅から徒歩約7分、都営三田線「白山」駅から約12分。北西へ二区画進んだ西片2-9-12には、平成10年9月2日登録の平野家住宅がある。建築家保岡勝也による大正11年(1922年)頃の門が2棟含まれており、両家の入口を見比べる散歩は10分ほどで済む。戦間期の東京の住まいの趣味について、案内書の一章分より多くを教えてくれる。

Q&A

Q金澤家住宅門及び塀はどのような形式の門ですか?
A木造瓦葺の棟門です。2本の本柱が棟をもつ屋根を直接受ける形式で、冠木の上には組子による欄間、門扉の上部には菱組の格子が入ります。
Q金澤家住宅門及び塀の塀はどのくらいの長さですか?
A附属する板塀は延長10.7メートルです。左右とも土台建ちで竪羽目の板を張り、上端に高欄風の平桁と架木を載せています。
Q金澤家住宅門及び塀の門をくぐって見学できますか?
Aできません。個人所有の住宅で一般公開されておらず、拝観料も内部見学もありません。公道から門と塀の外観を見ることのみ可能で、登録の対象もその外観です。
Q金澤家住宅門及び塀はいつ登録されましたか?
A平成10年(1998年)12月11日登録、同年12月25日告示、登録番号13-0047です。同じ敷地の主屋と洋館も同日付で登録されています。
Q金澤家住宅門及び塀への行き方を教えてください。
A所在地は東京都文京区西片2-2-7です。東京メトロ南北線「東大前」駅から徒歩約7分、都営三田線「白山」駅から約12分の距離にあります。

基本情報

名称金澤家住宅門及び塀(かなざわけじゅうたくもんおよびへい)
所在地東京都文京区西片2-2-7
指定区分登録有形文化財(建造物・その他工作物) 登録番号13-0047
指定年平成10年(1998年)12月11日登録/同年12月25日告示
員数1棟
寸法木造瓦葺門、板塀延長10.7メートル附属
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開。道路から外観の見学のみ可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 金澤家住宅門及び塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000956
文化庁 国指定文化財等データベース 金澤家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000954
文京区 国登録文化財
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bunka/bunkazai/bunkazai/kunitoroku.html
文化遺産オンライン 金澤家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/113834

最終更新日: 2026.08.04