睦橋通りの角に構える旧家の屋敷

森田家住宅は、東京都あきる野市小川にある旧家の屋敷で、江戸時代末期(1830年〜1868年)から昭和初期にかけて建てられた主屋・見世蔵・門など9件が、平成25年(2013年)12月24日に国の登録有形文化財となった。

森田家の屋号は「久森(ひさもり)」という。所有者側の案内によれば、この一帯を代表する豪農で、かつては庄屋を務めた家であり、現在の当主で17代を数える。元禄期から幕末にかけては、土地の米と水を使って酒を造っていた。敷地には以前、酒蔵も建っていたという。

屋敷は睦橋通りの小川交差点の北西の一角を占め、東に熊野神社、北に林泉寺が接する。小川は多摩川と秋川が出合う地点に近く、水量にも水質にも恵まれ、多摩地区でも指折りの水郷とされてきた土地である。酒造りが成り立った理由は、この立地にある。

敷地はおよそ6,000平方メートル。あきる野市が公開している文化財の一覧を見ると、市内にある国の登録有形文化財は森田家住宅の9件だけである。

9件の登録と、その内訳

森田家住宅の9件は同じ日に登録され、登録番号は13-0313から13-0321まで続いている。いずれも登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に当たるとされた。建築物が7件、門と板塀の2件は工作物として扱われている。

  • 主屋(13-0313) 江戸末期、昭和48年(1973年)頃に改修。木造平屋建の大型民家
  • 見世蔵(13-0314) 嘉永5年(1852年)。道路側に店を開いた土蔵造2階建
  • 前の蔵(13-0315) 嘉永5年頃。昭和58年(1983年)に現在地へ移築
  • 味噌蔵(13-0316) 江戸末期。平屋の小さな土蔵で、いまも食料品の貯蔵に使われる
  • 西蔵(13-0317) 江戸末期。家財を納めた土蔵
  • 旧米蔵(13-0318) 江戸末期、平成8年(1996年)に改修。敷地でいちばん大きな土蔵
  • 御看経堂(13-0319) 江戸末期。家の持仏堂
  • 門(13-0320) 江戸末期。ケヤキ材を使った薬医門
  • 板塀(13-0321) 昭和初期(1926年〜1945年)。門から西へ延びる黒い塀

年代が特定できるのは見世蔵の嘉永5年だけで、主屋を含む他の建物は建築的な特徴から幕末と見られている。所有者側の解説は主屋を見世蔵とほぼ同時期の建築と見ており、そう考えれば、ペリー来航の前後に屋敷の骨格が整ったことになる。

9件をまとめて見ると、豪農の家が必要とした機能がほぼ揃っていることに気づく。住まいとしての主屋、客を迎える表門、道路に店を構える見世蔵、米・味噌・家財をそれぞれ納める蔵、そして家の仏事のための小堂。単体の名建築というより、屋敷一式が残っている点に森田家住宅の価値がある。

屋敷の配置と見て回る順序

森田家住宅の中心は、睦橋通りに面して敷地の中央に建つ主屋である。その正面に門が構え、門は東側で見世蔵の西の壁につながる。門の西端からは板塀が敷地の南辺に沿って折れ曲がりながら西へ延びる。敷地の南東の隅には前の蔵が建ち、その後ろに味噌蔵が控える。

主屋の西には西蔵があり、西蔵の後方に御看経堂がある。さらに西、敷地の西端近くに建つのが旧米蔵で、9件のうちこれだけが隣の地番(小川字小仲633-4)に登録されている。

通りから見て回るなら、交差点側の前の蔵から始め、見世蔵・門・板塀と南辺を西へたどるのが分かりやすい。表構えを形づくる4件は、道路からでも外観がよく見える。主屋・西蔵・御看経堂・味噌蔵は屋敷の内側にあり、住まいの一部として使われている。

見学とアクセス

森田家住宅は現在も森田家の住まいであり、敷地全体が常時公開されているわけではない。所有者側は登録の際、近くに来たら気軽に見学してほしいと案内している。一方、あきる野市の文化財一覧は、見学の際には所有者の許可を得るよう求めている。通りから外観を眺める以上のことをするなら、次に挙げる2つの店を利用するのがいちばん確実である。

見世蔵は「甘味茶房 見世蔵久森」として営業しており、営業時間は正午から午後5時まで、定休日は火曜日(祝日の場合は翌日)である。予約は受け付けておらず、混雑時は早めに受付を終えることがある。旧米蔵は懐石料理とギャラリーの「燈々庵」で、昼は午前11時から午後3時まで、夜は午後5時から午後7時までが受付、閉店は午後9時。夜の部は前営業日までの予約制で、休業日は店の営業カレンダーで確認できる。

最寄り駅はJR五日市線の東秋留駅で、森田家住宅までは徒歩約10分。車の場合は圏央道あきる野インターからおよそ10分、中央道八王子インターからおよそ15分である。駐車場は台数が少なく、見世蔵久森は公共交通の利用を勧めている。空き待ちのために路上で停車することも控えるよう求められている。

撮影についての決まった案内は見当たらない。通りからの外観は問題なく撮れるが、店の中や屋敷の内側で撮るときは、店の人に一声かけておきたい。主屋をはじめとする住まいの部分は、一般に内部を公開していない。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 森田家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009728
国指定文化財等データベース(文化庁)― 森田家住宅見世蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009729
国指定文化財等データベース(文化庁)― 森田家住宅旧米蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009733
文化遺産オンライン ― 森田家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/207647
あきる野市 ― あきる野市内の指定文化財・登録有形文化財一覧
https://www.city.akiruno.tokyo.jp/kanko/0000001910.html
甘味茶房 見世蔵久森 ― 文化財
https://www.hisamori.biz/pages/10/
甘味茶房 見世蔵久森 ― 店舗案内
https://www.hisamori.biz/pages/2/
甘味茶房 見世蔵久森 ― 交通アクセス
https://www.hisamori.biz/pages/7/
燈々庵 公式サイト
https://tou-touan.com/

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称森田家住宅
所在地東京都あきる野市小川字小仲633-1
所有者非公表(旧米蔵は有限会社久森)
指定登録有形文化財 9件
座標35.72108, 139.31628