梵鐘の再鋳を記念して建てられた鐘楼

大樹寺鐘楼は、鳥取県八頭郡八頭町福地にある曹洞宗寺院の鐘楼で、昭和29年(1954年)の建築、令和6年(2024年)8月15日に登録有形文化財(建造物)となった。本堂の南西、基壇上に東面して建つ。木造平屋建、銅板葺、建築面積9.9平方メートル。登録番号は31-0295、第107回登録である。

昭和29年という年代の理由は文化庁の解説文に記されており、この建物で最も注目すべき点でもある。大樹寺の梵鐘は戦時中の金属供出で失われた。現在この鐘楼に架かるのは再鋳された鐘であり、建物そのものがその再鋳を記念して建てられている。

戦時中、全国の寺院から膨大な数の梵鐘が炉に送られた。戦後、多くの寺は特段の行事を伴わずに鐘を鋳直している。大樹寺はそのために建物を一棟起こした。終戦から十年に満たない時期、鳥取の山あいの檀家がその選択をしたという事実が、失われたものの重さを示している。

九・九平方メートルに詰め込まれた語彙

建築面積9.9平方メートルは、一辺およそ三メートルの正方形にあたる。その範囲に、禅宗様の細部がほぼ一通り収められている。登録が評価しているのは、この密度である。なお文化庁の台帳では種別を「建築物」ではなく「その他工作物」としており、規模の扱いとしてはそうなるが、工作の質とは別の話になる。

足元から見ていきたい。円柱は礎盤の上に立つ。礎石の上に置かれた円盤状の部材で、宋から伝わった禅宗様の建築に特徴的な要素である。柱そのものは内転びに立てられている。わずかに内側へ傾ける手法で、意識して見なければ気づかないが、軸部全体を安定して見せる効果を持つ。

正面の腰の高さには腰貫が渡る。上端の中央付近が上方に湾曲する形につくられており、直材ではない。この一手が、鐘楼を平凡な小屋から引き離している。柱上には三斗を組み、その間の中備に蟇股を置く。軒は二軒繁垂木。垂木を二段に、しかも密に並べる、費用のかかる納め方である。

下に立って見上げると、内部は格天井が張られている。この規模の工作物、しかも農村の寺で、これはかなりの仕上げにあたる。

銅板葺という点も、周囲から鐘楼を際立たせている。大正9年の本堂、昭和26年の開山堂、昭和30年の僧堂はいずれも桟瓦葺で、銅板を用いるのは鐘楼だけ。緑青を帯びた屋根が、背後の瓦の灰色に対して沈んだ緑を置く。四棟は令和6年8月15日に一括して登録された。

見るために

四棟のうち、鐘楼が最も見やすい。扉の内側に隠れているものが何もないからである。本堂南西の基壇の上に開かれた状態で建ち、境内は自由に歩ける。大寺院の山門であれば手の届かない高さにある組物が、ここでは目の高さの延長で観察できる。

撞いてよいかどうかは寺の判断による。決めつけずに尋ねてほしい。堂宇周辺での撮影も同様である。連絡先は0858-74-0854。

所在地は鳥取県八頭郡八頭町福地408(〒680-0307)、駐車場は無料。JR東郡家駅から車で約20分、鳥取自動車道の河原ICから約30分ほど。東郡家駅からは八頭バスの落岩行きも利用できる。石段を上がる途中には有楽椿が立つ。樹高8.7メートル、枝張り10.5メートルの八頭町指定文化財で、11月下旬から4月上旬まで花をつける。この谷筋は冬に雪が積もる。緑青の屋根、白い地面、淡紅色の花という取り合わせを見るなら、10月ではなく2月に足を運びたい。

Q&A

Q大樹寺鐘楼はなぜ昭和29年に建てられたのですか?
A梵鐘の再鋳を記念するためです。もとの鐘は戦時中の金属供出で失われ、その代わりの鐘が鋳造されたのに合わせて鐘楼が建てられました。
Q大樹寺鐘楼は間近で見学できますか?
Aできます。本堂南西の基壇上に建ち、境内は自由に歩けます。駐車場も無料です。組物が低い位置にあるため細部まで観察できます。撞鐘の可否は0858-74-0854へお尋ねください。
Q大樹寺鐘楼の規模はどのくらいですか?
A建築面積は9.9平方メートル、一辺およそ三メートルです。木造平屋建、入母屋造銅板葺で、文化庁の台帳では種別を「その他工作物」としています。
Q大樹寺鐘楼で注目すべき細部はどこですか?
A円柱を受ける礎盤、柱をわずかに内側へ傾ける内転び、上端中央が湾曲する正面の腰貫、柱上の三斗と中備の蟇股、二軒繁垂木の軒、そして内部の格天井です。
Q大樹寺鐘楼はどの区分の文化財ですか?
A登録有形文化財(建造物)で、登録番号は31-0295です。令和6年(2024年)8月15日、第107回の登録にあたり、基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
Q大樹寺の他の建物も登録されていますか?
A同じ日に本堂(大正9年)、開山堂(昭和26年)、僧堂(昭和30年)が登録されています。四棟のうち銅板葺は鐘楼だけです。

基本情報

名称大樹寺鐘楼(だいじゅじしょうろう)
所在地鳥取県八頭郡八頭町福地408(〒680-0307)
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 31-0295
指定年令和6年(2024年)8月15日登録 第107回
員数1棟
寸法木造平屋建、銅板葺、建築面積9.9平方メートル/昭和29年(1954年)建築
所有者宗教法人大樹寺
公開状況境内から自由に見学可(駐車場無料)。撞鐘・撮影は事前に確認(0858-74-0854)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 大樹寺鐘楼
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015086
文化遺産オンライン 大樹寺鐘楼
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/541254
曹洞禅ナビ(曹洞宗公式寺院ポータル) 普門山 大樹寺
https://sotozen-navi.com/detail/index_310008.html
やずナビ(八頭町観光協会) 大樹寺の有楽椿
https://yazukanko.jp/info/2022/02/21/
とっとり旅【公式】 大樹寺のウラクツバキ(有楽椿)
https://www.tottori-guide.jp/tourism/tour/view/986

最終更新日: 2026.08.03