境内の最奥に西面する江戸後期の社殿

長田神社本殿は、鳥取県鳥取市東町一丁目の長田神社の境内奥に建つ江戸時代後期の社殿で、大正13年(1924年)に上町の旧社地から現在地へ移築され、平成30年(2018年)11月2日に国の登録有形文化財に登録された。木造平屋建て、銅板葺きで、建築面積は17平方メートルにとどまる小さな本殿である。

本殿は西を正面にし、前に建つ幣拝殿と、透塀の中央に開く中門を介してつながる。周りは延長41メートルの透塀がめぐり、参拝者は塀の外から社殿を仰ぐことになる。

建てられた時期については説が分かれる。文化庁のデータベースは「江戸後期」とし、西暦では1751年から1830年の幅で示す。神社は棟札に拠って元文6年(1741年)に藩主池田宗泰が再建したものと説明し、鳥取縣神社廳の由緒は天明8年(1788年)に現在の本殿を建てたと記している。どの年を採っても、鳥取藩政期の社殿が大正の移転で運ばれてきたことに変わりはない。

8件のなかで本殿だけが「造形の規範」

長田神社で登録された8件のうち、「造形の規範となっているもの」の基準で登録されたのは長田神社本殿だけである。残る7件はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されており、本殿は意匠そのものを評価された唯一の棟ということになる。登録番号は31-0246で、8件の連番の先頭にあたる。

形式は入母屋造で、正面の屋根に千鳥破風を据え、その下に軒唐破風付きの向拝を張り出す。平面は正面一間、側面二間、背面二間。四方に高欄付きの縁を廻す。

文化庁の解説が細かく挙げるのは軒まわりである。軒は二軒の繁垂木で、組物は隅の部分だけを出組とする。向拝では打越垂木にゆるい起りをつけ、線に柔らかさを与えている。鳥取県も、正面の軒まわりの造形を優美に仕上げた点を長田神社本殿の特色に挙げている。

神社によれば、社殿の随所に藩主池田家の家紋「揚羽蝶」があしらわれている。藩主の造営であることを示す印であり、城の産土神として歴代城主に崇敬された社の来歴とも符合する。

長田神社本殿の見どころ

長田神社本殿を見るなら、まず屋根の重なりを追いたい。千鳥破風の三角と、その下で弓なりに反る軒唐破風が上下に重なり、小さな本殿の正面に厚みを与えている。透塀の菱形の連子越しに眺めると、破風の輪郭が格子に切り取られて見える。

次に向拝の軒先に目を移す。打越垂木のゆるやかな起りは、真正面より斜めから見たほうが分かりやすい。透塀の外を回り込み、北西か南西の角から軒の線を追うとよい。

隅だけを出組にした組物も、角に立つと確かめやすい。平の部分と隅の部分で組物の張り出しが変わるので、軒の出の差を見比べてほしい。

幣拝殿と比べてみるのも一案である。幣拝殿は角柱を用い、装飾を抑えた簡明なつくりで、背後の長田神社本殿の華やかさがかえって際立つ。

長田神社本殿の見学方法

長田神社本殿は透塀に囲まれ、塀の中へ入ることはできない。鳥取県の案内でも内部は非公開である。外観は透塀の外から見る形になる。正面には幣拝殿と中門が連なっているため真正面からは見通せず、塀沿いに回り込んで側面や斜めから眺めることになる。

神社は一般的な参拝の記念撮影を認めているが、祈祷や挙式の最中は神職の指示に従う必要がある。移転遷座100年の奉祝事業として、神社は本殿などの改修工事を進めていると案内しており、時期によっては足場や養生で外観が見えにくいこともありうる。境内への行き方と参拝の条件は長田神社のページにまとめてある。

Q&A

Q長田神社本殿はいつ建てられたものですか?
A文化庁のデータベースでは江戸後期(1751年から1830年の幅)とされています。神社は元文6年(1741年)、鳥取縣神社廳の由緒は天明8年(1788年)を挙げており、資料によって年が異なります。大正13年(1924年)に現在地へ移築されました。
Q長田神社本殿はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A「造形の規範となっているもの」として登録されました。千鳥破風付きの入母屋造に軒唐破風の向拝を設け、向拝の垂木にゆるい起りをつけるなど、正面の軒まわりの優美な造形が評価されています。
Q長田神社本殿の中に入ることはできますか?
Aできません。本殿は透塀に囲まれ、内部は非公開です。外観は透塀の外から見学できます。
Q長田神社本殿はどこから見るとよいですか?
A正面には幣拝殿と中門が連なっているため、透塀の外を回り込んで側面や斜めから見ることになります。向拝の軒の起りや隅の組物は、北西か南西の角から眺めると分かりやすくなります。
Q長田神社本殿の写真を撮ってもよいですか?
A神社は一般的な参拝の記念撮影を認めています。祈祷や挙式が行われているときは神職の指示に従ってください。

基本情報

名称長田神社本殿(ながたじんじゃほんでん)
所在地鳥取県鳥取市東町1丁目101
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号31-0246
指定年平成30年(2018年)11月2日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、銅板葺、建築面積17平方メートル
所有者宗教法人長田神社
公開状況透塀の外から外観のみ見学可(内部非公開)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):長田神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012612
とっとり文化財ナビ(鳥取県):長田神社 本殿、幣拝殿、中門、透塀、神饌所(仮殿)、神門、祈祷殿、手水舎
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/F53F5C5816EFF4684925837F00276C48?OpenDocument
鳥取縣神社廳:長田神社
https://tottori-jinjacho.jp/pages/105/
長田神社:由緒書き
https://nagatajinja.com/history
長田神社:よくある質問
https://nagatajinja.com/faq

最終更新日: 2026.09.29