田島漆店旧工場新蔵とは
田島漆店旧工場新蔵は、和歌山県海南市船尾にある昭和9年(1934年)建築の土蔵造2階建の蔵で、令和元年(2019年)12月5日に登録有形文化財となった。敷地の北西隅に西を向いて建ち、1階は仕入れた生漆(きうるし)を保管する倉庫として使われていた。読みは「しんぐら」。
建築面積は101平方メートル。土蔵造の2階建で、切妻造桟瓦葺の屋根を載せ、西面に下屋を付けている。内部は1階・2階ともそれぞれ1室の広間である。
登録の理由と価値
田島漆店旧工場新蔵の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、1階がかつて生漆の保管庫だった点を挙げ、旧漆工場の構成を伝える棟として位置づけている。
なぜ原料をわざわざ土蔵に納めたのか。和歌山県の解説によると、生漆は仕入れ値が高く、しかも夏場に腐敗しやすかったため、この土蔵で保管していたという。厚い土壁で外気を遮る土蔵は、高価で傷みやすい原料を預ける場所として選ばれたことになる。
造りの質も高い。県の解説は、柱にヒノキの良材を用い、堅牢に建てられた質の高い土蔵と評価している。在来の土蔵の構えを取りながら、小屋組にはキングポストトラスを用いているのも見逃せない。三角形に組んだ洋式の小屋組で、2階を柱の少ない1室にまとめられる。外は在来の土蔵、屋根裏は洋式の骨組みという組み合わせである。
見どころ
外壁は上下で仕上げが分かれる。上部は白い漆喰塗、腰は黒く塗った竪板張で、いかにも土蔵らしい白と黒の構成になっている。
窓の付け方に目を留めたい。窓は妻面と平面の高い位置に開けられ、鉄の扉と鉄格子が入っている。原料を守る蔵らしく、開口は高く、守りは固い。その一方で西の妻には、飾りの格子(グリル)をはめた丸窓がひとつあり、硬い外観の中で目を引くアクセントになっている。
田島漆店旧工場新蔵の12年前に建った商品蔵は、煉瓦をモルタルで仕上げた洋風の外観である。製品を納めた蔵と原料を納めた蔵で姿がまったく違う点は、敷地を歩くときに比べて見るとよい。
見学方法
県の解説によれば、田島漆店旧工場新蔵は現在、地元の有志が陶芸工房として使っている。個人の敷地内にあり、蔵の内部を見学として公開する案内は見当たらない(2026年9月16日確認)。工房として使われている以上、作業中に立ち入ることは控えたい。
外観は、敷地内のカフェの営業時間やイベントの開催中に敷地へ入れば、北西の隅に確かめることができる。工房の様子や作品を撮影したいときは、その場の人に必ず許可を取りたい。交通手段や敷地が開く時間は、施設全体を扱う田島漆店旧工場のページに載せてある。
Q&A
- 田島漆店旧工場新蔵には何が保管されていましたか。
- 1階に、仕入れた生漆(きうるし)が保管されていました。生漆は高価で夏場に傷みやすかったため、土蔵に納めていたと伝えられています。
- 田島漆店旧工場新蔵はいつ建てられましたか。
- 昭和9年(1934年)です。登録は令和元年(2019年)12月5日です。
- 田島漆店旧工場新蔵の構造の特徴は何ですか。
- 土蔵造2階建で、内部は上下とも1室、小屋組はキングポストトラスです。柱にはヒノキの良材が使われています。
- 田島漆店旧工場新蔵の外観で注目する点はどこですか。
- 上部が漆喰塗、腰が黒い竪板張の外壁と、高い位置の鉄扉付きの窓、西妻のグリル入りの丸窓です。
- 田島漆店旧工場新蔵の内部は見学できますか。
- 現在は地元有志の陶芸工房として使われており、見学公開の案内はありません。外観は敷地内カフェの営業時間やイベントの開催中に敷地内から見られます。
基本データ
| 名称 | 田島漆店旧工場新蔵(たじまうるしてんきゅうこうじょうしんぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県海南市船尾166 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 30-0270 |
| 指定年 | 令和元年(2019年)12月5日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積101平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 内部は非公開(陶芸工房として使用)。敷地内カフェの営業時間とイベント開催中は敷地に入れる |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 田島漆店旧工場新蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013167
- わかやまの文化財(和歌山県教育庁文化遺産課) 田島漆店旧工場
- https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai-spot-1006/
最終更新日: 2026.09.16