櫻林家住宅奥座敷とはどんな建物か
櫻林家住宅奥座敷は、山梨県甲府市宮原町にある明治45年(1912年)建築の木造二階建ての座敷棟で、令和5年(2023年)8月7日に国の登録有形文化財となった(登録番号19-0167)。読みは「さくらばやしけじゅうたくおくざしき」。江戸時代から医家を務めた櫻林家の屋敷の中ほどに建つ。
奥座敷とは、家族が日常を過ごす部屋とは別に、客を迎え、冠婚葬祭などの改まった場面に使う座敷を、家の奥まった位置にまとめた棟を指す。表から見えにくい場所に、その家でもっとも手をかけた部屋を置くのが通例である。
櫻林家住宅奥座敷の屋根は入母屋造の桟瓦葺で、棟を東西に通す。建築面積は130平方メートル。昭和42年(1967年)に東側へ玄関と台所が増築され、北側には便所棟が附属している。西側には西文庫蔵が、北側には東文庫蔵が接続しており、座敷と蔵がひと続きになった構成をとる。
登録の理由:上質な近代和風の座敷
櫻林家住宅で登録された5棟のうち、「造形の規範となっているもの」という基準で登録されたのは櫻林家住宅奥座敷だけである。ほかの4棟はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。文化庁のデータベースは、この座敷棟を医家の屋敷における上質な近代和風の座敷と評価している。
近代和風とは、明治以降、伝統的な木造の技法を土台にしながら、良質な材を選び抜き、細部の意匠を洗練させた和風建築を指す言葉である。洋風建築が広まる時代に、あえて和の座敷を丁寧に仕上げた建物が各地の旧家に残っている。
答申資料は櫻林家住宅奥座敷を、各階が三間続きの座敷になった広壮な近代和風建築と紹介している。明治末年、甲府城下の外側の村で医業を営んだ家が、客を通す座敷にどれだけの手間をかけたかを示す実例である。
櫻林家住宅奥座敷の見どころ
内部は、1階・2階とも3室を一列に並べた三間続きの座敷である。襖を外せば3室が一つの広間になる。上下の両方をこの形にそろえた構成が、答申資料のいう広壮さを生んでいる。
各階とも西の端を床構えとしている。文化庁のデータベースに掲載された写真の一枚は、1階の奥の間に設けられた床の間と床脇を写している。東から入って西へ進むほど格の高い部屋になり、最奥の部屋で床の間に向かう、という座敷の序列がはっきり読み取れる配置である。
細部で注目したいのは欄間である。細い木片を釘を使わずに組み合わせて幾何学的な文様をつくる組子の欄間が入り、部屋と部屋の境に透かしの模様が浮かぶ。柱や床まわりには銘木が用いられ、全体として線の細い繊細な造りにまとめられている。
外観では、入母屋の屋根が二層に重なる姿が特徴になる。東側の玄関と台所は昭和42年(1967年)の増築であり、明治45年(1912年)の当初部分とは時期が異なる。櫻林家住宅奥座敷を見るときは、どこまでが当初でどこからが後補かを意識すると、座敷棟としての本来の輪郭がつかみやすい。
櫻林家住宅奥座敷の見学について
櫻林家住宅奥座敷は個人の住まいの一部で、内部は公開されていない。屋敷の中ほど、長屋門の内側に建つため、敷地の外からこの座敷棟の全体を見ることは難しい。敷地への立ち入りもできない。
撮影の可否について公式の案内は無い。屋敷全体の位置と訪ね方、外から見える範囲については、櫻林家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 櫻林家住宅奥座敷は見学できますか?
- 櫻林家住宅奥座敷は個人の住宅の一部で、内部は非公開です。屋敷の中ほどに建つため、敷地の外から全体を見ることも難しく、敷地内への立ち入りもできません。
- 櫻林家住宅奥座敷はいつ建てられましたか?
- 明治45年(1912年)の建築です。昭和42年(1967年)に東側へ玄関と台所が増築されました。令和5年(2023年)8月7日に国の登録有形文化財となっています。
- 櫻林家住宅奥座敷はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 医家の屋敷における上質な近代和風の座敷として、「造形の規範となっているもの」という基準で登録されました。櫻林家住宅の5棟のうち、この基準が適用されたのは奥座敷だけです。
- 櫻林家住宅奥座敷の内部はどのような造りですか?
- 1階・2階とも3室を一列に並べた三間続きの座敷で、各階の西端を床構えとしています。組子の欄間や銘木を用いた繊細な造りが特徴です。
- 櫻林家住宅奥座敷の建物の大きさや構造は?
- 木造二階建て、入母屋造の桟瓦葺で、建築面積は130平方メートルです。西に西文庫蔵、北に東文庫蔵が接続しています。
基本情報
| 名称 | 櫻林家住宅奥座敷 |
|---|---|
| 所在地 | 山梨県甲府市宮原町1299 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和5年(2023年)8月7日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積130平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(個人の住宅) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁): 櫻林家住宅奥座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014598
- 文化遺産オンライン: 櫻林家住宅奥座敷
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/598880
- 文化庁 報道発表: 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和5年3月17日
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93849401.html
- 文化庁 報道発表 別紙: 登録有形文化財(建造物)一覧表(令和5年3月17日答申)
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/93849401_03.pdf
- 山梨県: 市町村別 国・県指定文化財一覧
- https://www.pref.yamanashi.jp/bunka/bunkazaihogo/bunkazaiguide_shichosonbetsu_bunkazailist.html
最終更新日: 2026.09.26