陶芸のためにつくられた鉄筋コンクリートの建物

旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館は、愛知県常滑市奥条にある鉄筋コンクリート造の建物で、昭和36年(1961年)に竣工し、2023年(令和5年)8月7日に国の登録有形文化財に登録された。

この建物は寄附から始まっている。伊奈製陶(現在のLIXIL)を興し、初代常滑市長も務めた伊奈長三郎(1890年から1980年)が、常滑の陶業と陶芸を伸ばす拠点をつくろうと自社株式15万株を市に寄附した。その資金で本館とアトリエが建てられ、昭和36年10月に開所している。

設計は堀口捨己(1895年から1984年)。1920年に分離派建築会の一員として活動を始め、オランダ建築を日本に紹介した人物として知られる。その後は日本建築と茶室の研究に深く分け入り、そこで得たものを自分の設計へ戻していった。常滑のこの建物は、その往復のさなかに立っている。

規模は2階地下1階建、建築面積は203平方メートル、員数は1棟。開設当初は常滑焼の研究が中心だったが、現在は研修施設としてつくり手を送り出す役割が大きい。展示室には平安時代末期から鎌倉時代の古常滑の大甕と、江戸時代以降の名工の作品が並ぶ。

登録有形文化財としての価値

登録番号は23-0587、105回目の登録にあたる。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」で、文化庁の国指定文化財等データベースにそのように記録されている。同じ日に敷地入口の正門も登録番号23-0588で登録され、常滑市は本館と正門をまとめて公表した。

登録が認めているのは、旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館の造形そのものである。外壁は紫のタイル貼り。そこからバルコニーと庇が大きく張り出し、水平の線が全体をまとめている。正面の左右は相称ではない。使われている語彙は戦後の近代建築のそれだが、上から光を落とす扱いや色の選び方には、古い日本建築を長く読み込んできた設計者の判断が入っている。

用途と造形が離れていない点も見ておきたい。展示のための建物であると同時に、つくり手を育てる場として計画されている。開設から現在までに多くの研修生がここを出て、なかには海外で仕事をしている作家もいる。

見どころ

屋上から降りてくる光

旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館の展示室に入ると、光がどこから来ているのか一度分からなくなる。窓ではなく屋根が明かり取りになっているためである。堀口は展示室に自然光が一日中平均して入るようにと考え、屋上の四方に突き出した屋根を三角形にした。モールガラスを通った光が屋根裏に当たって散り、室内へ回り込む。ガラスの部分だけでなく、屋根全体が光を配る仕掛けになっている。

色が決める部屋の性格

階段ホールを境に、西側がトップライト付きの展示室、東側が事務室や会議室にあてられている。応接室には赤と金が使われ、展示室のひとつは銀でまとめられている。外壁の紫と合わせると、この建物では色が部屋の役割を分けていることが見えてくる。設計者の手つきがいちばん直接に出ている部分と言ってよい。

茶室

建物には茶室が設けられている。堀口は茶室の研究者として多くの論文を残した人であり、その関心が同じ屋根の下に置かれていることになる。屋上の三角屋根、金銀紫の色使いとあわせて、施設側も見どころとして案内している。

階段ホールに立つ

展示室と事務部門を分ける階段ホールは、この建物の背骨にあたる。上下の移動と左右の振り分けがここで一度に処理される。腰を据えて見るなら、階段の踊り場から上を見上げるとよい。トップライトからの光が落ちてくる位置が分かる。

見学方法とアクセス

とこなめ陶の森陶芸研究所は一般に公開されており、入館料は無料である。開館時間は9:00から17:00まで。休館日は月曜日で、月曜が祝日にあたる場合は翌日が休みになる。年末年始も閉まる。

団体で訪れる場合や職員の説明を希望する場合は、公式サイトにある見学依頼書で事前に予約する。研修の受講を検討している人であれば、同じ敷地の研修工房の見学はいつでも受け付けている。

撮影の可否について、公式サイトに一般来館者向けの明記はない。展示室で撮る場合は受付で確認するのが確実である。外観と正門は敷地の外からも見えるため、外から眺めるだけなら開館日には縛られない。

名鉄常滑駅からはタクシーで約5分、歩けば約30分ほどかかる。バスを使う場合は知多半田駅行きに乗り、「INAXライブミュージアム前」で降りて徒歩約7分。車では国道247号の新瀬木橋東交差点から3分ほどで、駐車場がある。問い合わせは0569-35-3970。

同じ敷地に建つのが研修工房で、資料館だけは瀬木町にあり少し離れている。旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館を目当てに来るなら、奥条7丁目の側を目指すことになる。

Q&A

Q旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館は見学できますか。開館時間と入館料は?
A見学できます。開館時間は9:00から17:00まで、入館料は無料です。休館日は月曜日で、月曜が祝日の場合は翌日が休みになります。年末年始も休館します。団体での見学や職員の説明を希望する場合は、公式サイトの見学依頼書で事前に予約してください。
Q旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館を設計したのは誰ですか?
A堀口捨己(1895年から1984年)です。1920年に分離派建築会の一員として出発し、オランダ建築の紹介者として知られました。日本建築と茶室の研究者でもあり、その両方の関心がこの建物に出ています。
Q旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館はいつ登録有形文化財になりましたか?
A2023年(令和5年)8月7日に登録されました。登録番号は23-0587で、105回目の登録にあたります。同じ日に正門も登録番号23-0588で登録されています。指定ではなく登録である点にご注意ください。
Q名鉄常滑駅からとこなめ陶の森陶芸研究所へはどう行きますか?
Aタクシーなら約5分、徒歩なら約30分です。バスの場合は知多半田駅行きに乗り、「INAXライブミュージアム前」で下車して徒歩約7分。車では国道247号の新瀬木橋東交差点から3分ほどで、駐車場があります。
Q旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館の見どころはどこですか?
A屋上の四方に突き出した三角形の屋根から入る光、赤と金の応接室や銀の展示室といった色の扱い、紫タイルの外壁と張り出した庇がつくる水平線、そして茶室です。展示室では平安時代末期から鎌倉時代の古常滑の大甕も見られます。

基本情報

名称旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館
所在地愛知県常滑市奥条7丁目22
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2023年(令和5年)登録
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造2階地下1階建、建築面積203平方メートル
所有者常滑市
公開状況一般公開、無料。9:00から17:00、月曜休館

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014614
文化遺産オンライン 旧常滑市立陶芸研究所(とこなめ陶の森陶芸研究所)本館
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/590386
常滑市 施設案内 とこなめ陶の森陶芸研究所
https://www.city.tokoname.aichi.jp/shisetsu/tounomori/1001160.html
とこなめ陶の森 陶芸研究所
https://www.tokoname-tounomori.jp/togeikenkyujo/
とこなめ陶の森 建物について
https://www.tokoname-tounomori.jp/togeikenkyujo/tatemononitsuite/
とこなめ陶の森 ご利用案内
https://www.tokoname-tounomori.jp/%E3%81%94%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%A1%88%E5%86%85/

最終更新日: 2026.08.31