窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)とは
窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)は、愛知県常滑市奥栄町にある大正10年(1921年)建造の角窯と上屋で、平成9年(1997年)6月12日に登録有形文化財として登録された。木造2階建、瓦葺、建築面積373平方メートルの上屋が、煉瓦造の角窯をまるごと包み込んでいる。
倒焔式とは、焚口から立ち上がった炎をいったん天井まで昇らせ、そこで下向きに反転させて床下の煙道へ抜く焼成方式をいう。熱が窯内を回り込むため温度が行き渡りやすく、肉厚で大きな製品を焼くのに向いていた。この角窯は左右の両側に焚口を備える両面焚きで、正面に立つと煉瓦の壁面に焚口が並ぶ様子がまず目に入る。
焼いていたのは、上下水道の敷設に使う土管である。常滑でも最大級とされる3尺(内径約90センチ)の大型土管を主に生産していたとみられ、ほかに焼酎瓶やクリンカタイルも手がけた。操業が止まったのは昭和46年(1971年)だった。
窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)が資料館として公開されたのは昭和61年(1986年)で、伊奈製陶がINAXへ社名を変更した記念事業として窯と上屋、煙突を整備したことによる。現在のINAXライブミュージアムは、この一棟から始まっている。
登録有形文化財としての価値
窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)が満たしている登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録番号は23-0006、第3回の登録に含まれ、告示は平成9年(1997年)6月24日に出された。文化庁の解説は、独特の質感をもつ角窯と黒い外壁の上屋が、やきものの町常滑の象徴として親しまれてきたことを指摘している。
常滑は中世からの窯場だが、近代の窯業を支えたのは茶器ではなく土管だった。上下水道や電線管の需要が伸びるにつれて角窯と煉瓦煙突が町中に増え、その多くは高度経済成長期以降に姿を消していった。窯だけを露天で保存した例は各地にあるものの、焼成の場が屋根の下に収まったまま残っている例は少ない。
同じ敷地に立つ煉瓦造の煙突は、窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)とは別に登録番号23-0007で登録されている。煙道でつながる一組の設備でありながら、種別が建築物とその他工作物に分かれるため、台帳の上では2件として扱われる。
平成19年(2007年)11月には、この角窯と煉瓦煙突が経済産業省の近代化産業遺産にも認定された。
見どころ―窯の内側と小屋組
窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)の見学は、窯の中へ入るところから始まる。焼成室の壁は、繰り返された窯焚きが煉瓦に焼き付いてできた質感を見せ、外から眺めるのと内側に立つのとでは印象がまるで違う。
内部では窯焚きの作業がプロジェクションマッピングで再現される。炎の色と職人の動きが壁面に映り、静まりかえった煉瓦の箱が焼成中の姿に戻る。
見上げてほしいのは上屋の小屋組である。太い梁と柱が漆喰の壁のあいだに露出し、木部と白壁と煉瓦という三つの素材が同じ視界に入る。黒く塗られた外壁は常滑の工場建築に広く見られたもので、この上屋も黒を保っている。
平成28年(2016年)から3年をかけた保全工事を経て、窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)は令和元年(2019年)10月に再公開された。外壁の仕上げや瓦の風合いまで検討したうえで、およそ100年前の姿をさらに50年、100年先へ引き渡すことを目標に据えた工事だったと所有者は説明している。
館内には土管づくりに使われた道具や機械、最盛期の町を写した写真も並ぶ。平成17年(2005年)まで工場で稼働していた全長80メートルのトンネル窯も、その一部が同じ資料館の一角に移築されている。角窯とトンネル窯を並べて見ると、一窯ずつ焚く方式から連続焼成へ移った窯業の変化がそのまま形になっている。
見学方法(入館料・撮影・アクセス)
窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)はINAXライブミュージアムの展示館の一つとして公開されており、内部を自由に見学できる。開館時間は10時から17時まで、入館の受付は16時30分までである。休館日は水曜日(祝日の場合は開館)と年末年始。この建物には総合受付が置かれているため、来館者はまずここで入館券を求めることになる。
入館料は全館共通で、大人1,000円、学生800円、中高生500円、小学生250円、70歳以上900円。未就学児と障害者手帳などの所持者本人および介助者1名は無料である。支払いは現金のほかクレジットカード、電子マネー、コード決済に対応している。
撮影は可能で、所有者は撮影した写真のSNS投稿も認めている。ただし展示室内での三脚・一脚・自撮り棒の使用とフラッシュ撮影は控えるよう求められており、雑誌や放送、営利目的での撮影には事前の許可が必要になる。
最寄り駅は名鉄常滑線の常滑駅で、知多バスに乗り換えて「INAXライブミュージアム前」で降りれば徒歩2分ほど。やきもの散歩道から歩く場合は、常滑市陶磁器会館から約20分、登窯(陶栄窯)から約15分が目安になる。車なら知多横断道路の常滑インターチェンジから約7分で、普通車80台分の無料駐車場がある。
料金と開館時間は変わることがある。ここに書いた内容は2026年8月30日時点のもので、訪問前に公式サイトで確かめてほしい。
Q&A
- 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)は見学できますか。開館時間と入館料は?
- 見学できます。開館は10時から17時(入館は16時30分まで)、休館日は水曜日(祝日は開館)と年末年始です。入館料は全館共通で大人1,000円、学生800円、中高生500円、小学生250円、70歳以上900円です。
- 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)の窯の内部に入れますか?
- 入れます。焼成室の中に立って、煉瓦の壁を間近に見ることができます。窯焚きの作業を再現したプロジェクションマッピングも窯の内部で上映されています。
- 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)で写真を撮ってもよいですか?
- 撮影できます。SNSへの投稿も認められています。展示室内での三脚・一脚・自撮り棒とフラッシュ撮影は控えてください。取材や営利目的の撮影には事前許可が必要です。
- 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)へは常滑駅からどう行きますか?
- 名鉄常滑線の常滑駅で知多バスに乗り換え、「INAXライブミュージアム前」で下車して徒歩2分です。やきもの散歩道の常滑市陶磁器会館からは徒歩約20分。車の場合は常滑インターチェンジから約7分で、無料駐車場があります。
- 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)では何を焼いていたのですか?
- 主に上下水道用の土管です。常滑でも最大級とされる3尺(内径約90センチ)の大型土管を焼いていたとみられ、焼酎瓶やクリンカタイルも製造していました。操業は昭和46年(1971年)に終わっています。
基本データ
| 名称 | 窯のある広場・資料館(倒焔式角窯) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県常滑市奥栄町一丁目112 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 23-0006 |
| 指定年 | 1997年6月12日登録(平成9年)/告示 1997年6月24日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積373平方メートル |
| 所有者 | 株式会社LIXIL |
| 公開状況 | INAXライブミュージアムの展示館として公開(有料・水曜休館) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「窯のある広場・資料館(倒焔式角窯)」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000215
- INAXライブミュージアム「窯のある広場・資料館」
- https://livingculture.lixil.com/ilm/facility/kiln/
- INAXライブミュージアム「窯のある広場・資料館について」
- https://livingculture.lixil.com/ilm/facility/kiln/kiln_about/
- INAXライブミュージアム「利用案内」
- https://livingculture.lixil.com/ilm/guide/
- INAXライブミュージアム「お客様へのお願い」
- https://livingculture.lixil.com/ilm/guidelines/
- 愛知県公式観光サイト Aichi Now「INAXライブミュージアム」
- https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/32/
- とこなめ観光ナビ「INAXライブミュージアム」
- https://www.tokoname-kankou.net/spot/detail/13/
最終更新日: 2026.08.29