川原田家住宅主屋とは
川原田家住宅主屋は、愛知県名古屋市昭和区南山町にある昭和12年(1937年)建築の木造2階建住宅で、令和2年(2020年)4月3日に登録有形文化財(建造物)として登録された。地下鉄鶴舞線いりなか駅から南西へ数百メートル、八事丘陵の斜面を下った角地に建つ。
建築面積は144平方メートル。木造2階建の一部に鉄筋コンクリート造の地階を持ち、屋根は入母屋造の桟瓦葺で、一階の下屋のみ銅板を葺く。昭和56年(1981年)と平成30年(2018年)に改修が行われている。
この一帯は、大正から昭和初期にかけて八事丘陵に展開した宅地開発によって生まれた住宅地である。名古屋市はこれを「山林都市構想に基づく宅地開発」と説明する。丘の地形と樹林を残したまま大きく区画を割る手法で、川原田家住宅主屋はその区画のひとつに建っている。
敷地ごと登録するという判断
令和2年(2020年)4月3日、川原田家住宅では主屋のほかに表門及び塀、裏門及び塀、石垣が同時に登録された。主屋の登録番号は23-0542、表門及び塀が23-0543、石垣が23-0545である。建物1棟ではなく、門と塀と擁壁を含めた敷地の輪郭がまとめて登録された形になる。
登録に先立つ令和元年(2019年)9月5日、名古屋市は川原田家住宅を認定地域建造物資産の第76号に認定している。市の説明は、敷地割りが大きく緑豊かであること、外観が山林の地形を活かした当時の都市構想をよく示していることを挙げる。市の認定が先にあり、翌年に国の登録が続いた。
周囲に加えられた造作は、主屋の翌年、昭和13年(1938年)のものである。主屋を建ててから一年かけて、門と塀と石垣で敷地の縁を整えたことになる。
見どころ
南庭に向かって開く和室
川原田家住宅主屋の平面で軸になるのは、南側の庭園に面した和室である。一階も二階も、縁に沿って和室を二室ずつ並べる。斜面地の南向きという条件を、上下二層でそのまま使い切る配置である。
玄関の脇には洋室の応接間を設ける。畳の座敷で客を迎える形式と、椅子座の応接間を玄関脇に置く形式が、同じ家のなかに並んでいる。文化庁の解説は、こうした構成を「都市近郊住宅の昭和前期の様相」と表現する。名古屋市の説明はさらに、縁側から張り出したテラスに、この地がかつて別荘地であった頃の面影を読み取っている。
公道から見える大谷石の石垣
敷地の西面と南面の一部を、総延長33メートルの石垣が囲む。鉄筋コンクリート造のL型擁壁の表面に大谷石を貼り、切石を布積のように見せる仕上げである。大谷石は栃木県宇都宮市大谷町一帯で採れる凝灰岩で、加工しやすく、時間とともに表情が変わる石として近代の住宅建築に多く使われた。上端には笠石を載せ、その上をさまざまな樹種の生垣とする。
敷地北西隅の表門は腕木門で、切妻造の桟瓦葺屋根を載せて北を向く。間口2.1メートル、東側の袖塀に潜戸を設ける。塀は腕木で桟瓦葺の屋根を受け、土壁の腰を外側は竪板張、内側は杉皮張とする。外を向く面と内を向く面で仕上げを変えているところに、この屋敷まわりの丁寧さがあらわれる。
川原田家住宅主屋そのものは黒い板塀と屋敷林の奥にあって見通せない。ただし石垣と塀と門は公道に面しており、この住宅地の景観をつくっている要素として外から確かめられる。
見学とアクセス
川原田家住宅主屋は個人の住宅であり、一般公開されていない。名古屋市の国登録文化財一覧でも所有者は「個人蔵」と記載されている。内部の見学はできず、敷地内への立ち入りもできない。
外から見られるのは石垣、板塀、表門と裏門である。撮影する場合も公道上からにとどめ、門の内側にレンズを向けたり長時間とどまったりすることは避けたい。閑静な住宅地であり、周辺の住民の生活がある。
公開の予定については、名古屋市観光文化交流局の歴史まちづくり推進課が文化財と認定地域建造物資産を所管しており、市の公式サイトに問い合わせ先が掲載されている。
最寄り駅は名古屋市営地下鉄鶴舞線のいりなか駅で、直線距離でおよそ450メートル、徒歩6分ほど。鶴舞線と名城線が交わる八事駅からも約1.4キロ、徒歩20分程度で歩ける。いりなか駅からは緩やかな坂を下る道になる。近隣には南山学園の洋風建築群が建ち並び、坂道を歩きながら昭和初期の住宅地の骨格を確かめられる。
Q&A
- 川原田家住宅主屋は見学できますか。内部は公開されていますか。
- 公開されていません。川原田家住宅主屋は現に人が暮らす個人の住宅で、名古屋市の一覧でも所有者は「個人蔵」とされています。内部の見学も敷地への立ち入りもできませんが、大谷石の石垣、黒い板塀、表門と裏門は公道から見ることができます。
- 川原田家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
- 建築は昭和12年(1937年)で、昭和56年(1981年)と平成30年(2018年)に改修されています。登録有形文化財として登録されたのは令和2年(2020年)4月3日、登録番号は23-0542です。その前年の令和元年(2019年)9月5日には、名古屋市の認定地域建造物資産第76号に認定されています。
- 川原田家住宅主屋への行き方は。最寄り駅はどこですか。
- 名古屋市営地下鉄鶴舞線のいりなか駅が最寄りで、直線距離で約450メートル、徒歩6分ほどです。八事駅からも約1.4キロ、徒歩20分程度で歩けます。所在地は名古屋市昭和区南山町25-4他です。建物は非公開のため、現地では公道から外周を眺めることになります。
- 川原田家住宅主屋のほかに、川原田家住宅では何が登録されていますか。
- 表門及び塀、裏門及び塀、石垣の3件が主屋と同じ令和2年(2020年)4月3日に登録されました。いずれも昭和13年(1938年)頃のもので、石垣は鉄筋コンクリート造の擁壁に大谷石を貼った総延長33メートルの構造物です。建物単体ではなく、敷地の輪郭を含めた登録になっています。
- 川原田家住宅主屋はどんな建築様式ですか。和風ですか洋風ですか。
- 和風を基調としながら洋室を組み込んだ住宅です。入母屋造桟瓦葺の木造2階建で、南庭に面して一階と二階に和室を二室ずつ並べる一方、玄関脇には洋室の応接間を設けます。縁側から張り出したテラスも備え、昭和前期の都市近郊住宅にみられる構成となっています。
基本データ
| 名称 | 川原田家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市昭和区南山町25-4他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2020年登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建一部鉄筋コンクリート造地階付、瓦葺一部銅板葺、建築面積144平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(個人の住宅) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 川原田家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013253
- 国指定文化財等データベース 川原田家住宅表門及び塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013254
- 国指定文化財等データベース 川原田家住宅石垣(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013256
- 川原田家住宅(名古屋市 認定地域建造物資産)
- https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1017271/1017318.html
- 国登録文化財(名古屋市)
- https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1034462/1017208.html
最終更新日: 2026.08.31