明治村本郷喜之床とは
明治村本郷喜之床は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治後期の理髪店建築で、2004年(平成16年)に登録有形文化財に登録された。もとは東京都文京区本郷にあり、「喜之床」の屋号で営業していた店舗兼住宅である。1980年(昭和55年)に明治村へ移築され、現在は村内4丁目に建つ。
木造2階建、建築面積47平方メートル。屋根は桟瓦葺、棟と平行な側に出入口を設ける平入で、間口3間の町家の形式をとる。
正面はほとんどがガラスである。中央の入口が両開きのガラス戸、その左右に引違いのガラス窓が続く。板ガラスがまだ安くはなかった時代に、これだけの面積をガラスで埋めた店構えは、道行く人に店の中を見せるための工夫だった。
明治村本郷喜之床が登録有形文化財となった理由
明治村本郷喜之床の登録基準は「造形の規範となっているもの」で、登録番号は23-0101である。国指定文化財等データベースは、この建物を明治後期の町家として記載している。
価値の中心にあるのは、商いの場と暮らしの場が一つ屋根の下に収まった平面構成である。1階は前半分が店で、天井は洋風の板張りとする。その奥に和室3室が食い違いに並び、家族の生活の場になる。2階は6畳2室で、正面には手摺の付いた肘掛窓が開く。
明治の町の理髪店がそのままの形で残った例は多くない。営業を続ける店は改装を重ねるからである。この建物も明治村へ移されるまでに何度か手が入っていたが、柱などに残る痕跡をたどって移築時に復原された。
明治村本郷喜之床の見どころ
まず正面のガラス面に立ち止まりたい。引違い窓の桟が細く、外からは店の内部が奥まで見通せる。理髪店は当時「バーバー」とも呼ばれ、西洋風の職業として受け取られていた。ガラス張りの正面は、その新しさを通りに向けて示す看板でもあった。
店に入ると天井を見上げてほしい。和室が続く町家でありながら、店の部分だけが洋風の板天井になっている。床から天井までの一続きの空間に、和と洋の切り替えが一本の線として現れる。
2階の肘掛窓も見落とせない。窓の下端が低く、腰を下ろしたまま肘を掛けて外を眺められる高さに取ってある。手摺が付くのは、そこに人が寄りかかることを前提にした造りだからである。
石川啄木が暮らした2階
明治村本郷喜之床の名が知られているのは、歌人の石川啄木がこの建物の2階を借りて暮らしたためである。1909年(明治42年)から1911年(明治44年)まで、啄木は2階の2間に家族と住んだ。それまでの下宿住まいを離れ、家族を呼び寄せての生活だった。
第一歌集『一握の砂』は、この2階で暮らしていた1910年(明治43年)に刊行されている。
東京の旧地には現在も理髪店が営業しており、文京区は本郷2丁目のその場所を石川啄木の旧居跡として案内している。建物そのものは明治村にある。啄木が使った2階を実際に見上げられるのは、犬山のこの場所だけである。
明治村本郷喜之床の見学方法
明治村本郷喜之床は博物館明治村の中にあり、見学には入村料が必要になる。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生は700円で、未就学児は無料である。
開村時間は季節によって変わる。多くの時期は午前9時30分から午後5時まで、冬期は午前10時から午後4時まで。入村は閉村時間の30分前までとなっている。休村日が設定される時期があるため、訪問前に公式サイトの開村スケジュールで確認したい。
私的な撮影に事前の許可は要らない。ただし建物内での三脚の使用は禁じられている。建物は村内4丁目にあり、村の南側にあたる。
公共交通機関では、名鉄犬山駅の東口から明治村行きの路線バスが出ている。名古屋駅と栄からの直通バスもある。車の場合は中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルで、北口のすぐ外に駐車場がある。
Q&A
- 明治村本郷喜之床は見学できますか。料金と時間は。
- 博物館明治村の入村料で見学できます。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生は700円です。開村時間は多くの時期が午前9時30分から午後5時まで、冬期は午前10時から午後4時までです。
- 明治村本郷喜之床の中に入れますか。
- 1階の店の部分は公開されており、内部から洋風の板天井や店の設えを見ることができます。立ち入りを制限している箇所や、修理のため見学できない期間が生じることがあるため、当日の案内に従ってください。
- 明治村本郷喜之床で石川啄木は何をしていたのですか。
- 1909年(明治42年)から1911年(明治44年)まで、2階の2間を借りて家族と暮らしました。第一歌集『一握の砂』はこの家に住んでいた1910年(明治43年)に刊行されています。
- 明治村本郷喜之床は写真を撮ってもよいですか。
- 個人的な撮影であれば許可は不要です。建物内での三脚や一脚の使用は禁止されています。広告や販売を目的とする撮影は事前の申請が必要です。
- 明治村本郷喜之床はもともとどこにあった建物ですか。
- 東京都文京区本郷にありました。1980年(昭和55年)に博物館明治村へ移築されています。旧地では現在も理髪店が営業しており、文京区が石川啄木の旧居跡として案内しています。
基本データ
| 名称 | 明治村本郷喜之床 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市内山1 博物館明治村内 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2004年登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積47平方メートル、木造2階建 |
| 所有者 | 公益財団法人明治村 |
| 公開状況 | 一般公開、博物館明治村の入村料が必要 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 明治村本郷喜之床(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003867
- 文化遺産オンライン 明治村本郷喜之床
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/116947
- 博物館明治村 本郷喜之床
- https://www.meijimura.com/sight/%E6%9C%AC%E9%83%B7%E5%96%9C%E4%B9%8B%E5%BA%8A/
- 博物館明治村 開村スケジュール
- https://www.meijimura.com/guide/open/
- 博物館明治村 各種料金
- https://www.meijimura.com/guide/price/
- 文京区 石川啄木喜之床跡
- https://www.city.bunkyo.lg.jp/bunka/kanko/spot/ato/kinotoko.html
最終更新日: 2026.09.03