汐留に生まれ、大井を経て犬山へ

明治村鉄道局新橋工場は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治22年(1889年)建築の鉄造工場建築で、平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財として登録された。東京・汐留の新橋停車場構内に東京鉄道局が設けた工場群のうちの一棟である。

新橋工場には旋盤、木工、鍛冶、鋳物など9つの工場が置かれていた。現存するこの一棟は、そのうち木工場であったと推測されている。客車の木部を刻み、組む作業場だったことになる。

建物は大正8年(1919年)に大井工場へ移され、第二旋盤職場として昭和41年(1966年)まで使われた。役目を終えた同じ年に解体され、博物館明治村へ移築されている。汐留、大井、犬山と三度場所を変えながら、77年にわたって稼働し続けた建物である。

鉄材がすべて国産であること

明治村鉄道局新橋工場が評価されているのは、使われている鉄そのものにある。鋳鉄柱、キングポストトラスの小屋組材、外壁の鉄製下見板、窓のサッシ類まで、鉄の部材がことごとく国内で作られた。文化庁の国指定文化財等データベースは、当時の工業技術を示す貴重な遺構だと記している。登録有形文化財としての登録基準は「再現することが容易でないもの」が適用された。

手本になった建物は、同じ村内の四丁目に建つ鉄道寮新橋工場である。こちらは明治5年頃(1872年頃)にイギリスから部材一式を輸入して建てられた。17年後に建った鉄道局新橋工場は、その構法を国産の鉄で写し取っている。輸入から国産への切り替えが、部材の一本一本で確かめられる。

もっとも、写し取ったといっても複製ではない。洋小屋組を構成する鉄材の量は、英国伝来のものより多い。

柱の銘と、鉄板の段折り

明治村鉄道局新橋工場で最初に見たいのは柱である。パイプ状に成型された鉄柱の側面に、「明治二十二年 東京鉄道局鋳造」の文字が陽刻されている。建てられた年と、鋳造した官庁の名が、部材そのものに刻まれている。日本の鉄道を所管した役所の名は、鉄道寮、鉄道局、鉄道院、鉄道省と変わっていった。この柱の銘は、そのうち鉄道局の時代を指している。

外壁と柱の鍔

外壁は、下見板の形に段折りされた鉄板を張る。柱の側面には上から下まで全長にわたって鍔が出され、その鍔が鉄板を受け止める。この納まり自体は英国製に倣ったものだが、板も柱もここでは日本で鋳られ、圧された。

窓と屋根

格子状に成型された鉄製サッシは、現存するのは1ヵ所だけである。当初は回転窓であった痕跡が残る。屋根は越屋根を載せた切妻で、銅板を葺く。妻面には半円のファンライトが飾られ、半円アーチの扉口に両開きの戸が吊り込まれている。工場建築でありながら、開口部の形は洋風建築の語彙で整えられている。

建物のなかの御料車

建物の中には昭憲皇太后御料車(5号御料車)が置かれている。全長16メートル余、総重量約22トンの木製2軸ボギー車で、車内には橋本雅邦と川端玉章が描いた天井画があり、椅子や腰張りには一条家の家紋である藤をあしらった布が使われている。車内は通常非公開のため、窓越しに眺める形になる。

見学方法とアクセス

明治村鉄道局新橋工場は博物館明治村の一丁目12番地に建つ。入村すれば建物の中まで見学でき、鉄柱や小屋組を間近に見られる。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生が700円で、未就学児は無料である。

開村時間は季節によって変わる。3月と、4月から7月、9月・10月は午前9時30分から午後5時まで。8月は午前10時から午後5時まで。11月は午前9時30分から午後4時まで。12月から2月は午前10時から午後4時までとなる。休村日が設定されているので、来村前に公式サイトの開村カレンダーを見ておきたい。

写真撮影は個人の範囲でできる。ただし建物内での三脚使用は禁止されており、山林に立ち入っての撮影も認められていない。修理などで見学できない建造物や、立ち入りを制限している箇所がある点にも留意したい。

アクセスは名鉄犬山駅からバスで20分。名古屋駅と栄駅からは直通の高速バスがある。車なら中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートル。駐車場は普通車900台分で、駐車料金は1,000円である。

Q&A

Q明治村鉄道局新橋工場は内部を見学できますか?
A見学できます。博物館明治村の入村料に含まれており、建物の中に入って鉄柱や小屋組を間近に見られます。ただし展示されている昭憲皇太后御料車の車内は通常非公開で、窓越しに眺める形になります。
Q明治村鉄道局新橋工場はいつ建てられ、いつ移築されましたか?
A明治22年(1889年)に東京・汐留の新橋停車場構内に建てられました。大正8年(1919年)に大井工場へ移されて第二旋盤職場となり、昭和41年(1966年)に博物館明治村へ移築されています。
Q明治村鉄道局新橋工場と鉄道寮新橋工場はどこが違うのですか?
A鉄材の出どころが逆です。鉄道寮新橋工場は明治5年頃(1872年頃)にイギリスから部材を輸入して建てられ、明治村鉄道局新橋工場は明治22年(1889年)に国産の鉄で建てられました。構法は同じ系統で、後者が前者を手本にしています。
Q明治村鉄道局新橋工場で写真を撮ってもよいですか?
A個人の記録としての撮影はできます。建物内での三脚の使用は禁止されており、営業目的の撮影は別途手続きが必要です。
Q明治村鉄道局新橋工場へはどのように行けばよいですか?
A名鉄犬山駅からバスで20分の博物館明治村内、一丁目12番地にあります。名古屋駅と栄駅からは直通の高速バスも運行しています。車の場合は中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルです。

基本情報

名称明治村鉄道局新橋工場
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成15年(2003年)登録
員数1棟
寸法建築面積463平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況博物館明治村内で公開。有料入村

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 明治村鉄道局新橋工場
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003659
博物館明治村 鉄道局新橋工場
https://www.meijimura.com/sight/鉄道局新橋工場/
博物館明治村 開村時間・休村日
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村 チケット・料金
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村 アクセス
https://www.meijimura.com/guide/access/
文化庁 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/

最終更新日: 2026.09.03