大阪から犬山へ運ばれた明治の木造洋風校舎

明治村千早赤阪小学校講堂は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治30年(1897年)頃の木造2階建校舎で、平成15年(2003年)に登録有形文化財に登録された。1階を雨天体操場、2階を講堂とする構成で、建築面積は463平方メートル。屋根は寄棟造桟瓦葺である。

建物の名は、移築前に建っていた大阪府南河内郡千早赤阪村に由来する。ただし、そこが最初の場所ではない。博物館明治村の説明によれば、もとは大阪市北区大工町の堀川尋常小学校にあり、同校の校舎新築にともなって昭和4年(1929年)に南河内郡の小学校へ移され、講堂として使い直された。明治村はこの経緯について、創建に関して複数の説があることを認めたうえで、現在は堀川尋常小学校由来の説を採っていると記している。

その後、昭和45年(1970年)に解体され、昭和51年(1976年)に明治村2丁目14番地へ移築された。文化庁の国指定文化財等データベースも、年代を「明治30頃/昭和51移築」と記録している。大阪の市街地から河内の村へ、さらに愛知の丘陵地へ。明治村千早赤阪小学校講堂は、100年余りのあいだに三度その土地を替えている。

登録有形文化財としての位置づけ

登録の告示は平成15年12月25日、登録年月日は同年12月1日で、登録番号は23-0073。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。国宝や重要文化財のような指定ではなく、届出を基本とする登録の制度で保護されている点に注意したい。

文化庁の解説は、この建物の価値を意匠の面から述べている。1階に櫛形アーチの軽快なアーケードをめぐらせ、2階は隅柱付きの下見板張の外壁にペディメント付きの上げ下げ窓を配すること。棟飾やせいの高い軒蛇腹をもつこと。これらが明治期の木造洋風建築の特色をよく示している、という評価である。

洋風の意匠をまとってはいるが、構造そのものは在来の木造である。石やレンガの重厚さではなく、木で組んだ骨組みの上に西洋の装飾語彙を載せる。明治30年前後の地方の学校建築が、限られた材料と技術のなかでどこまで洋風を再現しようとしたのか。明治村千早赤阪小学校講堂は、その到達点を実物で示す資料として登録された。

アーケードと上げ下げ窓、そして奉安殿

正面に立ってまず目に入るのは、1階の連続アーチである。列柱の間に櫛形のアーチが並び、その奥に幅一(約1.8メートル)の回廊がめぐる。雨の日でも体を動かせるようにという実用の要請から生まれた雨天体操場だが、外周に回廊を巡らせたことで、建物は学校というより公共施設のような構えになった。

視線を上げると、2階の表情は1階と大きく変わる。壁は下見板張で、隅には柱型が立つ。窓は縦長の上げ下げ窓で、その上に三角形のペディメントが載る。軒には何段も重ねた蛇腹がまわり、屋根には棟飾が置かれる。装飾の密度が高いのは軒まわりと窓まわりで、壁面そのものは板張りのまま素っ気ない。この落差が、木造で洋風をつくるときの割り切り方をよく表している。

2階の内部には、奉安殿が設けられている。天皇の御真影と教育勅語を納めるための場所で、講堂の正面に据えられた。昭和20年(1945年)の敗戦後、全国の学校でその多くが撤去されたため、建物とともに残っている例は多くない。ただし2階は非公開で、内部を見ることはできない。外から2階の窓の並びを数えながら、その奥にある空間を想像することになる。

見学方法とアクセス

明治村千早赤阪小学校講堂は博物館明治村の2丁目14番地に建ち、見学には入村料が必要である。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生700円で、未就学児は無料。開村時間は季節で変わり、3月から7月と9月・10月は午前9時30分から午後5時、8月は午前10時から午後5時、11月は午前9時30分から午後4時(土曜・休日は午後5時)、12月から2月は午前10時から午後4時となる。入村は閉村時間の30分前までである。

写真撮影は可能だが、建物内での三脚使用と山林に立ち入っての撮影は禁止されている。明治村は事故防止や修理のため立ち入りを制限する建物や箇所があると案内しており、当日の公開範囲は現地の掲示で確かめたい。前述のとおり、この講堂の2階は通年で非公開である。

アクセスは、名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスで約20分。名鉄バスセンターと栄からの直通バスもある。車の場合は中央自動車道小牧東インターチェンジから約3キロメートルで、駐車場は普通車1,000円。村内は起伏が大きいため、正門から2丁目までは村営バスや京都市電を使うと移動が楽になる。

Q&A

Q明治村千早赤阪小学校講堂は見学できますか。料金と時間は。
A博物館明治村の入村料で見学できます。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生700円、未就学児は無料です。開村時間は季節によって変わり、3月から7月と9月・10月は午前9時30分から午後5時、12月から2月は午前10時から午後4時が目安です。
Q明治村千早赤阪小学校講堂の内部には入れますか。
A2階の講堂部分は非公開です。1階の雨天体操場と外周の回廊は建物の見どころで、櫛形アーチの並びを間近で見ることができます。修理や催事によって公開範囲が変わることがあるため、当日の掲示で確認してください。
Q明治村千早赤阪小学校講堂は国宝や重要文化財ですか。
Aいずれでもありません。平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。登録番号は23-0073で、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。国宝・重要文化財の「指定」とは別の制度による保護です。
Q名前に「千早赤阪」とあるのに愛知県にあるのはなぜですか。
A移築前に大阪府南河内郡千早赤阪村に建っていたためです。昭和45年(1970年)に解体され、昭和51年(1976年)に博物館明治村へ移されました。文化財としての名称は、明治村に移築された建物として「明治村千早赤阪小学校講堂」と登録されています。
Q明治村千早赤阪小学校講堂へのアクセスは。
A名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスで約20分、「明治村」バス停で下車します。名鉄バスセンターと栄からの直通バスもあります。車の場合は中央自動車道小牧東インターチェンジから約3キロメートル、駐車場は普通車1,000円です。建物は村内2丁目14番地にあります。

基本データ

名称明治村千早赤阪小学校講堂
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内(2丁目14番地)
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成15年(2003年)登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積463平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況公開(入村料が必要。2階の講堂内部は非公開)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 明治村千早赤阪小学校講堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003660
文化遺産オンライン 明治村千早赤阪小学校講堂
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/188390
博物館明治村 千早赤阪小学校講堂
https://www.meijimura.com/sight/千早赤阪小学校講堂/
博物館明治村 開村時間・休村日
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村 チケット・料金
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村 アクセス
https://www.meijimura.com/guide/access/

最終更新日: 2026.09.03