土蔵造で建てられた銀行

明治村安田銀行会津支店は、愛知県犬山市の博物館明治村に保存されている明治40年(1907年)建築の銀行建築で、平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財に登録された。

もとは福島県会津若松市大町の商業地に建ち、安田銀行の店舗として使われていた。昭和38年(1963年)に解体され、その2年後、明治村が開村した昭和40年(1965年)に犬山へ移築されている。現在は村内2丁目20番地にある。

構造は土蔵造。蔵のために練り上げられた厚壁の工法で、屋根は寄棟造、赤味を帯びた塩焼瓦を葺く。登録原簿は建築面積を154平方メートル、構造を土蔵造平屋建と記す。外観を見た人はここで引っかかるはずで、正面からは二階建てにしか見えない。しかし営業室は天井まで吹き抜けで、その上に床が張られていない。

「造形の規範となっているもの」という登録基準

文化庁が建造物を登録する基準は3つある。明治村安田銀行会津支店が該当したのは1番目、造形の規範となっているものという項目である。規範たりうるのは、町家や商家が磨いてきた防火の技法が、近代の金融機関という新しい用途にそのまま持ち込まれている点にある。

土蔵造は江戸時代から使われ、大正期に鉄筋コンクリート造が普及するまで、火に対する最も実際的な答えであり続けた。銀行はこの工法を好んだ。安田銀行が東北地方に構えた14の店舗のうち、9店舗が土蔵造だったという。理由は技術より商売の側にある。預金保険のない時代、客が店の信用を測る手がかりは、その建物が火事や風水害に耐えそうに見えるかどうかだった。分厚い黒壁は、それ自体が広告だったのである。

細部もその主張に沿っている。外から見える木部はすべて黒漆喰で塗り籠められた。西面の腰壁は海鼠壁仕上げで、平瓦の目地に漆喰の甲を盛り上げたこの意匠は、雨を流し、飛び火にも強い。玄関の庇を受ける独立柱まで、木ではなく石の角柱が使われている。

建物の見どころ

黒い壁には、正面からではなく斜めから近づいてみたい。明治村安田銀行会津支店の外壁に塗られた漆喰は、黒く塗ったのではなく、油煙から作る灰墨を混ぜ込んだうえで磨き上げたものである。曇天では艶消しに見える壁が、晴れた日に角度を変えると、暗い鏡のように光を返す。

屋根瓦も見ておきたい。この赤みがかった塩焼瓦は東北に多い仕様で、冬の厳しい会津盆地では普通の瓦が傷みやすかった。黒壁との取り合わせは、慣れない目にはちぐはぐで、しかし妙に据わりがよい。

内部に入ると語彙が変わる。カウンターの上に立つ木の円柱は、軸に溝彫りを施し、柱礎に彫刻を刻んだ洋風のもの。天井は一面に漆喰の彫刻で覆われている。客溜の上には吹き抜けに面したギャラリーが張り出し、1階正面の腰壁の石積みや玄関まわりの独立柱も西洋建築の作法を借りている。外は伝統的な耐火の壁、内は輸入された装飾。この建物は自分自身と、なかなか面白い議論をしている。

最後に行章を探してみてほしい。玄関天井の中心飾りと軒先の瓦に、分銅の形と「三」の字を組み合わせた印がある。安田銀行が創業以来使ってきた「分銅に三」で、「三」は創業者の安田善次郎の家が平安時代の学者・三善清行の子孫にあたるという由来から採られ、江戸時代以来の両替商の印である分銅と組み合わされたものと説明されている。

見学のしかた

明治村安田銀行会津支店は内部が公開されている。それも、村内の建物としては珍しく、入って腰を落ち着けることが想定された建物である。営業室は明治体験処ハイカラ衣装館として使われており、明治風の女学生姿や書生服を5分間1,100円で借りて記念撮影ができる。受付は開村30分後から閉村1時間前まで、当日その場で整理券が配られ、混雑日にはなくなり次第終了となる。衣装を借りずに内部だけを見学することもできる。

入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生が700円、未就学児は無料。開村時間は4月から7月と9月・10月・3月が午前9時30分から午後5時、8月が午前10時から午後5時、11月が午前9時30分から午後4時(土曜・休日は午後5時まで)、12月から2月が午前10時から午後4時である。入村は閉村の30分前まで。休村日は平日に散在するため、事前にカレンダーを確認しておきたい。

私的な撮影に許可は不要だが、建物内での三脚・一脚の使用は禁止されており、この建物も対象になる。飲食も建物内ではできない。

名鉄犬山駅東口から岐阜バス明治村線で約20分。車なら中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートル、駐車料金は普通車1,000円である。2丁目は村内のほぼ中ほどにあたり、正門からは少し歩く。

よくある質問

Q明治村安田銀行会津支店は内部を見学できますか。
Aできます。入村料だけで営業室に入れます。現在は明治体験処ハイカラ衣装館として使われていますが、衣装を借りなくても、ギャラリーや天井の漆喰彫刻、カウンター上の円柱を見学できます。
Q明治村安田銀行会津支店はなぜ文化財に登録されたのですか。
A平成15年(2003年)12月1日に、造形の規範となっているものという基準で登録有形文化財に登録されました。伝統的な土蔵造の耐火建築を近代の銀行に応用し、そこへ洋風の意匠を接ぎ木した点が評価されています。
Q明治村安田銀行会津支店はもともとどこにあったのですか。
A福島県会津若松市大町です。明治40年(1907年)に建てられ、昭和38年(1963年)に解体、明治村が開村した昭和40年(1965年)に犬山へ移築されました。
Q明治村安田銀行会津支店は平屋建てですか、二階建てですか。
A登録原簿の記載は土蔵造平屋建です。外観は二階建てに見えますが、営業室の上に床はなく、天井まで吹き抜けになっており、一方の側にギャラリーが張り出しているだけです。
Q明治村安田銀行会津支店へはどう行けばよいですか。
A名鉄犬山駅東口から岐阜バス明治村線で約20分です。村内では2丁目20番地にあたり、正門から歩いて向かえます。

基本データ

名称明治村安田銀行会津支店
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成15年(2003年)12月1日登録
員数1棟
寸法建築面積154平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況内部公開、博物館明治村の入村料で見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「明治村安田銀行会津支店」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003664
文化遺産オンライン「明治村安田銀行会津支店」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/116544
博物館明治村「安田銀行会津支店」
https://www.meijimura.com/sight/%E5%AE%89%E7%94%B0%E9%8A%80%E8%A1%8C%E4%BC%9A%E6%B4%A5%E6%94%AF%E5%BA%97/
博物館明治村「開村スケジュール」
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村「各種料金」
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村「アクセス」
https://www.meijimura.com/guide/access/
博物館明治村「明治村村内の撮影について」
https://www.meijimura.com/photography/

最終更新日: 2026.09.03