旧東海道に南面する醸造家の町家
西駒屋田村家住宅主屋は、愛知県豊橋市二川町の旧東海道沿いに建つ明治後期の町家で、2014年(平成26年)に国の登録有形文化財となった。街道に南面して建ち、江戸日本橋から数えて33番目の宿場であった二川宿の町並みの一角を占めている。
文化庁の国指定文化財等データベースは、建設年代を明治後期、1898年から1912年の間とし、この家が醸造業を営んでいたことを記す。登録上の種別は住宅ではなく「産業2次」で、暮らしの場であると同時に生業の場であったことが、分類の仕方そのものに表れている。
床上部の間取りは二列六室。東の列にミセ、ナカノマ、ダイドコロが並び、西の列にはオクミセ、ブツマ、オクノマが続く。商いの空間を街道側に置き、奥へ進むほど家族の生活の場になる。宿場の商家の平面がそのまま残された構成である。
同じ敷地には主屋の北方に土蔵が建ち、西駒屋田村家住宅土蔵として別に登録されている。
登録の理由と、市による景観の指定
西駒屋田村家住宅主屋の登録は、登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当するとして行われた。登録番号は23-0412、第78回の登録である。データベースの解説は、この建物を宿場の風情を感じさせる町家と位置づけている。
2024年(令和6年)には、豊橋市が景観法に基づく景観重要建造物の第6号として「西駒屋」を指定した。対象は主屋・門・離れ兼倉庫の3棟。市の告示は、明治後期から近年まで醸造業を営んできた商家であり、現在は創業家の住まいとして使われていると説明する。市の指定基準の一つは、道路など公共の場所から容易に望見できることで、街道から眺める外観そのものが評価の対象になっている。
国の登録と市の指定は対象が完全には重ならない。国の登録有形文化財は主屋と土蔵、市の景観重要建造物は主屋・門・離れ兼倉庫である。両方に含まれるのは西駒屋田村家住宅主屋だけになる。
街道から見るところ
旧東海道の南側に立って西駒屋田村家住宅主屋を眺めると、長く伸びた軒の線が最初に目に入る。屋根は切妻造の桟瓦葺で、長い側の面に入口を開く平入の形式をとる。豊橋市の告示は、この切妻平入の外観を二川宿の町並みを特徴づける形と述べており、西駒屋田村家住宅主屋はその典型を街道に見せている。
次に格子に目を移したい。床上部の正面には出格子が立ち、通りからの視線をやわらげながら店の内側に光と風を通す。その上の軒は出桁造で、桁を外に持ち出して軒を深く支える。この出桁造の軒が上下の両方の階に用いられており、屋根の軒と中間の軒がいずれも街道側へ張り出す。かつて醸造に使われた建物群は通りからは見えないが、北側に土蔵の屋根がのぞくことで、敷地の奥行きを想像することができる。
ひとつ、記録の食い違いに触れておきたい。文化庁の登録原簿は構造を木造平屋建と記す一方、豊橋市が景観重要建造物として告示した際の記載は木造二階建で、原簿の解説文自体も上下階の軒に言及している。街道から見上げれば軒は二段に重なって見える。上階をどう数えるかについて、二つの記録はまだ整理されていない。
見学方法とアクセス
西駒屋田村家住宅主屋は個人の住宅であり、一般公開はされていない。開館時間や拝観料の設定はなく、内部の見学もできない。できるのは、家の正面を通る旧東海道を歩き、公道から外観を眺めることである。敷地は私有地なので、門の内側や建物脇の通路には立ち入らないでほしい。
外観の撮影は公道から行える。現に人が暮らす家であることを踏まえ、窓や屋内にレンズを向けることは避け、建物そのものを写すようにしたい。旧東海道は幅の狭い生活道路で車も通るため、道をふさがない配慮も必要になる。
最寄り駅はJR東海道本線の二川駅。北口から旧東海道を東へ約1.1キロメートル、徒歩約15分で着く。道の南側には、本陣と旅籠屋を公開する二川宿本陣資料館があり、その向かい、道の北側に建つ切妻平入の醸造家の町家が西駒屋田村家住宅主屋である。田村家の建物に入って見学したい場合は、同じ街道を東へ進んだ先に市が公開する商家「駒屋」があるが、西駒屋の主屋は今も住まいとして使われている。
Q&A
- 西駒屋田村家住宅主屋は見学できますか?内部は公開されていますか?
- 内部は公開されていません。西駒屋田村家住宅主屋は個人の住宅で、開館時間や拝観料の設定もありません。外観は正面を通る旧東海道の公道から見ることができます。
- 西駒屋田村家住宅主屋へのアクセスは?最寄り駅からの所要時間は?
- JR東海道本線の二川駅が最寄りです。北口から旧東海道を東へ約1.1キロメートル、徒歩約15分。道の北側、二川宿本陣資料館の向かいに建っています。
- 西駒屋田村家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
- 文化庁のデータベースは明治後期、1898年から1912年の間の建築としています。2014年(平成26年)に国の登録有形文化財となり、2024年(令和6年)には豊橋市の景観重要建造物にも指定されました。
- 西駒屋田村家住宅主屋の外観で注目すべき点は何ですか?
- 桟瓦葺の切妻屋根を平入で構える構え、床上部正面の出格子、上下両階の軒を支える出桁造の三点です。これらが二川宿の町並みに共通する表構えを形づくっています。
- 西駒屋田村家住宅主屋の写真撮影はできますか?
- 公道からの外観撮影は可能です。住まいとして使われている家なので、窓や屋内にカメラを向けず、敷地内には入らず、狭い旧東海道の通行を妨げないようご配慮ください。
Basic Information
| 名称 | 西駒屋田村家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県豊橋市二川町字中町147-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2014年(平成26年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積195平方メートル、瓦葺 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(外観のみ旧東海道から見学可) |
References
- 国指定文化財等データベース(文化庁):西駒屋田村家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010164
- 国指定文化財等データベース(文化庁):西駒屋田村家住宅土蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010165
- 文化遺産オンライン:西駒屋田村家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/210087
- 豊橋市:景観重要建造物と景観重要樹木
- https://www.city.toyohashi.lg.jp/45850.htm
- 豊橋市:二川宿のまちづくり景観形成地区
- https://www.city.toyohashi.lg.jp/45844.htm
- 豊橋市:豊橋ウェブ百科事典「二川宿」
- https://www.city.toyohashi.lg.jp/33980.htm
最終更新日: 2026.09.02