野間埼灯台 ― 1世紀を越えて光り続ける愛知県最古の灯台

知多半島が伊勢湾へと張り出す岩礁の上に、ほっそりとした白い塔が立っている。野間埼灯台、地元では「野間灯台」の名で親しまれる灯台である。高さは18メートルと、海岸の大型灯台に比べれば決して大きくはない。それでもこの塔には静かな特別さがある。愛知県で現存する最も古い灯台でありながら、いまも本来の役目を果たし続けているのだ。

初点灯は大正10年(1921年)3月1日。冨具崎港のすぐ南、美浜町の岩礁に建ち、足元まで歩いて近づける位置にある。平面は円形で、壁は無筋コンクリートで築かれている。専門的に聞こえる言葉だが、その珍しさはここにある。多くのコンクリート建築が内部に鉄筋の骨組みを隠し持つのに対し、野間埼灯台には鉄筋がない。壁そのものが塊として自らの重さを支えるため、下部の壁厚は約0.92メートルと厚く、外径は3.8メートルほど。塔の内部は五層に分かれている。

登録有形文化財となった理由

野間埼灯台は令和4年(2022年)6月29日、国の登録有形文化財に登録された。ここで一点補足しておきたい。日本では歴史的な建造物を二つの枠組みで守っている。国宝や重要文化財といった「指定」文化財は最も強い法的保護と厳しい監督を受ける。一方の「登録」文化財は、平成8年(1996年)に始まった比較的緩やかな仕組みで、国土の歴史的景観に寄与する建物を所有者の自由度を残しながら認める制度である。野間埼灯台はこの基準に沿って登録された。つまり国宝や重要文化財ではなく、登録有形文化財という位置づけになる。

登録の決め手は二つある。一つは持続性である。令和3年(2021年)に建設100年を迎えてなお、引退した記念物ではなく現役の航路標識として働き続けている点だ。もう一つは、その造りである。この時期の無筋コンクリート造の塔で現存するものは数少ない。近くで見ると、灯室を支える持送は端正な幾何学形状に整えられ、その下のハリ板は三角形に切り出されている。規格化される以前の時代に、人の手で選び取られた形である。

訪れたときに見たいもの

多くの人がまず気づくのは、その姿のかたちのよさだろう。子どもが灯台を描くときに思い浮かべるような、白い円柱がガラスの灯室へすぼまっていく素直な輪郭。その飾り気のない愛らしさが、この灯台の魅力の大きな部分をなしている。晴れた日には、海の青と空の青のあいだに、一筆で引いたような明るい白がくっきりと立つ。

訪れるなら午後遅くがよい。湾は西に開いているため、日が水平線へ傾く時間帯には、白い塔が暖かな光を受け、背後の海が色を変えていく。塔の近くにはベンチが置かれ、その移ろいを腰を据えて眺めることができる。

この灯台には、もう一つの顔がある。全国規模の「恋する灯台」プロジェクトに認定され、恋人たちの聖地として知られるようになったのだ。すぐそばには「絆の音色」というモニュメントが立つ。終止線のない五線譜をかたどり、終わらない愛への願いを込めた造形である。カップルはそこに南京錠を掛け、近くの「絆の鐘」を鳴らす。南京錠や記念の証明書は、道沿いの施設で買い求められる。写真愛好家や結婚写真の撮影で訪れる人も多く、晴れた日には湾の人工島にある中部国際空港セントレアへ降りていく飛行機を間近に見られることもある。

知っておきたいのがレンズの来歴である。かつて光を集めていた第5等フレネルレンズは、平成20年(2008年)にLED灯器へ更新された際に役目を終えた。この改修で消費電力は大きく下がり、太陽光発電での運用が可能になった。長く別の場所で保管されていたこの歴史あるレンズは、令和4年(2022年)に美浜へ里帰りし、現在は灯台近くの屋内施設で展示されている。幾重にも重なるガラスの輪を、間近で観察できる。

周辺の見どころとアクセス

野間埼灯台は国道247号沿いに直接面しており、車で訪れやすい海辺の文化財の一つである。道路の山手側に駐車場があり、そこから横断歩道を渡って塔へ向かう。海沿いには地元名物の塩ソフトクリームを出す施設があり、ここで先述のフレネルレンズも見られる。少し離れた豊浜の魚市場は、海の幸を求める人に人気の立ち寄り先だ。

塔の内部はふだん公開されていない。昭和59年(1984年)に無人化されて自動の灯台となり、現役の航路標識であるため、自由に立ち入ることはできない。ただし不定期の一般公開日には、人数を限って内部のらせん階段を登れることがある。階段は幅が狭く急なので、塔に登りたい場合は事前に美浜町の観光情報を確認してほしい。半島へのアクセスは車が最も手軽だが、名鉄で知多方面へ向かい、路線バスを乗り継ぐ方法もある。

Q&A

Q灯台の中に入って登ることはできますか。
A通常はできません。野間埼灯台は現役の自動灯台で、昭和59年(1984年)以来無人化されているため、内部はふだん非公開です。年に数回の特別な一般公開日には、人数を限って狭いらせん階段を登れることがあり、美浜町の観光情報で告知されます。
Qこれは国宝ですか。
Aいいえ。2022年に登録された登録有形文化財です。登録は、重要文化財や国宝といった「指定」の区分よりも緩やかな国の認定で、歴史的景観を豊かにする建物を対象とします。
Q訪れるのに最適な時間帯は。
A午後遅くから夕暮れにかけてです。湾は西に開いているため、日没前の時間には白い塔が色づく空と海を背に映えます。塔の近くのベンチで、その瞬間を待つのもよいでしょう。
Q恋人の聖地と呼ばれる理由や、南京錠とは何ですか。
Aこの灯台は「恋する灯台」プロジェクトに認定されています。そばには五線譜をかたどった「絆の音色」というモニュメントがあり、カップルが南京錠を掛け、小さな鐘を鳴らして末永い愛を願います。南京錠や証明書は道沿いの施設で販売されています。
Qどうやって行きますか。駐車場はありますか。
A灯台は国道247号に面し、道路の山手側に駐車場があります。横断歩道を渡って塔へ向かいます。車が最も手軽ですが、名鉄で知多方面へ向かい、路線バスを乗り継ぐこともできます。

基本情報

名称野間埼灯台(のまさきとうだい)/通称・野間灯台
所在地愛知県知多郡美浜町大字小野浦字岩成20-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 23-0579
登録年月日令和4年(2022年)6月29日
建設大正10年(1921年)、初点灯は同年3月1日。平成11年(1999年)改修の記録あり。平成20年(2008年)にLED灯器へ更新。
構造・形式無筋コンクリート造、内部五層。高さ18メートル、下部外径3.8メートル、壁厚0.92メートル、建築面積6.7平方メートル
員数1基
所有者第四管区海上保安本部(国)
公開状況外観は自由に見学可。内部は通常非公開で、不定期の一般公開日のみ入場可

References

文化庁 国指定文化財等データベース(野間埼灯台)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014245
文化庁 近代の文化遺産の保存と活用(野間埼灯台)
https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/031/index.html
Aichi Now 愛知県公式観光サイト(野間灯台)
https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/115/
美浜町観光協会(野間埼灯台・絆の鐘・絆の音色)
https://aichi-mihama.com/spot/nomasakitodai/
恋する灯台プロジェクト 公式サイト(野間埼灯台)
https://romance-toudai.uminohi.jp/toudai/nomasaki.html

最終更新日: 2026.06.17