貨車を回すための小さな転車台
旧国鉄武豊港駅転車台(きゅうこくてつたけとよみなとえきてんしゃだい)は、愛知県知多郡武豊町の旧武豊港駅構内に残る昭和2年(1927年)の鉄製転車台で、平成21年(2009年)1月8日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。直径は7.5メートル。文化庁の国指定文化財等データベースは種別を「交通」「その他工作物」とし、登録基準を「再現することが容易でないもの」としている。
転車台と聞いて思い浮かぶのは、扇形機関庫の前で蒸気機関車を回す大きな円形の装置だろう。旧国鉄武豊港駅転車台はそれとは用途が違う。回したのは機関車ではなく貨車である。武豊町の広報は、狭い用地で貨車の向きを変えるために国鉄が昭和2年2月に設置したものと説明している。
衣浦湾に面したこの一帯は、かつて武豊港駅の構内だった。港で荷を受け、線路に載せ替えて内陸へ送り出す。そのための施設が並んでいた場所である。
直角に交わる2本のレール
旧国鉄武豊港駅転車台がほかと決定的に違うのは、桁の載せ方である。文化庁データベースの解説によれば、長さ7.3メートルの上路式プレートガーダー2基を、それぞれの中央部で直交させてある。上から見ると、線路が十文字に交わる形になる。
荷重は2か所で受ける。円の中心にある半球形の支承と、桁の両端に付く車輪である。中心で受け、端で転がす。それだけの仕組みで貨車1両を載せた台が回る。
一般的な転車台は線路が1本しか載らない。台を回して貨車の向きを変え、また戻す。2本を直角に組んだこの方式なら、90度回すだけで別方向の線路へ送り出せる。作業の手数が減り、限られた敷地でも入換がまわる。
文化庁データベースは、この直角2線式について全国的にも残存例が少ないと記す。武豊町の広報はさらに踏み込み、全国でもここでしか見られない鉄道技術史上の産業遺産と説明している。登録基準が「再現することが容易でないもの」であることも、この希少性と結びついている。
旧国鉄武豊港駅転車台は平成14年(2002年)に改修を受けた。
転車台ポケットパークで見る
現在、旧国鉄武豊港駅転車台は武豊町が所有し、転車台ポケットパークという小さな公園の中心に据えられている。武豊町の広報によれば、この公園は平成19年(2007年)4月1日に開園し、面積は634平方メートル。武豊町地域交流センターの西に隣接している。愛称は「回転ポッポ台」という。
公園には転車台のほか、モニュメント、電車の遊具、トイレ、ベンチ、東屋、水飲み、駐車場が置かれている。クルメツツジ、キフクリンマサキ、芝、サクラが植えられており、春は桜の下で鉄の構造物を眺めることになる。
見るべきは、直径7.5メートルという寸法そのものである。機関車用の転車台は20メートルを超えるものが珍しくない。その3分の1ほどの円が、貨車1両を回すのに必要だった大きさということになる。桁が中央で交差する位置に立って上から見下ろすと、十字の形が把握しやすい。
もうひとつ、鋼板を組み立てて桁とするプレートガーダーの造りにも目を向けたい。溶接ではなくリベットで板と山形鋼をつないでいく時代の産物である。
旧国鉄武豊港駅転車台の見学と行き方
屋外の公園に置かれているため、旧国鉄武豊港駅転車台は見学時間の定めがなく、料金もかからない。写真撮影も自由である。ただし公園の性質上、周囲には遊具で遊ぶ子どもがいることを想定しておきたい。
公共交通ではJR武豊線の武豊駅が使える。武豊町の説明によれば、かつて線路は武豊駅から港へ向かって約1キロメートル先の武豊港駅まで続いていた。その線路跡が現在は後田ポケットパークという桜並木の園路になっており、国道247号を越えた先が転車台のある場所になる。歩いて15分ほどを見ておくとよい。名鉄河和線の知多武豊駅からもほぼ同じ距離である。
車の場合、公園に駐車場がある。国道247号の里中付近が目印になる。
所在地の表記には揺れがある。文化庁データベースは「武豊町字道仙田9-8」、武豊町の公式ページは「武豊町字忠白田地内」としており、隣接する字の境界付近に位置することによる。同じ場所を指している。
Q&A
- 旧国鉄武豊港駅転車台の見学に料金や予約は必要ですか。
- 不要です。転車台ポケットパークという屋外の公園に置かれているため、料金も予約もなく、見学時間の定めもありません。
- 旧国鉄武豊港駅転車台へは駅から歩いて行けますか。
- 行けます。JR武豊線の武豊駅から旧武豊港駅までは約1キロメートルで、徒歩15分ほどです。名鉄河和線の知多武豊駅からもほぼ同じ距離になります。
- 旧国鉄武豊港駅転車台は何が珍しいのですか。
- 2本のレールが直角に交わる直角2線式である点です。長さ7.3メートルのプレートガーダー2基を各中央部で直交させた構造で、文化庁は全国的にも残存例が少ないとしています。
- 旧国鉄武豊港駅転車台は機関車用ですか。
- 貨車用です。直径7.5メートルは機関車用の転車台よりかなり小さく、狭い用地で貨車の向きを変えるために昭和2年(1927年)に設置されました。
- 旧国鉄武豊港駅転車台の周辺に駐車場やトイレはありますか。
- あります。転車台ポケットパークには駐車場、トイレ、ベンチ、東屋、水飲み、電車の遊具が整備されています。
基本データ
| 名称 | 旧国鉄武豊港駅転車台(きゅうこくてつたけとよみなとえきてんしゃだい) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県知多郡武豊町字道仙田9-8 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成21年(2009年)1月8日登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 直径7.5メートル、プレートガーダー長さ7.3メートル |
| 所有者 | 武豊町 |
| 公開状況 | 転車台ポケットパーク内で常時見学可。料金なし、撮影可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「旧国鉄武豊港駅転車台」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007504
- 文化遺産オンライン「旧国鉄武豊港駅転車台」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/183716
- 武豊町「旧国鉄武豊港駅転車台」
- https://www.town.taketoyo.lg.jp/chousei/1001538/1001551/1002276/1003783/1002274.html
- 武豊町「武豊のみどころ・観光」
- https://www.town.taketoyo.lg.jp/chousei/1001538/1001552/1002350.html
- 広報たけとよ 第1052号(2018年9月15日)「転車台ポケットパーク」
- https://www.town.taketoyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/745/30.09.15_18.pdf
最終更新日: 2026.09.01