銀行より長生きした銀行建築
旧秋田銀行本店本館は、秋田県秋田市大町にある明治45年(1912年)竣工の煉瓦造二階建の建築で、平成6年(1994年)12月27日に国の重要文化財に指定された。市民には「赤れんが館」の通称で知られ、昭和60年(1985年)から秋田市立赤れんが郷土館の本館として使われている。
着工は明治42年(1909年)。完成まで三年を要した。秋田銀行は明治初期に設立された国立銀行を前身とし、明治末期には県内における地位にふさわしい本店を求めていた。大町の角地に建ち上がったのは、煉瓦造二階建、銅板葺の屋根をもつ建物だった。文化庁の記録には、南面および北面に煉瓦塀が附属することも記されている。
銀行としての役目を終えたのは早い。昭和56年(1981年)、秋田銀行創業100周年を機に建物は秋田市へ寄贈された。市は修復を施し、昭和60年に一般公開を開始している。訪れる際にはこの経緯を頭に入れておくとよい。目にするのは復元された内装ではなく、銀行として使われていた空間そのものである。
指定の理由と設計者
文化庁の国指定文化財等データベースは、この建物を指定番号02307、種別「近代/商業・業務」として登録し、重要文化財指定基準の第一号「意匠的に優秀なもの」を適用理由に挙げている。構造の希少性でも、古さでもない。意匠である。
その理由は設計者を知ると腑に落ちる。外部の設計は当時の秋田県技師・山口直昭が担当し、ルネサンス様式を基調とした。内部の設計は星野男三郎の手によるもので、こちらはバロック様式を取り入れている。ひとつの建物に、二人の設計者と二つの様式が同居している。明治期の日本の建築家たちが欧州の様式を急速に吸収していった時代にあって、地方の銀行建築がこれだけの自信をもって仕上げられた例は多くない。
外観は紅白の対比で読める。土台は男鹿半島から切り出された男鹿石。1階は白い磁器タイル、2階は赤煉瓦で仕上げられている。道路の向かい側に立って眺めると、この上下の色分けが正面の印象をほぼ決めていることがわかる。
建立の年紀や関係者名を記した棟札2枚が、附(つけたり)として建物とともに指定されている。
館内で見ておきたいところ
予定より長く滞在してしまう原因は、たいてい旧営業室にある。屋根をトラス工法で支えることで、二階まで届く吹抜けの大空間が確保された。上階には回廊がめぐる。天井は一面の石膏レリーフ。各所に漆喰や木彫の装飾があり、造作には数種の大理石が使われている。回廊から見下ろせば、かつて行員が並んでいたカウンターの線がそのまま残っている。
館内には暖炉が三か所あり、それぞれ意匠が異なる。旧頭取室のものは紅縞石と薄雲石で組まれており、二種の石の色味の違いは写真より実物のほうがはるかにわかりやすい。
旧金庫室は時間をかけて見たい。鋼鉄製の扉、鋼鉄製の窓、そして銀行時代に実際に稼働していた大金庫が据えられている。隣接する旧書庫は昭和初期に金庫室とともに増築された部屋で、現在は銀線細工をはじめとする秋田市の伝統工芸品の展示に充てられている。
階段では足元に目をやってほしい。踏面に使われているのは国産の白大理石で、地方銀行の建築としては贅沢な選択である。2階廊下には、明治期の秋田市街を写した写真パネルが並ぶ。
装飾がもっとも密度を増すのが旧貴賓室だ。格天井、寄木張の床、けやきの扉には象嵌が施される。壁を覆う柿渋染めのクロスには、月桂冠をかたどった模様が手描きで入れられている。
赤れんが館2階には、鍛金の重要無形文化財保持者(人間国宝)・関谷四郎の記念室が設けられ、自宅アトリエが再現されている。隣接する新館には木版画家・勝平得之の記念館があり、企画展も随時開かれる。
訪問の実務
観覧時間は午前9時30分から午後4時30分まで、入館は午後4時15分まで。竿燈まつり期間の8月3日から6日は午後7時まで延長される。休館は年末年始(12月29日から1月3日)と、不定期の展示替え期間。遠方から向かう場合は事前に電話で確認しておくと確実である。
観覧料は一般310円、高校生以下は無料。秋田市民俗芸能伝承館および旧金子家住宅との共通観覧料は370円、年間パスポートは770円。20人以上の団体には割引がある。クレジットカード、電子マネー、コード決済にも対応している。
「赤れんが郷土館ボランティアの会」による館内解説を無料で受けられるが、会員は常駐していない。希望する日の3日前までに電話(018-864-6851)で申し込む必要がある。
アクセスは分かりやすい。JR秋田駅西口から徒歩約15分。千秋公園や旭川沿いを通る道筋なので、距離のわりに歩きやすい。路線バスも利用できる。
撮影については、建築部分と展示作品とで扱いが異なる場合があるため、受付で確認してから始めるとよい。よくある質問なので、係員はすぐに答えてくれる。
Q&A
- 旧秋田銀行本店本館は見学できますか。観覧時間と観覧料は?
- 秋田市立赤れんが郷土館の本館「赤れんが館」として公開されています。観覧時間は午前9時30分から午後4時30分(入館は4時15分まで)、観覧料は一般310円、高校生以下は無料です。共通観覧料370円で秋田市民俗芸能伝承館と旧金子家住宅も見学できます。
- 旧秋田銀行本店本館はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されましたか?
- 明治42年(1909年)着工、明治45年(1912年)竣工です。重要文化財への指定はかなり後の平成6年(1994年)12月27日で、指定番号は02307です。
- 旧秋田銀行本店本館の設計者は誰ですか?
- 外部と内部で設計者が分かれます。外観は秋田県技師の山口直昭がルネサンス様式で、内装は星野男三郎がバロック様式で設計しました。文化庁は指定理由として「意匠的に優秀なもの」を挙げています。
- 秋田駅から旧秋田銀行本店本館まではどう行きますか?
- JR秋田駅西口から大町方面へ徒歩約15分です。千秋公園や旭川沿いを抜ける道筋で、路線バスも利用できます。
- 旧秋田銀行本店本館でガイドの解説を聞くことはできますか?
- ボランティアの会による館内解説を無料で受けられます(観覧料は別途必要)。ただし常駐ではないため、希望日の3日前までに電話018-864-6851で申し込んでください。
基本情報
| 名称 | 旧秋田銀行本店本館(あきたぎんこうほんてんほんかん) |
|---|---|
| 所在地 | 秋田県秋田市大町三丁目3番21号 |
| 指定区分 | 重要文化財(近代/商業・業務)指定番号02307 |
| 指定年 | 平成6年(1994年)12月27日 |
| 員数 | 1棟(附:棟札2枚) |
| 寸法 | 煉瓦造二階建、建築面積475.82平方メートル、銅板葺、南面および北面煉瓦塀附属 |
| 所有者 | 秋田市 |
| 公開状況 | 秋田市立赤れんが郷土館「赤れんが館」として公開(9:30〜16:30、一般310円) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「旧秋田銀行本店本館」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/150
- 秋田市「赤れんが館(旧秋田銀行本店本館)について」
- https://www.city.akita.lg.jp/kanko/kanrenshisetsu/1003617/1009785/1002316.html
- 秋田市「観覧のご案内」(秋田市立赤れんが郷土館)
- https://www.city.akita.lg.jp/kanko/kanrenshisetsu/1003617/1002325.html
- 秋田市立赤れんが郷土館 勝平得之記念館
- https://www.city.akita.lg.jp/kanko/kanrenshisetsu/1003617/index.html
最終更新日: 2026.08.11