新利根の平野に建つ茅葺の広間型民家

平井家住宅は、茨城県稲敷市柴崎155番地にある江戸時代中期の茅葺民家で、昭和51年(1976年)2月3日に重要文化財に指定された。

指定名称の末尾には「(茨城県稲敷郡新利根村)」と付く。指定当時の自治体名である。新利根村は平成17年(2005年)に合併して稲敷市の一部となったが、指定名称はそのまま残された。資料によって地名が二通り現れるのはこのためだ。

文化庁の記載は1棟。桁行20.2メートル、梁間10.7メートル、寄棟造茅葺で、西面北端に便所が附属する。平面は直屋(すごや)、すなわち張り出しのない一続きの矩形で、この地域の民家によく見られるL字形の輪郭を持たない。

年代については資料が分かれており、本稿は両論を併記する。国の台帳は元禄年間、1688年から1703年頃としており、元禄十年代の棟札があったと伝えられることを根拠に置く。稲敷市の見方は異なる。建築構造が古いこと、平井家先祖の記録、新利根川が開削された時代背景から、寛文年間(1661年以降)にはすでに建っていたと考えられ、土間は元禄頃に増築されたとみる。どちらも確定した話ではない。

平井家住宅が指定された理由

平井家住宅は昭和51年(1976年)2月3日、変形広間型民家の遺例として重要文化財に指定された。この型は茨城県南部から千葉県北部にかけての帯状の範囲に分布する。

広間型は、床上部を小部屋に細かく割らず、中心に大きな一室を据える間取りである。変形広間型はその構えに手を加えたもので、この地域では珍しくない。数が多いということは、一軒が指定を受けるにはそれなりの理由が要るということでもある。文化庁の記述は明快で、同型の民家のなかでもきわめて質が良く、仕上げが丁寧だとしている。年代の古さではなく大工仕事への評価である。

もちろん古さも効いている。稲敷市は平井家住宅を関東地方では屈指の古さの民家と説明し、それを昭和51年の指定の理由として挙げる。17世紀にさかのぼる住宅は東日本にほとんど残っていない。家が栄えれば建て替えられ、焼ければ新築されるからである。

平成13年(2001年)から平成15年(2003年)にかけて、建物は全体を解き、組み直す大規模な修復工事を受けた。この種の工事は、建ったままでは答えの出ない問いを解く。仕口も転用材もすべて目に見えるようになるからだ。稲敷市が公表する寸法が国の台帳とわずかに食い違うのもこのためで、市は修復後の建物規模を間口19.2メートル、奥行9.7メートル、平面積約182平方メートルとしている。

現地で見るべきところ

平面はほぼ矩形で、その形が崩れる一か所を探す価値がある。土間の東側は北半分が壁の線を越えて張り出しており、そこにカマドが据えられている。この種の張り出しは意匠ではなく実務の産物で、火と煙を床上の部屋から遠ざけつつ、竈を主室の手の届く範囲に置いている。

土間に入ったら柱を見上げたい。稲敷市は、この部分を増築した際に太い欅(ケヤキ)の柱を入れたと記している。欅は民家の骨組みに多い松や栗とは見え方が違う。硬く、色が濃く、木目が粗くて落ち着かず、長手方向に光を拾う。

屋根は矩形全体を一枚の茅葺が覆う。張り出しがあれば生じるはずの谷や棟の切れ目がない。近づいてくる道から見ると、平井家住宅はこの年代の民家としては珍しいほど長い一連の斜面を見せ、軒の線は建物の20.2メートルをほぼ端から端まで走る。

修復では、元禄頃に到達していたと考えられる形に内部が戻された。したがって今建っているのは、手つかずの遺構ではなく判断を経た復原である。後世の付加と判断された部材は外された。その決断の跡は部屋の素っ気なさに現れている。20世紀に住みやすくするために入れられた天井板や造作建具が、ここにはない。

平井家住宅の見学方法

平井家住宅は見学できるが、事前の予約が要る。常駐の職員がいるわけではないため、稲敷市は入館を希望する人に電話(0297-87-3626)での事前予約を求めている。入館料は1名200円。12月29日から1月4日までは見学を行っていない。

現地へは車が要る。柴崎は旧新利根地区にあたり、新利根川と利根川に挟まれた田の広がるなかに位置する。最寄り駅はJR常磐線の龍ケ崎市駅(旧・佐貫駅)で、タクシーで約20分。現地を通るバス路線はない。

平井家住宅の入館は管理者を通す形なので、撮影の可否も予約の電話で一緒に確認しておくのが確実である。外観を敷地の外から撮る分には差し支えない。内部は光が乏しく、明かりは入口と土間から入るものが主になる。フラッシュより明るいレンズのほうが役に立つが、そのフラッシュ自体も先に断りを入れるべきものである。

Q&A

Q平井家住宅の内部は見学できますか。入館料は?
A予約すれば見学できます。稲敷市は電話(0297-87-3626)での事前予約を求めています。入館料は1名200円で、12月29日から1月4日までは見学を行っていません。
Q平井家住宅へはどう行けばよいですか?
A車かタクシーです。最寄りはJR常磐線の龍ケ崎市駅(旧・佐貫駅)で、タクシーで約20分。柴崎を通るバス路線はありません。
Q平井家住宅はいつ建てられたのですか?
A文化庁は元禄年間、1688年から1703年頃としています。稲敷市は主体部が寛文年間(1661年以降)にさかのぼる可能性を示し、土間は元禄頃の増築とみています。両説は整理されていません。
Q平井家住宅はどのような形式の民家ですか?
A茨城県南部から千葉県北部に分布する変形広間型の民家で、L字形ではなく一続きの矩形をなす直屋です。桁行20.2メートル、梁間10.7メートル、寄棟造の茅葺屋根を持ちます。
Q平井家住宅は修復されているのですか?
A平成13年(2001年)から平成15年(2003年)にかけて解体修復が行われ、元禄頃と考えられる姿に戻されました。稲敷市は修復後の規模を間口19.2メートル、奥行9.7メートル、平面積約182平方メートルとしています。

基本情報

名称平井家住宅(茨城県稲敷郡新利根村)
所在地茨城県稲敷市柴崎155番地
指定区分重要文化財
指定年昭和51年(1976年)2月3日
員数1棟
寸法桁行20.2メートル、梁間10.7メートル
所有者個人
公開状況電話(0297-87-3626)での事前予約により見学可。入館料1名200円。12月29日から1月4日は休み

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「平井家住宅(茨城県稲敷郡新利根村)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/263
稲敷市「平井家住宅」
https://www.city.inashiki.lg.jp/page/page000055.html
文化遺産オンライン「平井家住宅(茨城県稲敷郡新利根村)」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/188103
茨城県教育委員会「平井家住宅」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/kuni-19/

最終更新日: 2026.09.06