銅板屋根の下の畳の部屋
旧植竹庄兵衛家住宅和館は、茨城県稲敷市江戸崎字大日久保にある昭和12年(1937年)建築の木造平屋建で、平成19年(2007年)10月2日に登録有形文化財(建造物)として登録された。洋館のすぐ西側に建ち、南の庭に正面を向ける。建築面積は94平方メートル、平面は桁行6間、梁間5間(1間は約1.8メートル)。
まず目が行くのは屋根である。入母屋造で、葺材は瓦ではなく銅板。勾配には、大工が起りと呼ぶゆるやかな凸のふくらみが与えられている。瓦であれば重く、線も平坦になっただろう。銅板だからこの緩い曲線を保てた。年月を経て鈍い緑に落ち着いた屋根は、隣に立つ洋館の目地を切った白い壁と、静かな対をなしている。
内部は3室で、10畳の部屋が2室と6畳間が1室。正面と両側面の三方には縁廊下が廻り、座敷へは磨かれた板の間を一枚はさんでから入ることになる。庭へ直接開かない。訪れる者の足を一度止めさせる構えで、そこに意味がある。
内部の造作が評価された登録
旧植竹庄兵衛家住宅和館の登録番号は08-0224。洋館(08-0223)、土蔵(08-0225)と同じ日に、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録有形文化財に登録された。
公式の解説は、この建物については外観よりも内部に紙幅を割いている。座敷飾り、折上格天井、そして欄間に入れられたステンドグラスを挙げ、内部は凝った意匠になると結ぶ。輪郭ではなく手仕事についての評価であり、この建物が記録にとどまらず登録に至った理由もそこにある。
稲敷市は登録当時、主要な座敷に何が備わっているかを列挙している。床の間と床脇、造り付けの付書院、壁を巡る長押、折上格天井、そして欄間。暖炉と煙突を持つ住宅のなかに、正式な接客の間の語彙が一式そろっていることになる。市がとりわけ注目すべきだとしたのは欄間のステンドグラスで、輸入品ではなく和製のステンドグラスであると説明している。移入ではなく折衷である、という点がここにかかっている。
旧植竹庄兵衛家住宅和館で見ておきたいところ
座敷に腰を下ろす機会があれば、まず見上げてほしい。折上格天井は、格子の縁が壁に取り付く手前で一段せり上がり、天井面が部屋から浮いて見える。格の数を数えるのもよいが、見どころは持ち上がる部分に落ちる影の線である。
次に欄間へ目を移す。ステンドグラスは教会のもの、階段室のもの、つまり隣の洋館が引用している側の語彙に属する。それが、本来なら透かし彫りの板が納まる襖の上の枠へ嵌め込まれている。落ちる光は午後のうちに色を変えていく。二つの伝統がぶつかる瞬間を、これほど短く言い切っている場所は敷地内にほかにない。
帰りぎわに縁廊下を歩きたい。正面から両側へと折れて続く廊下からは、庭が額縁越しの景色ではなくひと続きの構成として見える。庭の隅まで下がって屋根を振り返れば、銅板の起りが空を背景にいちばん読み取りやすい。旧植竹庄兵衛家住宅和館の西北隅には土蔵が接しており、西側の縁廊下とつながる箇所も、回るついでに探しておきたい。
旧植竹庄兵衛家住宅和館の見学方法
旧植竹庄兵衛家住宅和館は私有の建物で、文化庁のデータベースは所有者を株式会社ミトモサービスとする。常設の開館時間はない。大日苑と呼ばれるこの敷地は、登録以降、地元のNPO法人稲敷伝統文化保存会が関わって手入れされてきた。稲敷市は登録を伝えた際、この団体の電話番号を問い合わせ先として案内している。見学したい場合は、前もって電話で相談するのが通例である。公開は不定期で、貸切や撮影の日は閉じられる。出かける前に確認し、内部に入れるかどうかも当日の前提にはせず、あらかじめ確かめてほしい。
撮影の可否は管理者の判断による。敷地のなかでも畳の部屋は、頼むときにいちばん事情の説明を求められる場所だと考えておきたい。電話の際に一緒に伝えておくのがよい。靴下は用意しておきたい。縁廊下と座敷は履物を脱いで上がる。
稲敷市内に鉄道駅はない。一般的な行き方はJR常磐線で土浦へ出て、JRバス関東の霞ヶ浦線に乗り換え、江戸崎まで約45分。江戸崎坂上バス停から徒歩約3分である。車なら圏央道稲敷インターチェンジで降り、門の内側に駐車する。
Q&A
- 旧植竹庄兵衛家住宅和館の内部は見られますか。
- 事前の相談が必要です。私有の建物で、大日苑の敷地は不定期の公開です。管理する地元の保存団体へ出発前に連絡し、当日に座敷まで入れるかどうかを確認してください。
- 旧植竹庄兵衛家住宅和館のステンドグラスとはどのようなものですか。
- 襖の上の欄間に嵌め込まれた色ガラスの建具で、本来なら透かし彫りの板が入る位置にあります。稲敷市はこれを和製のステンドグラスと説明し、内部でもっとも注目すべき点として挙げています。
- 旧植竹庄兵衛家住宅和館には何室ありますか。
- 3室です。10畳の部屋が2室と6畳間が1室で、正面と両側面に縁廊下が廻ります。建築面積は94平方メートルです。
- 旧植竹庄兵衛家住宅和館はいつ登録されましたか。
- 平成19年(2007年)10月2日、登録番号08-0224として登録されました。同じ住宅の洋館・土蔵も同日です。建設年代は昭和12年(1937年)です。
- 旧植竹庄兵衛家住宅和館へはどう行けばよいですか。
- 稲敷市内に鉄道駅はありません。JR常磐線土浦駅からJRバス関東霞ヶ浦線で江戸崎まで約45分、江戸崎坂上バス停から徒歩約3分です。車では圏央道稲敷インターチェンジを利用します。
基本情報
| 名称 | 旧植竹庄兵衛家住宅和館 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県稲敷市江戸崎字大日久保甲2354 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0224 |
| 指定年 | 2007年10月2日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積94平方メートル 桁行6間、梁間5間 平屋建、銅板葺 |
| 所有者 | 株式会社ミトモサービス |
| 公開状況 | 常時公開ではない。見学は管理者への事前連絡による |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧植竹庄兵衛家住宅和館
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006436
- 文化遺産オンライン 旧植竹庄兵衛家住宅和館
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/197429
- 茨城県教育委員会 いばらきの文化財 旧植竹庄兵衛家住宅洋館ほか2棟
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6077/
- 稲敷市 広報稲敷 平成19年8月号(No.029)
- https://www.city.inashiki.lg.jp/data/doc/1254669620_doc_2.pdf
- 稲敷市 交通アクセス
- https://www.city.inashiki.lg.jp/page/page000119.html
最終更新日: 2026.09.06