名主の屋敷に建つ明治中期の茅葺民家

小澤家住宅主屋は、茨城県稲敷郡美浦村大字大谷にある明治時代中期の民家で、平成21年(2009年)に国の登録有形文化財となった建物である。敷地の後方に南北棟で建ち、寄棟造の大きな茅葺屋根が建築面積168平方メートルの平屋を覆う。

小澤家は近世に大谷村の名主を務めた家である。その役目は間取りに残った。東面の北端には入母屋造式台が張り出す。間口は2間、約3.6メートル。式台は公務のための出入り口で、当時の一般の民家には設けられなかったものである。

木造、平屋、茅葺。台帳の記載はそれだけだが、正面に立つと数字にならない部分が目につく。屋根が立面の大半を占めているため、その下の壁が土台のように低く見える。

なぜ国の登録有形文化財になったのか

小澤家住宅主屋の登録番号は第08-0230号、登録年月日は平成21年(2009年)1月8日である。登録基準は「造形の規範となっているもの」。同じ敷地の米蔵と表門も同じ日に登録されているが、そちらは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という別の基準による。主屋はつくりそのものが評価されたことになる。

登録は指定とは別の制度で、登録有形文化財は届出制のゆるやかな保護のもとで使われ続けることを前提としている。住まいのまま登録されている建物が珍しくないのはそのためである。

かつて美浦村内には草屋根の民家が多かった。建築当時の姿を保つものは今では小澤家住宅だけになったと、美浦村文化財センターは記録している。

式台まわりと座敷、そして冬に葺き替えられた屋根

小澤家住宅主屋の式台は出桁造で、梁の先を壁面から持ち出して桁を受ける。垂木は隅から扇状に広がる扇垂木である。奥には次の間、座敷と続き、座敷には床の間、違棚、付書院の座敷飾りがそろう。欄間の彫りは民家としては細かく、襖のなかには銀箔を貼ったものがある。

屋根には近年手が入った。令和5年(2023年)12月から令和6年(2024年)2月にかけて、日当たりが悪く傷みの激しかった北面と西面の茅を葺き替えている。費用の一部には公益財団法人東日本鉄道文化財団の地方文化事業支援があてられた。工事前の記録には、北面の屋根に木が生え、土壌化した茅からカブトムシの幼虫が出たことが書かれている。

軒を見上げると層が縞に見える。軒付けにはイナワラ、シマガヤ、杉皮が使われ、雨水の垂れ落ちる軒先には硬いヨシが入る。種類の違う茅が段になって現れるこの見え方を通し屋根と呼び、県南地域では筑波流とも称される。

見学の可否とアクセス

小澤家住宅主屋は非公開である。個人の敷地内にあり所有者が現在も居住しているため、美浦村は普段は見学できないと明記している。拝観料の設定も見学者用の入口もなく、敷地に立ち入ることはできない。

公道からは樹木の上に茅葺の棟が見え、門も遠目に確認できる程度である。公開していない以上、撮影についての取り決めも公表されていない。住まいであることを前提に、住人や敷地の内側にカメラを向けない配慮が要る。葺き替え工事の際に村内の小学生が屋根を見学した例はあるので、調査などで見学を希望する場合は美浦村文化財センター(陸平研究所、電話029-886-0291)に相談するのが確実である。

美浦村に鉄道駅はない。最寄りはJR常磐線の土浦駅で、西口からJRバス関東の霞ヶ浦線江戸崎行きに乗り、約35分の「大谷」で降りる。自動車で向かう場合も、この住所に用意された駐車場はない。

Q&A

Q小澤家住宅主屋の内部は見学できますか。
Aできません。所有者が居住する個人の住宅で、美浦村も普段は見学できないと案内しています。拝観の受付はなく、敷地内にも立ち入れません。
Q小澤家住宅主屋はいつごろの建物で、どのくらいの大きさですか。
A明治時代中期の建築です。木造平屋建で寄棟造の茅葺屋根をもち、建築面積は168平方メートルあります。
Q小澤家住宅主屋の茅葺屋根はいつ葺き替えられましたか。
A令和5年(2023年)12月から令和6年(2024年)2月にかけて、北面と西面が葺き替えられました。公益財団法人東日本鉄道文化財団の助成を受けた事業で、屋根全体ではなく傷みの激しい部分の工事です。
Q小澤家住宅の式台玄関にはどんな意味がありますか。
A公務の来客を迎えるための格式ある出入り口です。当時の一般の民家には設けられないもので、小澤家が名主を務めた家であることを示しています。
Q小澤家住宅主屋のある美浦村大谷へはどう行きますか。
AJR常磐線の土浦駅からJRバス関東の霞ヶ浦線江戸崎行きに乗り、約35分の「大谷」で下車します。村内に鉄道駅はありません。

基本情報

名称小澤家住宅主屋(おざわけじゅうたくしゅおく)
所在地茨城県稲敷郡美浦村大字大谷
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2009年(平成21年)登録
員数1棟
寸法建築面積168平方メートル、木造平屋建、寄棟造茅葺
所有者個人
公開状況非公開。個人の住宅として使用されており、敷地内に立ち入ることはできない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「小澤家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007450
茨城県教育委員会「いばらきの文化財」小澤家住宅主屋ほか2棟
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6066/
美浦村「文化財の紹介」
https://www.vill.miho.lg.jp/kankou-event/minohobunkazai/bunkazai-syoukai/page000462.html
美浦村文化財センター「OKADAIRA」第117号(草屋根葺き替えの記録)
https://www.vill.miho.lg.jp/data/doc/1709111855_doc_1_0.pdf
美浦村「美浦村へのアクセス」
https://www.vill.miho.lg.jp/page/page000265.html

最終更新日: 2026.09.06