重信川上流を横切る花崗岩の壁
除ケの堰堤は、愛媛県東温市山之内の重信川上流に築かれた石造及びコンクリート造の砂防堰堤で、昭和10年(1935年)に完成し、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。主堰堤は谷を堤長115メートルにわたって塞ぎ、堤高は12メートル。その下流側に堤長92メートルの副堰堤が控える。
工事は請負ではなく愛媛県の直営で行われた。昭和7年(1932年)10月に着工し、901日を費やして2基を仕上げている。表面はいずれも瀬戸内の島々で切り出した花崗岩で積まれ、その数は17000個あまりに達する。この堰堤は、以後の重信川砂防の手本となった。
目的ははっきりしていた。最上流部の荒廃が土砂を生み、流路が短く勾配の急な川がそれを道後平野へ運び下ろす。除ケの堰堤は、その土砂を谷の高いところで受け止めるために築かれた。完成から90年近く経った今も、役目は変わっていない。
除ケの堰堤が登録された理由
文化庁は平成13年(2001年)8月28日、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準により、この堰堤を1基の登録有形文化財として登録した。評価の軸は珍しさよりも残り方にある。石積みが良好な状態で保たれ、そこに当時の施工技術の水準が読み取れるという点である。登録有形文化財の制度は住宅や社寺だけでなく土木構造物にも及ぶが、愛媛県の登録件数のうち土木構造物が占める割合は小さい。
建設史として見ると、この堰堤の性格はわかりやすい。昭和初期に石張りの表面を持たせることは、安価でも手早くもなかった。花崗岩を島から船で運び、谷を遡らせ、一つずつ据えていく。のちの砂防堰堤が無筋のコンクリートで打たれるようになったのは当然の流れで、除ケの堰堤の2基は、公共土木がまだ人の手で石を積むことを前提としていた短い時期の産物にあたる。
石積みの見どころ
除ケの堰堤で最初に目を引くのは堤体の表面である。花崗岩は一段ずつ据えられ、目地が締まっているため、対岸から眺めると壁は一枚の面に見える。ところが一段を目でたどると、石はどれも同じではない。大きさは場所ごとに変わり、規格に合わせるのではなく隣の石に合わせて加工したことがわかる。平常時の水は天端を薄く均一に越え、水叩きに落ちてから副堰堤へ向かう。
訪れる人が多いのは春である。両岸には桜が並び、4月下旬になると地元の有志が川幅いっぱいにロープを渡して鯉のぼりを掲げる。「重信川こいのぼりのかけ渡し」と呼ばれる行事で、鯉のぼりは5月上旬まで泳いでいることが多い。両岸のあいだを埋める鯉の列を見ると、この場所の川幅がどれほどあるかが実感できる。
除ケの堰堤の見学方法
門も料金所もない。除ケの堰堤は山之内大畑乙の62の河川敷にあり、堤防や川岸からいつでも眺められる。近くに駐車場とトイレが整備されている。岸からの撮影に制限はない。ただし現役の県管理施設なので、天端や水叩きには立ち入らないこと。雨のあとは水位が前触れなく上がるため、とくに注意したい。
最寄りの鉄道駅は、松山から伊予鉄道横河原線の終点にあたる横河原駅で、そこから車で約15分谷を遡る。上流方面のバスは便数が少ないので、車かタクシーが現実的である。鯉のぼりを目当てにするなら4月下旬から5月上旬。掲げるのは地域の有志なので、年によって日取りは前後する。
Q&A
- 除ケの堰堤は見学できますか。料金はかかりますか?
- 見学できます。河川敷にあり、川岸からいつでも無料で眺められます。近くに駐車場とトイレがあります。
- 松山から除ケの堰堤へはどう行きますか?
- 伊予鉄道横河原線で終点の横河原駅まで行き、そこから車で約15分です。上流方面のバスは本数が限られるため、車かタクシーの利用が現実的です。
- 除ケの堰堤はいつ、誰が造ったのですか?
- 愛媛県の直営工事として、昭和7年(1932年)10月に着工し、901日をかけて昭和10年(1935年)に完成しました。
- 除ケの堰堤の鯉のぼりはいつ見られますか?
- 例年4月下旬から5月上旬にかけて、地元の有志が川幅いっぱいに掲げます。日程は年ごとに前後するので、東温市観光物産協会に確認してから出かけると確実です。
- 除ケの堰堤はなぜ登録有形文化財なのですか?
- 石積みが良好に残り、建設当時の施工技術の水準を示していること、そして国土の歴史的景観に寄与していることが理由です。平成13年(2001年)の登録で、この堰堤は以後の重信川砂防の手本にもなりました。
基本情報
| 名称 | 除ケの堰堤 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県東温市山之内大畑乙の62 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成13年(2001年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 石造及びコンクリート造、主堰堤は堤長115メートル・堤高12メートル、副堰堤は堤長92メートル |
| 所有者 | 愛媛県 |
| 公開状況 | 河川敷から終日見学可、無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「除ケの堰堤」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002314
- 文化遺産オンライン「除ケの堰堤」
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/115194
- 愛媛県教育委員会 登録文化財「除ケの堰堤」
- https://ehime-c.esnet.ed.jp/bunkazai/kennobunkazai/tourokubunkazai/touroku-kohyo/yokeno.htm
- 一般社団法人東温市観光物産協会「除ケの堰堤」
- https://toon-kanko.jp/yokeno_entei/
最終更新日: 2026.09.06