トンネル群の始まる場所
敦賀から廃線跡を北へ走ると、まず出会う一基が第一観音寺トンネルである。この路線としては短く、延長約82メートル。稜線を抜けながら緩やかに湾曲する。特筆すべきは長さではなく石積みの質で、この先の長大トンネルへ目が移る前に、間近で確かめておきたい。
竣工は明治27年(1894年)、敦賀・福井間の開業に先立つ二年前にあたる。所在は敦賀市横浜、罠山谷暗渠の北約400メートル、木ノ芽峠へ向かう登り勾配の途中に位置する。
石積みを読む
坑門はほぼ左右対称の切石積で、壁柱を付し、全体を江戸切り仕上げの安山岩で築く。江戸切りとは、石面を細かく手斫りで整える仕上げをいう。内部では荷重に応じて材を使い分ける。覆工アーチ部は煉瓦造、側壁は保線員のための待避所アーチを含めて石造とする。石と煉瓦のこの分担は路線全体に共通するが、第一観音寺の坑門はそれをことに端正な形で見せる。
坑口に立てば、その丁寧さがよく分かる。目地は締まり、石の段は揃い、斫りの面が斜光を受けて機械切りにはない陰影を返す。
価値と見学
本トンネルは2016年、旧北陸線の他の構造物とともに登録有形文化財となった。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。その価値は工学的な記録よりも仕事の丁寧さにある。明治の鉄道坑門がどう設計され、どう仕上げられたかを良好に伝える一例である。
旧線跡は現在、車・自転車・徒歩が共用する単線幅の公道である。長いトンネルは信号で交互通行を制御し、内部では前照灯が欠かせない。補修のため区間が閉鎖されることがあるので、出発前に敦賀市の観光協会などで通行状況を確かめておくとよい。
Q&A
- なぜ「第一」観音寺トンネルなのですか。
- 二基のうちの一基だからです。北へ約80メートルの位置に第二観音寺トンネルがあります。同じ区間にある別々の隧道を区別するための名称です。
- 坑門の何が見どころですか。
- 壁柱を付したほぼ左右対称の切石坑門で、全体を江戸切り仕上げの安山岩で築いています。内部の石造側壁と煉瓦アーチの取り合わせも見どころです。
- いつ造られ、いつ登録されましたか。
- 明治27年(1894年)竣工。2016年(平成28年)2月25日に、旧北陸線の他の構造物とともに登録有形文化財となりました。
- 車で通れますか。
- 通れます。旧線は現在公道です。トンネルは単線幅なので、信号を守り、前照灯を点け、内部では停車しないでください。補修で閉鎖されることがあるため、事前に通行可否をご確認ください。
基本情報
| 名称 | 旧北陸線第一観音寺トンネル |
|---|---|
| 所在地 | 福井県敦賀市横浜 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 2016年(平成28年)2月25日登録 |
| 登録番号 | 18-0148 |
| 年代 | 明治27年(1894年) |
| 構造・形式 | 石造及び煉瓦造 延長82m、幅員3.9m |
| 所有者 | 福井県 |
| アクセス | 旧北陸線跡(単線幅の公道)沿い。トンネル内は信号に従うこと。訪問前に通行状況を確認のこと |
参考資料
- Agency for Cultural Affairs, National Cultural Properties Database — First Kannonji Tunnel
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010956
- Tsuruga City Tourism Association — Former Hokuriku Line Tunnels
- https://tsuruga-kanko.jp/spot/history_culture/hokuriku-line-tunnel/
- Fukui Prefecture Official Travel Guide (Fuku-e.com)
- https://www.fuku-e.com/spot/detail_1640.html
最終更新日: 2026.07.09