旧九州帝国大学工学部本館とは

旧九州帝国大学工学部本館は、福岡県福岡市東区箱崎の九州大学箱崎サテライトにある昭和5年(1930年)完成の鉄筋コンクリート造一部鉄骨鉄筋コンクリート造、地上3階地下1階建の校舎で、令和5年(2023年)2月27日に登録有形文化財に登録された。

建築面積は3,152㎡で、中央に塔屋が立つ。設計は建築課長倉田謙と設計技師小原節三、施工は清水組(現在の清水建設)。大学の説明資料によると、昭和3年(1928年)11月に起工し、昭和5年(1930年)11月に落成した。総工費は当時の価格で約89万円で、完成時には福岡市内でもっとも高い建物と紹介されたという。

大正12年(1923年)に焼失した煉瓦造の工科大学本館に代わる建物で、工学部の教官室・講義室・研究室・標本室が入った。平成19年(2007年)に工学系の部局が伊都キャンパスへ移ったあとは、九州大学総合研究博物館と大学文書館が入居している。

旧九州帝国大学工学部本館が登録された理由

旧九州帝国大学工学部本館は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説は、城塞のような重厚な外観を象徴的と評し、内部に意匠を凝らした会議室や大講義室が残ることを挙げている。

構造の面では、関東大震災のあと耐震構造の主流となった鉄骨鉄筋コンクリート造の初期の例として、全国的にも貴重とされる。鉄骨が使われたのは大講義室と第一会議室の部分である。学内の評価では、箱崎キャンパスの鉄骨鉄筋コンクリート造としては旧応力研生産研本館(現存しない)に次ぐ古さだった。

建物だけでなく、設計図面・仕様書・入札記録や、建設中に鉄骨を組み立てる様子の写真まで大学に残っている。つくられた経緯を資料でたどれることも、評価の理由に数えられている。

旧九州帝国大学工学部本館の外観を読む

旧九州帝国大学工学部本館の正面は、左右対称の構成である。中央に展望塔がそびえ、その両脇を半円筒形に張り出した塔屋が固める。そこから一段低い研究室や事務室の棟が水平に延び、両端は講義室などを収めてT字形に突き出す。

外壁を覆うのは茶色のスクラッチタイルで、腰は石張り、上層は角を丸めた役物タイルで陰影をつけている。大学は、いまでは再現が難しいタイルによるアール・デコ調の柔らかなカーブを、この建物がキャンパスの象徴として親しまれてきた理由に挙げている。タイルの割付けや形まで考え抜かれており、当時の施工技術の高さがうかがえる。

質の高い意匠は正面玄関に集中している。車寄せの庇を支える最前列の白い4本の円柱には柱頭に丁寧な紋様があり、両脇の漆喰天井はレリーフで区切られ、青銅の灯火と円形のステンドグラスがはめ込まれている。玄関扉の幕板には彫刻、欄間には植物をかたどったステンドグラス。玄関ポーチの持ち送りのコンドル、雨樋のライオンの飾りも探してみたい。

旧九州帝国大学工学部本館の大講義室と4階の会議室

旧九州帝国大学工学部本館の内部でもっとも大きな空間は、1階から2階にかけて広がる大講義室である。聴講席がゆるやかな曲線を描いて段状に下り、谷底の教壇と黒板に視線が集まる。箱崎で学んだ学生にとっては、この講義室そのものが大学の記憶になっている。

もう一つの見どころは、4階中央の会議室である。議長席の背後には柱間いっぱいに油絵が掛けられ、天井と梁の下面は浮彫りで飾られ、絨毯とシャンデリア、部屋に合わせてつくられた机と椅子がそろう。昭和天皇の来学に備えて貴賓室として整えられた部屋で、来学そのものは実現しなかった。油絵は画家青山熊治の遺作で、部屋は「絵画の部屋」とも呼ばれている。昭和43年(1968年)からの大学紛争で複数の建物が損壊したときも、この会議室は調度品ごと被害を免れた。

建設当時に普及し始めたエレベーターも採り入れられた。昭和60年(1985年)から昭和63年(1988年)にかけて3期に分けた大規模改修が行われたが、地下の窓サッシなど建設当初の部材も各所に残っている。

旧九州帝国大学工学部本館の見学方法

旧九州帝国大学工学部本館で一般に公開されているのは、3階の九州大学総合研究博物館の常設展示室である。平成20年(2008年)に第9番講義室を改修して開かれた展示室で、令和8年(2026年)5月16日に約1年ぶりに再開した。開室は平日の午前10時から午後4時まで、入館は無料である(2026年9月確認)。

大講義室と4階の会議室は普段は公開されていない。博物館が通常閉じているエリアを土日に特別公開した例があり(令和7年・2025年の5〜6月)、公開の機会は博物館の案内で知らされる。九州大学は建物の改修を進めていて、大学の基金ページ(2024年4月時点)は、旧九州帝国大学工学部本館の公開活用の開始を2027年度の予定としている。

外観は構内の通路から見られる。向かいの本部事務室棟との間に立つと、2棟の玄関が一本の軸に並ぶ配置がよく分かる。箱崎サテライトへの行き方と構内の通行の決まりは、旧九州帝国大学のページにまとめてある。

Q&A

Q旧九州帝国大学工学部本館はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A昭和5年(1930年)11月に落成し、令和5年(2023年)2月27日に登録有形文化財に登録されました。
Q旧九州帝国大学工学部本館の中に入れますか?開館時間と料金は?
A3階の九州大学総合研究博物館常設展示室に入れます。平日の午前10時から午後4時まで、入館無料です(2026年9月確認)。
Q旧九州帝国大学工学部本館の大講義室や絵画の部屋は見られますか?
A普段は公開されていません。博物館の特別公開などで見られることがあり、大学は建物全体の公開活用を2027年度に始める予定としています(2024年時点の案内)。
Q旧九州帝国大学工学部本館は誰が設計しましたか?
A九州帝国大学の建築課長倉田謙と設計技師小原節三です。施工は清水組(現在の清水建設)が担いました。
Q旧九州帝国大学工学部本館の構造の特徴は何ですか?
A鉄筋コンクリート造で、大講義室と第一会議室の部分を鉄骨鉄筋コンクリート造としています。関東大震災後に広まった耐震構造の初期の例とされます。

基本情報

名称旧九州帝国大学工学部本館
所在地福岡県福岡市東区箱崎6丁目10-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和5年(2023年)2月27日登録
員数1棟
寸法建築面積3,152㎡
所有者国立大学法人九州大学
公開状況3階の博物館常設展示室のみ公開(平日、無料)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧九州帝国大学工学部本館」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014543
文化遺産オンライン「旧九州帝国大学工学部本館」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/526047
福岡市の文化財「旧九州帝国大学工学部本館」
https://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/778
九州大学「箱崎の近代建築物 旧工学部本館」
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/campus/hakozaki-campus/hakozaki_buildings/buildings/kougaku/
九州大学「旧九州帝国大学(現国立大学法人九州大学箱崎サテライト)近代建造物群について」(PDF)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/50488/20221116hakozaki.pdf
九州大学基金「近代建築物の保存活用プロジェクト 箱崎サテライト旧工学部本館改修支援事業」
https://kikin.kyushu-u.ac.jp/info/news/view.php?cId=1591&mode=1
九州大学「九州大学総合研究博物館 第25回公開展示 博物の森で遊ぼう」
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/events/view/2074/
九州大学総合研究博物館「イベント」(常設展示室リニューアルオープン)
https://www.museum.kyushu-u.ac.jp/event/index.html
九州大学総合研究博物館「アクセス」
https://www.museum.kyushu-u.ac.jp/access/index.html

最終更新日: 2026.09.30