旧九州帝国大学本部事務室棟とは

旧九州帝国大学本部事務室棟は、福岡県福岡市東区箱崎の九州大学箱崎サテライトにある大正14年(1925年)完成の煉瓦造2階建の建物で、令和5年(2023年)2月27日に登録有形文化財に登録された。

建築面積は1,276㎡で、玄関の上に塔屋を載せる。設計は建築課長倉田謙、施工は佐伯工務所(現在の佐伯建設)で、大正13年(1924年)に着工し、翌年3月に落成した。工学部本館と正面玄関どうしを一本の軸に合わせて向かい合い、昭和5年(1930年)から平成26年(2014年)4月まで、総長室や貴賓室を備えた大学本部として使われた。大学の建物案内では「本部第一庁舎」の名でも紹介されている。

焼けた本館の煉瓦で建てた旧九州帝国大学本部事務室棟

旧九州帝国大学本部事務室棟の出発点は、大正12年(1923年)12月の火災である。工科大学の煉瓦造の本館が全焼し、その再建までのあいだ教官室・実験室・研究室として使う建物が必要になった。ほかの仮教室が仮設や旧病棟の移築でまかなわれたのに対し、この棟と隣の建築課棟は、のちに大学本部とする前提で永く使える煉瓦造とされた。

決め手になったのは二つの事情だと大学は説明している。焼け跡の調査で旧工科大学本館の外装の煉瓦や礎石が再利用できると分かったこと、そして旧本館の寄贈者でもあった古河財閥3代目の古河虎之助から、セメント5,000樽と銅板1,400貫匁(5,250kg)の寄付を受けたことである。玄関には、この寄付をたたえる銅製の銘板が掲げられている。

建設が関東大震災の直後だったためか、壁は煉瓦でも床と梁には鉄筋コンクリートが使われている。

旧九州帝国大学本部事務室棟が登録された理由

旧九州帝国大学本部事務室棟は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説は、整った外観が校舎の時代差を示すと評している。向かいに建つ昭和5年(1930年)の鉄筋コンクリート造の工学部本館と並べて見ると、その差がはっきりする。

九州大学は、煉瓦造の様式性と装飾性をよくとどめ、煉瓦造の最後期の建築として価値が高いとしている。車寄せを中心に左右へ翼を広げる構成が工学部本館と呼応し、両棟が対になってキャンパスの象徴をつくっている点も評価されている。

旧九州帝国大学本部事務室棟の見どころ

旧九州帝国大学本部事務室棟の正面では、1階と2階で窓の形が違うことにまず気づく。階ごとに窓を変えて、平らになりがちな煉瓦の壁面に変化をつけている。玄関の上の半円アーチと、その中のルネット窓が正面の見せ場である。

外壁は化粧煉瓦で、腰と上層はモルタルの洗出仕上げを石張り風に見せている。窓回りやアーチのキーストーン、床下の空気抜き、車寄せの礎石飾りといった要所には白い花崗岩が入る。

煉瓦の積み方にも注目したい。正面側は小口を見せる積み方で仕上げているのに、東側の裏面だけはイギリス積になっている。人目につきにくい面は材料の無駄が少ない合理的な積み方にした、と大学は推測している。

内部は中廊下式の平面で、中央の階段の上部を吹抜とする。階段の親柱にはセセッション風の彫刻が施され、2階には貴賓室が設けられた。

旧九州帝国大学本部事務室棟の見学方法

旧九州帝国大学本部事務室棟の内部公開の案内は出ておらず、外観を構内の通路から見ることになる。

向かいの工学部本館の玄関前に立って振り返ると、事務室棟の玄関と塔屋が軸線の正面に来る。倉田謙が意図した配置がいちばんよく分かる位置である。建物に近づいたら、1階と2階の窓の違い、玄関上のルネット窓、裏手に回れる範囲で積み方の違いを確かめたい。箱崎サテライトへの行き方と構内の通行の決まりは、旧九州帝国大学のページにまとめてある。

Q&A

Q旧九州帝国大学本部事務室棟はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A大正14年(1925年)3月に落成し、令和5年(2023年)2月27日に登録有形文化財に登録されました。
Q旧九州帝国大学本部事務室棟に焼けた旧本館の材料が使われているのは本当ですか?
Aはい。大正12年(1923年)に焼失した旧工科大学本館の煉瓦や礎石を転用し、旧観を復すように建てられたと九州大学と福岡市が説明しています。
Q旧九州帝国大学本部事務室棟はいつまで大学本部として使われましたか?
A昭和5年(1930年)から平成26年(2014年)4月に本部機能が移るまで、大学本部として使われました。
Q旧九州帝国大学本部事務室棟の玄関にある銘板は何ですか?
A古河虎之助によるセメントと銅板の寄付をたたえる銅製の銘板です。この寄付が煉瓦造での建設を後押ししました。
Q旧九州帝国大学本部事務室棟の内部は見学できますか?
A内部公開の案内は出ていません。外観を構内の通路から見る形になります。

基本情報

名称旧九州帝国大学本部事務室棟
所在地福岡県福岡市東区箱崎6丁目10-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和5年(2023年)2月27日登録
員数1棟
寸法建築面積1,276㎡
所有者国立大学法人九州大学
公開状況内部非公開、外観のみ見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧九州帝国大学本部事務室棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014544
文化遺産オンライン「旧九州帝国大学本部事務室棟」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/548738
福岡市の文化財「旧九州帝国大学本部事務室棟」
https://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/779
九州大学「箱崎の近代建築物 本部第一庁舎」
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/campus/hakozaki-campus/hakozaki_buildings/buildings/honbudaiichi/
九州大学「旧九州帝国大学(現国立大学法人九州大学箱崎サテライト)近代建造物群について」(PDF)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/50488/20221116hakozaki.pdf
九州大学「九州大学初・箱崎の近代建築物群が国の登録有形文化財に」
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/topics/view/1854/

最終更新日: 2026.09.30