酒の仕込みを担った蔵

笹正宗酒造の仕込蔵は、敷地の東寄りに南北棟で建っていた土蔵造平屋建の建物である。大正六年(一九一七年)頃の建築とされ、建築面積は約二〇八平方メートル。屋根は切妻造の桟瓦葺で、内部ではクイーンポストトラスの小屋組が梁間を広く取り、軒を高くして仕込みタンクを並べられるよう設計されていた。仕込みは蒸米・麹・水を合わせて醪をつくる工程で、この蔵はその作業の中心を担っていた。

工程をつなぐ酒造施設群の一棟として

仕込蔵は独立して建つのではなく、酛蔵や槽蔵と下屋で結ばれ、酒造の各工程が動線として連続するように配置されていた。近代に入って酒造規模が拡大していく過程で、広い梁間と高い軒はタンクの増設に対応する合理的な選択であった。二〇二一年(令和三年)十月十四日、店舗兼主屋や他の蔵とともに国の登録有形文化財に登録された(登録番号07-0264)。会津・喜多方の造り酒屋がどのように施設を組み立てて酒を醸したかを示す一例であった。

二〇二六年の火災による焼失

二〇二六年六月一日午前、笹正宗酒造で火災が発生した。火はかつて麹室として使われていた建物付近から出たとみられ、隣接する蔵へ次々に燃え広がった。焼失面積は約二九四三平方メートルに及び、登録有形文化財八件のうち六件が焼失した。仕込蔵はこの六件に含まれる。文化財保護法第五十九条第三項により、焼失した登録建造物は登録抹消の手続きが見込まれる。ここに記すのは、失われた建物の記録である。

Q&A

Q仕込蔵とは何をする建物でしたか。
A蒸米・麹・水を合わせて醪をつくる「仕込み」の作業を行う蔵でした。広い梁間に仕込みタンクを並べていました。
Qいつ建てられたものでしたか。
A大正六年(一九一七年)頃の建築とされ、土蔵造平屋建、建築面積は約二〇八平方メートルでした。
Q他の蔵とどうつながっていましたか。
A酛蔵や槽蔵と下屋で結ばれ、酒造の各工程が連続するよう配置されていました。
Q現在も残っていますか。
A二〇二六年六月一日の火災で焼失しました。登録有形文化財八件のうち焼失した六件の一つです。

基本情報

名称笹正宗酒造仕込蔵
所在地福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山675
種別登録有形文化財(建造物)/産業2次・建築物
登録年月日2021年(令和3年)10月14日
登録番号07-0264
年代大正6年頃(1917年)
構造・形式等土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積208㎡
員数1棟
所有者笹正宗酒造株式会社
現況2026年6月1日の火災により焼失(登録抹消手続きが見込まれる)
公開状況敷地は火災後の復旧工事中で非公開(観光目的で公開されている場所ではない)

参考文献

国指定文化財等データベース — 笹正宗酒造(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013939
笹正宗酒造株式会社 会社案内
https://www.sasamasamune.com/company.html
福島民友新聞 — 喜多方・笹正宗酒造で火災(2026年6月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026060113102350523
福島民報 — 国文化財、醸造設備焼失(2026年)
https://www.minpo.jp/articles/-/146364
福島民友新聞 — 笹正宗、酒造り再開へ 火災から1カ月(2026年7月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026070108272151729

最終更新日: 2026.07.04