屋号を掲げた家財の蔵、文庫蔵

笹正宗酒造の文庫蔵は、願成寺門前通りの南端、屋敷の北西角に位置していた小ぶりの土蔵である。大正六年(一九一七年)の建築で、大正十年(一九二一年)に改修を受けている。切妻造桟瓦葺の土蔵造二階建で、建築面積は約四十六平方メートル。主屋と渡廊下で結ばれ、家財を納める蔵として使われていた。

町並みに映える当家の象徴

腰を石張とし、入口には掛子塗の扉を構える。小屋はトラス組で、妻面には屋号と楣を掲げた長大な片開きの塗戸が付く。この妻面の意匠は、通りに面して当家の象徴として町並みに映えるものであった。蔵そのものは家財を守る実用の建物でありながら、表構えには家の格を示す意図が込められていた。二〇二一年(令和三年)十月十四日、酒造施設群とともに国の登録有形文化財に登録された(登録番号07-0267)。

二〇二六年の火災による焼失

二〇二六年六月一日の火災では、主屋と渡廊下で結ばれていた文庫蔵も焼失した。渡り廊下で複数棟がつながる屋敷の構成は、暮らしと商いの動線としては合理的であったが、火はその経路をたどって広がった。文庫蔵は焼失した六件の登録有形文化財の一つである。文化財保護法第五十九条第三項により、登録抹消の手続きが見込まれる。

Q&A

Q文庫蔵はどのような蔵でしたか。
A主屋と渡廊下で結ばれた家財蔵で、土蔵造二階建、建築面積は約四十六平方メートルの小ぶりな蔵でした。
Q妻面の意匠に特徴はありましたか。
A屋号と楣を掲げた長大な片開きの塗戸が付き、通りに面して当家の象徴として町並みに映えるものでした。
Qいつのものでしたか。
A大正六年の建築で、大正十年に改修されています。
Q現在も残っていますか。
A二〇二六年六月一日の火災で焼失しました。焼失した六件の登録有形文化財の一つです。

基本情報

名称笹正宗酒造文庫蔵
所在地福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山675
種別登録有形文化財(建造物)/産業2次・建築物
登録年月日2021年(令和3年)10月14日
登録番号07-0267
年代大正6年/同10年改修(1917年)
構造・形式等土蔵造2階建、瓦葺、建築面積46㎡
員数1棟
所有者笹正宗酒造株式会社
現況2026年6月1日の火災により焼失(登録抹消手続きが見込まれる)
公開状況敷地は火災後の復旧工事中で非公開(観光目的で公開されている場所ではない)

参考文献

国指定文化財等データベース — 笹正宗酒造(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013942
笹正宗酒造株式会社 会社案内
https://www.sasamasamune.com/company.html
福島民友新聞 — 喜多方・笹正宗酒造で火災(2026年6月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026060113102350523
福島民報 — 国文化財、醸造設備焼失(2026年)
https://www.minpo.jp/articles/-/146364
福島民友新聞 — 笹正宗、酒造り再開へ 火災から1カ月(2026年7月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026070108272151729

最終更新日: 2026.07.04