酒母を育てた酛蔵

笹正宗酒造の酛蔵は、敷地南側に建っていた土蔵造二階建の建物である。大正十四年(一九二五年)頃の建築で、平成二十三年(二〇一一年)に改修を受けている。屋根は南を寄棟、北を切妻とする桟瓦葺で、小屋はトラス組。酛(酒母)を育てる工程を担う蔵で、建築面積は約一七〇平方メートルであった。酛づくりは、蒸米・麹・水に酵母を加えて培養し、次の仕込みに向けた土台をつくる作業である。

雪国の酒造工程をつなぐ位置

酛蔵は次の醪工程を担う仕込蔵と下屋で結ばれ、また酒造用の筵や布を干す貯蔵庫の二階とは渡廊下でつながっていた。積雪の多い会津・喜多方の冬に対応するため、屋外に頼らずに乾燥や運搬ができるよう、蔵と蔵を結ぶ動線が組まれていた。酛蔵はその結節点に位置する建物であった。二〇二一年(令和三年)十月十四日、酒造施設群とともに国の登録有形文化財に登録された(登録番号07-0263)。

二〇二六年の火災による焼失

二〇二六年六月一日、笹正宗酒造で火災が発生し、下屋や渡廊下で結ばれた蔵づたいに火が広がった。酛蔵は焼失した六件の登録有形文化財の一つである。火災では出荷前の酒や醸造設備も失われ、創業以来初の大火となった。会社は他の蔵を間借りして醸造を続けることを検討し、蔵の再建を目指すとしている。焼失した登録建造物は、文化財保護法第五十九条第三項により登録抹消の手続きが見込まれる。

Q&A

Q酛蔵は何をする建物でしたか。
A酛(酒母)を育てる蔵でした。蒸米・麹・水に酵母を加えて培養し、次の仕込みの土台をつくる工程を担いました。
Q他の蔵とどうつながっていましたか。
A次の醪工程を担う仕込蔵と下屋で、乾燥場となる貯蔵庫二階と渡廊下で結ばれていました。
Qいつのものでしたか。
A大正十四年頃の建築で、平成二十三年に改修されています。建築面積は約一七〇平方メートルでした。
Q現在も残っていますか。
A二〇二六年六月一日の火災で焼失しました。焼失した六件の登録有形文化財の一つです。

基本情報

名称笹正宗酒造酛蔵
所在地福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山675
種別登録有形文化財(建造物)/産業2次・建築物
登録年月日2021年(令和3年)10月14日
登録番号07-0263
年代大正14年頃/平成23年改修(1925年)
構造・形式等土蔵造2階建、瓦葺、建築面積170㎡
員数1棟
所有者笹正宗酒造株式会社
現況2026年6月1日の火災により焼失(登録抹消手続きが見込まれる)
公開状況敷地は火災後の復旧工事中で非公開(観光目的で公開されている場所ではない)

参考文献

国指定文化財等データベース — 笹正宗酒造(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013938
笹正宗酒造株式会社 会社案内
https://www.sasamasamune.com/company.html
福島民友新聞 — 喜多方・笹正宗酒造で火災(2026年6月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026060113102350523
福島民報 — 国文化財、醸造設備焼失(2026年)
https://www.minpo.jp/articles/-/146364
福島民友新聞 — 笹正宗、酒造り再開へ 火災から1カ月(2026年7月1日)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026070108272151729

最終更新日: 2026.07.04