いしぐろとは

いしぐろは、高知県東部の奈半利町や室戸市吉良川町などに見られる、石を積み上げた塀である。記録では、かぎ括弧付きで「いしぐろ」塀、「いしぐろ」練塀のように書かれる。海辺の浜石や川原の玉石を積み、屋敷のまわりや道路沿いに築く。

この地域は太平洋に面して台風が多く、いしぐろは強い風雨から屋敷を守る塀として発達したと説明される。同じ地域では、土佐漆喰の壁に水切瓦を並べた蔵や町家も見られ、いしぐろとともに、風雨の厳しい土地に対応した町並みの景観をつくっている。

積み方には、石と石のあいだをモルタルなどで固める練積のものと、石だけで積むものがある。奈半利の森家住宅の塀は、浜石を練積みとし、頂部に瓦葺の小屋根を載せており、記録では練塀とも呼ばれている。瓦と粘土を交互に積む一般の練塀とは、材料と積み方が異なる。

記録と実物で見分ける手がかり

高知県奈半利町の森家住宅(旧野村茂久馬邸)には、三つのいしぐろが登録有形文化財として残る。西石塀は、主屋の南西端から道路沿いに南へ延びる塀で、切石積の基礎の上に浜石を練積みとし、頂部に瓦葺の小屋根を載せる。塀の厚さは50センチ、高さ2.5メートルで、両端を切石の隅石で固める。南石塀は奈半利特有のいわゆる「いしぐろ」練塀として、屋敷構えを構成するとともに、奈半利特有の街路景観をつくるとされる。東石塀は中央に裏口を設け、煉瓦でアーチ状の開口をつくる点に特色がある。

室戸市吉良川町の調査では、いしぐろが道沿いの塀としてだけでなく内庭の仕切りとしても使われ、高さ1.7メートル、厚さ30センチほどのものが多く、石を半割にして小口を外側に見せる細かな意匠も見られると報告されている。現地では、丸い石の積み方、頂部の小屋根の有無、端部の隅石の納め方を見比べるとよい。

参考文献

森家住宅(旧野村茂久馬邸)西石塀|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/137748
森家住宅(旧野村茂久馬邸)南石塀|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/192979
森家住宅(旧野村茂久馬邸)東石塀|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/186710
西森慧「吉良川重伝建地区における伝統的建築物等のデザインサーベイ」|高知工科大学
https://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/pdf/2006/03/41/a1050446.pdf

最終更新: 2026.09.27