釘隠しとは
釘隠しは、長押などを留めた釘の頭を覆う飾り金物である。構造上の必要から打った釘を隠すとともに、それ自体が意匠として扱われる。
家紋を打ち出す例がある。茨城県の富田家住宅主屋は明治前期の建築で、「入母屋造桟瓦葺、軒を豪壮な出桁造とする。北側を広大な土間と居間、玄関座敷を介して南側に座敷を三室並べ、最奥は角屋座敷となる。笠間藩主家紋の釘隠しや筬欄間など格式高い書院造座敷」と解説されている。
この記述で注目したいのは、釘隠しが筬欄間と並んで「格式高い書院座敷」の根拠に挙げられている点である。金物の意匠が部屋の格を示す情報として扱われている。
藩主の家紋を用いることは、その家と藩との関係を示す。農家の主屋でありながら藩主家紋を掲げていることが、この住宅の性格を語っている。
見る位置
長押の上を目で追うとよい。柱と交わる位置に等間隔で金物が並んでいれば釘隠しである。座敷を一周する長押の全体に配されるため、部屋に入って壁の上部を見渡せば見つかる。
意匠は家紋のほか、花文や幾何文などがある。材は銅や真鍮に鍍金を施したものが多い。
数寄屋造では長押そのものを省くため、釘隠しも現れない。長押と釘隠しが揃っていれば書院造の系統と判断できる。
記録に釘隠しが書かれる例は多くない。構造及び形式等欄は屋根や規模を記す欄であり、金物の意匠まで踏み込むのは解説文に限られる。調べるときは自治体の調査報告にも当たりたい。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)富田家住宅主屋/笠間藩主家紋の釘隠や筬欄間など格式高い書院座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014319
最終更新: 2026.09.03